【特集】24年のカギを握る入居者を引き付ける設備9選

賃貸経営住宅設備・建材

設備を充実させて差別化を図るなら、すでに必須の設備だけではなくこれから台頭して来るであろうものをいち早く導入したい。そこで、導入数が伸びていきそうな設備を編集部がピックアップ。九つの商品・サービスを紹介する。

宅配ボックス:使いたいときに使えることがポイント

▲「チャレンジボックス」の操作パネル。画面で操作方法も利用履歴も確認できる

 もはや賃貸物件においても「あって当たり前の設備」から「ないと困る設備」になりつつあるのが宅配ボックスだ。しかし、ただ箱があればいいわけではない。「宅配ボックスには、ダイヤル式とコンピューター式の2種類があります。荷物が入りっ放しになっていたり、誤配があったりしてボックスが満杯だと、結局再配達になってしまうというトラブルが起きます。宅配ボックスに期待して入居した人にはかえって大きなマイナス材料になるでしょう」とフルタイムシステム(東京都千代田区)の全国既存営業掌握兼ハウスメーカー(賃貸AP・戸建)部門統括執行役員、沢辺雄一氏は話す。

 同社の製品はコンピューター式であり、ネットにつながるタイプなら入居者に荷物が届いたという通知も送れて短時間で受け取ってもらえるので、 “使えない”というトラブルが起きにくい。

 リースプランである賃貸住宅専用宅配ボックス「チャレンジボックス」の場合は、フルメンテナンス付きで月額1万1000円(税込み)からで、契約満了である8年目には新しい筐きょう体たいに入れ替えることで使用を継続することができる。買い切りの場合のメンテナンス費用は月6000円程度(部品代別途)。躯体は長持ちするうえコンピューター部分を交換して機能をアップデートすることが可能だ。配置数の目安は戸数の30~35%程度だという。高性能の宅配ボックスを設置したことで家賃を3000円上げられた、宅配ボックスが途中で導入されたために更新し長期入居につながったという声も同社に届いている。「コンピューター式ではタッチパネルやテンキーを使って操作・施錠します。受取人は、ICカードや顔認証などで解錠でき、セキュリティー性にも優れます」(沢辺氏)

 もうすぐトラック運転手の不足が懸念される「物流2024年問題」が顕在化する。再配達の負担を減らすことは入居者向けのサービスの質の向上に加えて、家主ができる社会貢献の一つではないだろうか。新規設置やメンテナンスのタイミングで宅配ボックスの質にこだわってみるといいだろう。

スマートロック:利便性と長期的なコスト削減が魅力

▲美和ロックの後付け可能なスマートロック「PiACKIIIsmart」

 スマートロックとは、ネットにつながり、物理鍵を使わずに、スマホや暗証番号、ICカードなどで鍵の開閉をする仕組みを持った錠前のこと。導入方法は、現状の鍵と鍵穴はそのまま、室内側のつまみ部に開け閉めできる器具をかぶせたり、その器具に交換したりして、電動で開け閉めできるようにするというもの。後付けでは、室内側のつまみ部に貼り付けるタイプと、ドア内部の構造やドアに開けた穴で固定するタイプがあるという。

 日本の物理鍵の60%を製造するのが美和ロック(東京都港区)だ。鍵への深い知識を生かし、自社でもセキュリティーにこだわったスマートロックを展開する。「追加する開閉用の器具が頑丈なものや防犯性が高いもの、設置した後にドアから外れないものを選ぶのが大切です」と商品企画部課長の田中健一氏は話す。

 物理鍵は使わずスマホや暗証番号だけを使う運用なら、入退去の際に物理鍵と鍵穴を交換する必要がなくなるため、家主、入居者にとって節約になる。「安全性や機能性の高いスマートロックを導入すると初期費用はかさみます。しかし、入退去の際の物理鍵の交換は大体1回2万円程度。これを何度も削減できるので長期的にコストダウンにつながります」(田中氏)

 開閉用の器具は電池式で、残量が少なくなるとアラートを表示、また急な故障の場合でも物理鍵で解錠できる。「酔っぱらって鍵をなくした入居者に呼び出されることが格段に減った」と喜びの声を寄せた家主もいるという。留守中に解錠した者がいないかの記録を取るサービスもあり、特にセキュリティーを重視する女性に好評だ。

インターホン:不在時もオートロックを解除

▲外壁への埋め込み型の施工例

子どもだけで留守番をしているが心配、不在を知られたくない、再配達を防止したいといった入居者のニーズに応えられるのが、不在時でもスマホで応答できるインターホン。通信サービスや通信機器製造を手がけるファイバーゲート(東京都港区)は、入居者無料Wi–Fiサービスのオプションとして「FGスマートコール」を提供している。

