飲食テナントにテナント貸しすることで生じるトラブルと対策法

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備えていても発生してしまうのがトラブルですが、対策法を知っていれば、万が一起こってしまっても最小限に抑えることが可能です。今回は、テナントを誘致した際にどのようなトラブルが生じやすいのかを紹介するとともに、注意するべきトラブルとその対策法を紹介します。


 飲食店のテナントの場合、騒音や臭いなどのトラブルをよく聞きます。これらは前回説明したとおり、壁に防音加工を施し、ダクトを建物の上まで持ち上げるといった対応で解決できることが多く、最近では十分に対策できているケースがほとんどです。では、このほかに何に気を付けるべきかというと、「水漏れトラブル」と「工事の修繕範囲に関するトラブル」です。

保険加入は必須

 まず、水漏れトラブルですが、主な原因は二つあります。
 一つ目は、厨房(ちゅうぼう)やトイレの防水効果切れによる漏水です。厨房(ちゅうぼう)やトイレはテナントの工事区分であり、テナントが責任を持たなければなりません。そのため、仮に階下のテナントが漏水被害に遭ったときは、漏水の発生元であるテナントが修繕費用を負担し、対処する必要があります。
 ほかのテナントや建物の共用部分に被害が広がってしまうこともあるため、入居するテナントには必ず保険に加入してもらいましょう。また、入居時に加入していたとしても、更新をし忘れていることがあるので、更新時期には確認することが大切です。
 二つ目は、屋根や外壁などの防水効果切れ、老朽化、亀裂などによる水漏れトラブルです。屋根や外壁などは不動産オーナー側の工事区分となるため、この場合は、オーナーが対処しなければなりません。漏水の原因が屋根や外壁にあり、テナントに被害を及ぼし、営業できない事態になってしまった場合、休業補償なども生じてきます。
 休業補償の内容でテナントともめてしまうこともあるため、定期的な設備点検と防水対策を行うようにしましょう。もしもの場合に備えて、オーナーも保険に加入することをおすすめします。

修繕範囲の定義を明確に

 次に、工事の修繕範囲に関するトラブルですが、こちらもテナントとのトラブルに発展しやすいものが二つあります。
 一つ目は、居抜き物件で起こりやすい、認識の相違から生じる明け渡し時の原状回復に関するトラブルです。契約書に「解約時には原状を回復したうえで物件を明け渡す」と記載するだけでは、「原状」が「スケルトンの状態」を指すのか、「入居時の状態」を指すのか、人によって解釈に違いが生じてしまいます。トラブルを回避するためには、「原状」がどのような状態を指すのか、契約書に明確に定義しておきましょう。
 二つ目は、シャッターについてです。シャッターの修繕費用をテナントとオーナー、どちらが負担するのかといったトラブルは、本当に多くあります。シャッターを実際に利用しているのはテナントですが、一般的にはオーナー側の所有設備であるため、破損した場合、テナントはオーナーに対して修理するよう要求します。
 とはいえ、テナントの使用時に破損、不具合が生じたのであれば、テナント側に対応してほしいのが正直なところです。どちらが修繕するかでもめないよう、シャッターの修繕については、テナント側で対応する旨を契約書に忘れずに盛り込むことが大切です。

発生時には状況を記録

 何かトラブルが生じてしまった場合の対策として、発生時の状況を記録しておくことが重要になってきます。水漏れの場所や破損箇所などを必ず写真に収めることがポイントです。発生日時や状況なども詳細に記録しておくといいでしょう。
 ただし、自主管理には限界があります。トラブルの原因が設備に関するものだった場合、専門知識が必要になり、すぐに対応できる事業者が見つかるとも限りません。見つかったとしても、緊急対応として通常より高い金額を請求されてしまうこともあります。何より、テナント側とどちらがどれだけ負担するかなどの話し合いにより心身的ストレスがかかります。
 だからこそ、不動産の管理業務は、専門知識を持った管理会社に依頼することをおすすめします。日常的な管理業務や点検をお願いでき、オーナーの業務の手間を軽減することができます。トラブルが発生した場合には、管理会社が迅速に対応してくれるため、被害を最小限に抑えられ、トラブルへの対応によるストレスも回避できるといった利点もあります。
 不動産を守り、資産価値を下げないためには、信頼できる管理会社を見つけて、依頼することが最大の対策となるでしょう。

店舗流通ネット
戸所岳大代表取締役社長
2005年、店舗流通ネット入社。現在の主軸事業の基礎である飲食店の出退店支援事業に従事。飲食店に適した物件の開発やテナント向けのファイナンス支援に努めながら、12年、営業部部長に就任。17年、常務執行役員、20年11月、代表取締役に就任。新たに「内製、協業、M&A(合併・買収)」の3本の柱を掲げ、事業ポートフォリオの変革に向け、アグレッシブな事業展開を行う。

 

 

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