築古民家を住居とアトリエの複合型に

賃貸経営不動産再生

<<Regeneration ~建物再生物語~>>

築古民家を住居とアトリエの複合型に
相続税対策と建物価値向上を両立

茶山ゴコ

福岡市中心部から南西約3kmの住宅街にある「茶山ゴコ」。当時築50年以上だった木造戸建てをリノベーションして、2015年に「ワーク&シェアハウス」としてオープンした。

スペースRデザイン(福岡市)
𠮷原勝己代表


 同物件は、オーナーが両親と暮らしていた実家で、誰も住まなくなってからは空き家になっていた。相続の話が持ち上がったとき、オーナーは母親から「一家が住んだ愛着のある建物を次世代に生かしてほしい」という思いを聞いた。そこで同物件の活用について、不動産再生コンサルティングを行うスペースRデザイン(福岡市)に相談した。

 

 同社の原勝己代表は「相続税対策と建物の価値向上の二つが課題でした」と振り返る。

 当時は物件が立地する地域で空き家が目立ち始めていた。原代表は「人が離れつつある住宅街に人々が活躍できる仕事場を設ければ、街が元気になるのではないか」と考え、シェアハウスとアトリエへのリノベを決めた。

 

 実需利用ではなく貸家とし、さらに被相続人が生前に現金を使いリノベを実施することで、相続時の評価額の圧縮に成功。結果的に同事例では相続税はかからず、なおかつ原代表は「一般的な戸建てで想定される以上にリノベに力を入れ、建物の価値向上を図りました」と語る。

 改修は地盤から見直した。建物が傾いていたため、ジャッキアップ。地盤を強化したうえでかさ上げ工事を実施した。建物は1階を3戸のシェアハウス、2階を2戸のアトリエにし、それぞれ入り口を独立させた。1階の内階段の代わりに2階の入り口に続く外階段を新たに設けた。

 

 1〜2階全体の間取りは変更せず、床を無垢材にし、壁は塗り替えた。そして1階にはシステムキッチン、2階には共用のトイレと洗面所を新設。これら内装の改修費用に500万~600万円かかった。一方で、屋根瓦や縁側は以前のものを生かし、古い戸建ての趣を残したという。

 オープン後は、入退去のタイミングを除き満室経営が続いている。また入居者同士が地域を盛り上げようと敷地内で交流イベントを開催することもあった。22年からは、住みながら店を営みたいというニーズを受け、1階を1戸の住宅兼店舗として運営。こちらもすぐに入居が決まったという。

 

 現在の賃料は1階の1戸を約10万円、2階の2戸はそれぞれ約5万円に設定。オープン以来、同社が1棟を借り上げ、オーナーにも安定した家賃収入がある。原代表は「入居者からも人気で、オーナーにも地域にも喜んでもらえる物件に再生することができました」と話す。

(2025年10月号掲載)

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