 不在時に来客があっても、スマホを使って応答可能。外出先からでもオートロックを解除することもできる。また、顔認証機能を備え、家族や友人、配送事業者ら来訪者の顔を記憶することも。入居者本人や家族ならエントランスのオートロックを自動で解除する、配送事業者なら宅配ボックスの利用や置き配を依頼するというように、あらかじめ登録した方法で対応させることも可能だ。セキュリティー性と利便性の高さから、入居促進と家賃下落抑制が狙えるという。

ホームユース営業本部、東日本営業部長の大倉立雅氏は、「ネット無料が当たり前の時代です。IoTインターホンが最後の一押しになるという言葉を頂いています」と話す。

製品のタイプは、外壁への埋め込み型と、スタンドを使った自立型の2種類。新築のほか既存物件にも対応することができる。料金は、埋め込み型が66万円、自立型が95万7000円。別途、サーバー利用料が1戸あたり275円(いずれも税込み)となる。

EV充電:数年先に必須になる先取り設備

▲「EVコンポα Mode3」は6kwの充電出力と複数台充電に対応可能
 

 EV(電気自動車)充電器への家主の注目は高まっている。河村電器産業(愛知県瀬戸市)のコーポレートコミュニケーション部、販促企画課の坂元友樹氏は、「近年の展示会で、家主からEV充電器の説明を求められることが増えました」と話す。

現状はEVの普及はまだまだだ。「しかし、EV新車の販売台数は右肩上がり。2~3年後には賃貸住宅でもEV充電設備は物件の資産価値を上げる設備としてさらに伸びると考えます」と開発営業部、新事業開発グループ、EV市場推進課の山地信裕氏は話す。

 集合住宅の場合は共用部に設置することになるので、充電器だけでは家主が電気代を負担することになる。使った人から電気代を徴収できるよう、認証・課金システムと併せて充電器を設置することが大半だ。EV充電器本体や工事費については国や自治体の補助金も充実しているため、導入コストが0円になることもある。

そして、EV充電器本体が数年後の状況に対応し得るものかどうなのかも確認しておこう。充電器の出力や充電ケーブルの仕組み、台数が増えた際の対応がチェックポイントとなる。また、屋外の設備であるため耐久性も大切だ。

山地氏は、「耐久年数は8年としていますが、それより長持ちすると考えています。宅配ボックスをはじめとした、屋外のボックスを作ってきた技術力を生かして壊れにくいものを作っています」と自信を見せる。

電子書籍:読み放題で入居者が満足

▲豊富なラインナップから読みたい本がすぐ読める 

 入居すると雑誌や漫画が読み放題。魅力に感じる入居者も多いだろう。ビューン(東京都千代田区)は17年6月より、集合住宅向け電子雑誌・漫画読み放題サービス「ビューン読み放題マンション」を提供している。入居者は同サービス導入物件のネットに接続すると、ウェブブラウザーでコンテンツを閲覧することができる。コンテンツ数は雑誌800誌、漫画5万冊。月間PV(ページビュー)は約450万、ユーザー数は約3万7000人だ。利用料は物件の戸数によって異なるため、都度見積もりが必要。電子書籍であれば、漫画を置くスペースが取れなくても問題ないうえ、実際の書籍ではないため管理が楽なことが家主にとっても魅力となる。

 22年12月末時点で約10万戸だった導入戸数は23年9月末時点で12万戸を超え、順調に導入戸数を伸ばしている。導入する物件のうち9割は賃貸物件だという。入居者からは「入居したマンションに付いていたので、今まで気になっていた雑誌を気軽に読むことができました。普段から使えるサービスなので満足しています(東京都 女性)」との声も聞かれ、退去抑制に一役買っている。

同社の法人事業開発部の石井裕介部長は「雑誌や漫画をスマホで見るニーズは年々高まっています。幅広いターゲットにマッチしますので、単身世帯・ファミリー向けを問わず、実際に使える入居者特典として活用してほしいです」と話した。

ガス衣類乾燥機:いったん使ったら離れられない

▲新商品乾燥容量9キログラムの「乾太くん」 

 最近大阪圏ではガス乾燥機のニーズが伸びている。近畿エリアでガス乾燥機「乾太くん」の販売やリースを行うのは大阪ガスマーケティング(大阪市)だ。法人営業本部の重田清一氏は、「19年まで賃貸住宅向けはほぼゼロに近い販売台数でしたが、23年は700台程度になる見込みです。コロナ下で大きく需要が伸び、それが賃貸住宅にも波及したものと考えています」と話す。乾燥時間が短いことやふわふわの仕上がりで、入居者の心をつかんできたガス衣類乾燥機。ハウスメーカーによる新築賃貸住宅では、高価格帯のシリーズで標準装備になっているケースも増えてきたという。導入物件では、家賃を3000円程度上げられた例や、客付けの難易度が高い1階にだけ設置したところ、1階から先に決まったという例がある。「快適さゆえ、退去抑制にもつながります」(重田氏)。入居者からも、天気にかかわらず毎日使用しているとの声が聞かれ、また、同社の行った調査もそれを裏付ける結果になった。

