げた履き物件の1階店舗の空室対策
マンションやアパートの1〜2階部分を店舗や事務所、駐車場など住居以外の用途として活用することを指す「げた履き物件」。防犯面やプライバシーの観点から、住居としては入居率が低くなってしまう1階部分を、げた履き物件として活用しているオーナーもいるでしょう。今回は、げた履き物件のテナント誘致に困っているオーナー向けに、入居率を高める方法と、その際に留意するべきポイントについて解説します。
物件の収益力を向上 視認性や立地を生かす運営
げた履き物件の呼称は、1階部分が住居向けに設計されておらず、壁や柱などしかないため〝げたの歯〟のように見えることが由来とされており、「テナント付き物件」と呼ぶこともあります。
前述のとおり、げた履き物件は、マンションやアパートの1~2階部分を非住居利用として貸し出している物件です。最大のメリットは、物件の収益力を向上させることができるところにあります。なぜなら、一般的にテナントスペースは居住スペースに比べて賃料を高く設定できる傾向にあるからです。居住用では空室リスクが高くなってしまいがちなスペースを、高い収益性を持たせながら運営することが可能です。
特に、店舗として利用する場合、通りからの視認性が高い1階は、集客効果を期待できるため需要が大きく、賃料も高めに設定することができます。さらに、物件の立地が良い場合、レジデンスと異なり、築年数に左右されることなく建物の価値を保つことができます。そのため、おのずと賃料が下がりづらく、物件を貸し出す際の諸条件も緩和する必要がなくなります。このようなメリットがあることから、げた履き物件として上手に不動産を活用できれば、大きな利益を生み出せます。
業態によって異なる特徴 メリットや留意点をチェック
ここで重要なのが、収益を生み出せる物件にするためには、どのようなテナントを誘致すればいいのかということです。げた履き物件を運営するうえで、テナント誘致を行う際に役立つポイントと、事前に気を付けておきたい事項について見ていきましょう。
まず、入居テナントを大きく分けると、非飲食と飲食の二つの業態に分けることができます。クリニックやジム、事務所など非飲食業態をテナントにする際のメリットは、飲食業態と比較してトラブルが少ないことです。例えば、飲食の場合、食べ物を扱うことから必然的にゴキブリやネズミなどの害虫・害獣が発生することが考えられます。2階以上の居住スペースにおいて、げた履き物件に飲食業態が入居していることで、入居希望者の選択肢から外れてしまうことがあるでしょう。
しかし、非飲食業態であればそのようなトラブルも回避できるため、初めてげた履き物件を運営するオーナーでも、難易度が高くなりすぎることはありません。ただし、留意しておきたいのは、飲食業態に比べると賃料を高く設定できない傾向にあることです。その点はあらかじめ頭に入れておきましょう。
次に、飲食業態をテナントにすることのメリットは、何といっても賃料を高く設定できる点です。立地が良ければ需要が大きくなるため、さらに上乗せできる場合もあります。
その半面、前述のとおり害虫の発生だけでなく、臭いや騒音についても懸念事項が生じるかもしれません。しかし、実際はダクトを建物の上まで持ち上げる工事を行うため、臭い対策は十分にできているケースがほとんどです。また、騒音が心配であれば、入居するテナントに壁の防音加工を施してもらうなど、入居に際しての設備条件などを契約書に追加しておくことをおすすめします。
このように、あらかじめ気になる点について、入居テナントの業態を確認したうえで、トラブルに発展しそうなポイントを契約書に記載しておきます。事前に対策すれば、安心して運営を行うことができます。
BM専門会社に依頼 設備トラブルを防ぐ
さらに、建物を総合的に運営・管理するBM(ビルマネジメント)を専門会社に依頼しておくことも大切です。BM会社は建物の清掃や景観の管理、設備点検などを専門的に行うため、設備関係でのトラブルを未然に防ぐことができます。また、万が一設備トラブルが起きても、スムーズに対応してくれます。
一つの不動産につき、住居スペースと店舗スペースで異なるBM会社を選択することも可能です。店舗スペースにおいては、店舗管理に特化したBM会社に依頼することで、より安全で効果的な店舗経営を実現できるでしょう。
店舗流通ネット
戸所岳大代表取締役社長
2005年、店舗流通ネット入社。現在の主軸事業の基礎である飲食店の出退店支援事業に従事。飲食店に適した物件の開発やテナント向けのファイナンス支援に努めながら、12年、営業部部長に就任。17年、常務執行役員、20年11月、代表取締役に就任。新たに「内製、協業、M&A(合併・買収)」の3本の柱を掲げ、事業ポートフォリオの変革に向け、アグレッシブな事業展開を行う。
(2024年3月号掲載)
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