1月1日に石川県能登地方を震源とした大規模な能登半島地震が発生した。多数の死者、そして被災者を出したこの地震。発生後、家主はどのような対応を行ったのだろうか。石川県や富山県に物件を所有し、遠隔地経営を行っている家主に話を聞いた。
震災レポート「能登半島地震における対応現地の家主仲間との連携で状況確認」
1月1日午後4時10分、最大震度7の地震が能登半島を襲った。この地震では、約4万9000棟の住宅が被害を受けた。石川県内の住宅被害は、床下浸水などを含め3万7130棟にまで上る(1月22日午後2時時点)。
支援物資携え状況確認
▲諏訪オーナーが見た七尾市の状況
石川県七尾市に3棟の物件を所有する諏訪秀郎オーナー(埼玉県川口市)は給水管の破裂や外壁などのひび割れといった被害を受けた。
当日、都内で地震発生の一報を聞いた諏訪オーナーは、すぐに現地の管理会社に電話を入れた。だが、管理会社含め現地は皆、津波警報が出て避難しているということで状況が把握できなかった。その後、七尾市近隣在住の友人に依頼し、物件の写真を送ってもらった。幸い、所有物件の倒壊はなかったが、クロスのひび割れが発生していた。
地震発生から4日後の1月5日、入居者への支援物資とともに七尾市に足を運んだ。「現地の確認をしない限り、今後の修繕の依頼に進むことはできません」と話す諏訪オーナー。現地のリフォーム事業者には修繕の依頼が殺到している。当然ながら、被害が深刻なものから工事が進められていくのだが、それでもやはり家主が状況を正しく把握する必要があると考えてのことだった。
また、諏訪オーナーの親戚が、かつて東日本大震災で避難所生活を送ったことがあり、しばらく食べるものもなく大変な生活だったことを聞いていた。そのため、入居者たちもつらい思いをしているに違いないと思った。
そこで、入居者全員分の水や食料、カイロなどを差し入れながら各物件の様子を見て回った。「特に断水が続く中、水の差し入れに感謝されました」(諏訪オーナー)。物件に大きな被害がなかったことが幸いして、当時空室だった2戸にも地震後は入居があったという。「七尾市には現在、空室がないと聞いています」と諏訪オーナーは話す。
今後、地震保険の鑑定人と共に再び現地入りする予定だという。保険で賄えない修繕費については日本政策金融公庫(東京都千代田区)の震災向けの特別融資枠の申請を考えている。「日本にいる限り、どこにいても地震のリスクはあります。地震保険に入っておくことは重要だと考えますし、私は保険に水災補償特約も付けています。どんなに小さな川であっても危険です。津波が起きた場合、河川の本流で洪水が発生すると、小さな支流でも被害が大きくなると思います」と話す。
事前にリスクを除く
▲所有物件のクラック
富山県に6棟のアパート、マンションと戸建て4戸を所有する西野浩樹オーナー(滋賀県彦根市)は、「物件への被害は雨どいの破損程度と軽微なものでした」と話す。
地震発生時は自宅にいた。管理会社は、恐らく家主からも入居者からも多くの連絡を受けていると考え、まずSNSで富山県の状況を確認したという。その後、富山県在住の家主仲間が物件の撮影をして現状を確認してくれた。
今回の震災を通して、駐車場の液状化、擁壁の倒壊、そして電気温水器の転倒の三点に大きなリスクがあることがわかった。「地震保険は、全損しても保険金の半額までしか出ませんが、そもそもこの三つのリスクについては保険の対象外です」と話す西野オーナー。それであれば、家主がリスクを回避するために平時から対策をしておくべきだという。「電気温水器の転倒に関しては、しっかりと固定をしておく。擁壁に関しては、ずれが生じていないかチェックをすることが大事です」(西野オーナー)
また西野オーナーはブロック塀が残っている物件では、塀を取り除くようにしている。ブロック塀も同じく倒壊のリスクを抱える。「ブロック塀の除去には補助金が下りるエリアもあります。こうした制度を利用して少しでも安全を確保する必要があるでしょう」と話す。
(2024年4月号掲載)
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