 ガスの配管や排気口などの設備が必要になることから、基本的には新築での設置を想定している。ただし、戸建て賃貸はガス設備を追加しやすいため、既存の物件でも導入事例があるそうだ。

 導入費用は新築で20万円程度。既存の物件では必要な工事の費用プラス乾燥機の代金となる。リースの場合は1台あたり月額1500円から2000円程度だという。

スマートホーム:導入コストに対して高い家賃アップ効果

▲同社の提供する「Space Core」。住宅設備をワンストップで制御できる

 ネットを使って住まいの設備を動かすことができる部屋の仕組みをスマートホームと呼ぶ。カーテンの開閉や、予定した時刻に照明をつける、外出先からのインターホンに応答といったことができる。特に若い世代にはなじみ深い設備だ。

 家主自身が個人でスマート家電を購入して自ら設置することも可能。しかし、参入メーカーが多いため家電ごとに専用のアプリが必要になったり、不具合時の問い合わせ先も分からなくなったりする問題があるという。また、機器自体も安全性が高いものか判断する目利き力も必要だ。そこで入居者がワンストップで安全かつ最大限に活用できる環境を構築・提供しているのがアクセルラボ(東京都新宿区)だ。

 取締役COOの宇田川大輔氏は、「平均で5〜6個のスマートデバイスが導入されており、その場合の機器代から工事や機器の設定まで合わせて1戸あたり12万~15万円くらいが相場です。当社が安全性を確認した機器を導入・設定し、不具合時の対応まで行います」と話す。

 1階の空室にセキュリティー性が高まるような組み合わせでスマートホームを構築したところ、それまで1年以上空室だった部屋にすぐ入居が決まったという。しかも入居者は女性で、同物件・同家賃の最上階(ただしスマートホームはない)と比較したうえでの入居だった。このほかにも、家賃が1万~1万5000円上がったという事例もたくさんあるという。

「導入費用と比較して家賃アップの効果が高いのがスマートホームです。建物の条件や予算に合わせて柔軟に組み合わせるといいでしょう」(宇田川氏)

防音:防音を求める入居者が増加

▲ヤマハのユニットタイプ防音室「セフィーネNS」(写真は1.2畳)

 騒音苦情に悩む家主は、防音仕様に興味があるのではないだろうか。ヤマハミュージックジャパン(東京都港区)では、防音に関するさまざまな商品を取り扱っている。自由設計タイプの防音室を導入するハードルが高い場合は、ユニットタイプの防音室がおすすめだという。約3時間で設置でき、移設や撤去も可能だ。「現状、賃貸住宅の入居者自身が家主や管理会社に重量などの許可を得て設置することが多いです。1.5~3㎡前後の商品が人気です。家主が初めから設置しておけば内見者に優位性をアピールできるでしょう」と同社事業企画部レンタル・リース課主事の鈴木富士人氏は話す。

 ユニットタイプの防音室は販売もレンタルも展開している。レンタルの場合、期間中に支払ったレンタル料金を充当してレンタル品を買い取ることも可能だ。レンタル料は税込みで月額1万5000~3万円前後。このことから、1万~3万円家賃をアップしてもニーズはあるといえるだろう。実際に、神奈川県のファミリー向け賃貸マンションで、5・2畳の部屋に2畳タイプの防音室を設置した家主がいた。近隣より高い家賃設定だったがすぐに楽器を演奏する家族の入居が決まった例もある。

 「楽器メーカーなので、防音のみならず音の響きにこだわった仕様が自慢です。最近は、テレワークや配信を目的とした人も増えてきています。さまざまな用途を想定して物件のバリューアップに活用してほしいです」(鈴木氏)

高速ネット:既存配線でも高速化できる

▲マンション全戸一括インターネットサービスのイメージ

 つなぐネットコミュニケーションズ(東京都千代田区)ISP企画本部、部長の石飛道弘氏は、「ネットの使用量であるトラフィックは人口減にもかかわらずコロナの影響もあり、当社調べでは直近5年で10倍ほどの勢いで伸びています」と話す。

 高速ネットの定義は時代の変遷によって変わるものだが、現在の目安は1Gbps以上。また、昨今は10Gbpsの需要まで出てきている。10年前は100Mbpsが高速とされていたので、当時の設備のままだと入居者は速度の遅さを感じていることだろう。

 部屋までネットをつなぐ配線には①メタル配線(電話線のジャック)②LAN配線③光配線の3種類があるが、①から③の順に最大速度が速くなる。とはいえ、①を活用する場合も1Gbpsの速度まで改善することは可能だ。②でも、敷設済みLAN配線をそのまま活用して導入コストを抑えつつ、対応機器に交換することで、最大速度を2・5Gbpsや5Gbpsへあげることが技術的に可能になった。(LANケーブルの規格により提供できる最大速度が変わる)。

 また、速度だけでなく途切れないことやトラブルの際の対応力も大切だ。家主や入居者に体験談を聞くなどして、品質のいいネット事業者を選びたい。

(2024年1月号掲載)

一覧に戻る