不動産の共有によるトラブルや解決法について、法律面では森・濱田松本法律事務所(東京都千代田区)の長谷川博一弁護士に、実務面では不動産コンサルタントで一般社団法人不動産オーナー経営学院(REIBS:リーブス・名古屋市)講師兼事業責任者の近藤修己氏に話を聞いた。
【解説】
森・濱田松本法律事務所(東京都千代田区)
長谷川博一弁護士
不動産オーナー経営学院(REIBS:名古屋市)
講師兼事業責任者 近藤修己氏
1.共有不動産がトラブルの温床になる
不動産を共有することによって、親族間の仲が悪化するケースは少なくない。起きうるトラブルを把握し、今後の対策を考えておこう。
収益不動産が共有になりやすい
不動産が共有になる主な理由は、相続である。不動産は平等に分けることが難しいのがその理由だ。
「不動産は個別で価値の違いがあるため、遺産分割の際にA不動産は母、B不動産は長男というようにうまく分けられないことがあります。そういった場合は共有になりやすいのです。一応平等に分けることができるからです。専門家に相談していないと法定相続分に合わせて分割し、不動産が共有状態になるケースも多いです」と森・濱田松本法律事務所の長谷川弁護士は話す。
特に相続で共有になりやすいのは収益不動産だ。「毎月一定額の賃料が入ってくると、将来の資産価値があると感じるため、相続人同士で取り合いになりやすいのです」と一般社団法人不動産オーナー経営学院(REIBS)の近藤氏は指摘する。
また不動産の価値が高い場合も共有で相続することが多い。例えば、東京都の土地は小さくても数億円の価値になるケースがある。「相続財産のうち不動産が半数以上の割合を占めると、現金をすべてほかの相続人に渡したとしても、相続人が複数いる場合は相続財産のバランスが取れません。相続後のリスクを把握できていないために、ほかの相続財産との兼ね合いで共有とすることも多いでしょう」(近藤氏)
このほか、広い土地も共有での相続が起こりがちだ。将来分割して使えばいいと考えるからである。実際に近藤氏は、接道の状況により、分筆しても将来使えるような土地では、費用や手間のかかる分筆を後回しにして、共有にするケースをよく見聞きし、懸念しているという。
共有とは、一つの土地や建物に複数の所有者がいる状態だ。底地と借地のように権利関係が分かれているのではなく、あくまで共有者全員が所有権を持っている。民法は、一つの物件は単独で所有することが前提であり、共有はあくまで一時的なものという扱いだ。そのため、共有を解消するように制度として定められている。
2023年4月、共有をはじめとした改正民法が施行された。今まで蓄積された判例の内容を条文化。また形状・効用の著しい変更を伴わない変更や、一定の期間を超えない賃借権などの設定は、全員の同意ではなく共有者の持ち分のうち半分の合意でできることが定められた。
新たに、共有者のうち「管理」を単独で行える管理者のルールが設定。共有している土地の場合、誰か1人が管理していることが多く、何らかの管理を行おうとするたびに話し合うのも大変だからだ。
誰が共有者なのかわからない事態も多い。「変更」と「管理」を行いやすくすることで、所有者不明土地の利用を促進する狙いがある。
最近では、社会情勢の変化によって、共有持ち分を購入する事業者が増えている。しかし、共有には経済的リスクや共有者の関係性悪化のリスクがあり、トラブルも多い。そのため、共有はあくまで一時的な手段として活用するのがいいだろう。
(2024年10月号掲載)
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