<リサイエ>250万と5万の基本

賃貸経営不動産再生

<<賃貸事業転換の背景>>
【<リサイエ>安定収入を目指し空き家再生の専門家に】に続き、リサイエ(北海道中標津町)の山川優貴代表が取り組んでいる空き家事業の再生について話を聞く。

空き家再生事業へ乗り出す

 山川代表は、父親の友人からの話を聞いて、「安定収入といえば家主業」という認識はあったという。しかし、資金が必要で、自分が物件を保有するなんてできないと無意識に諦めていた。

 そんな中、空き家再生に取り組むことになったきっかけは、16年に通勤途中で1軒の住宅に出合ったことだった。長い間放置されている雰囲気だったが、山川代表はその家を見て「手を加えれば、まだ使うことができる」と感じたことで、これまで何となく諦めていた家主業に踏み込んだ。そこで、空き家の隣に住んでいる所有者を訪問。ここでも訪問営業に抵抗がなくなっていたことが生きた。「放置していても固定資産税がかかるし、解体するにも費用がかかります。ですので、僕に譲ってくれませんか。土地は所有したままになるので、地代も払います。入居者がいればいたずら予防にもなりますよ」と所有者と交渉。最初は突然の訪問に当然驚いていた所有者だったが、何度か説明していくうちに納得してもらい、建物のみを3万円で取得できたという。リフォームは山川代表と友人で行い、費用を約30万円に抑えた。募集をかけると入居者は程なく決まり、年間家賃収入は60万円。地代として払っている14万4000円や、火災保険料、固定資産税などを差し引いても、実質利回りで121%になった。

 「たった1軒ですが、この経験で空き家ビジネスが現実的に成り立つという確信を持てました。ここから次々と空き家物件を手に入れ、リノベーションを施して賃貸経営を行うようになりました」(山川代表)

 しかし、ここで一つ懸念が生まれたという。それは、本業の解体事業の従業員から「勝手に会社のお金を使って賃貸経営をしているのではないか」と思われてしまい、従業員のモチベーションが下がってしまうことだった。そのため、賃貸経営を始めて2年目には、会計を明確に切り分けるために賃貸事業行う会社を別で設立した。それがリサイエだった。

仕入れ基準と運用方針

 当初は元手なしで始めて、銀行からの借り入れもなかったという。わずかに手元にあった自己資金で仕入れられる物件を取得し、最低限のリフォームで費用を抑え、短期間で入居者を見つけることに注力した。「とにかく家賃が銀行口座に振り込まれることを意識した」と山川代表は当時について語る。

 最初は士業からの紹介や、解体事業のほうへ依頼が来る物件の買い取りなどで着実に保有棟数を増やしたという。とはいえ、初年度は年商800万円ほどで、自由に使える資金はほとんど残らなかった。しかし、そこから地道に保有棟数を積み重ね、3年目で年商3000万円を突破。8年目には年商1億円と、着実に業績を伸ばしてきた。

 山川代表の投資戦略の基本は「安く仕入れる」ことである。目安としては「仕入れ価格250万円、賃料5万円」のモデルを挙げる。地方では家賃が大きく上がることはなかなかないため、仕入れコストを抑えることが高利回りに直結するという。逆に、仮に500万円で仕入れても家賃が2倍になることはなく、高くても6万〜7万円ほどの家賃設定になる。これでは、投資メリットが薄れるため、安く仕入れることを何よりも重要視している。

 仕入れる建物について、価格以外に重視するのは立地だ。「学校が近い」「最低限の買い物環境がある」など、生活ニーズを満たす条件がそろっているかを重要な判断材料としている。特に学校が近いことは、職員の転勤需要が見込めるため大切な指標にしているという。

 また建物は購入後のリフォームが前提。「大切なのは見た目の派手さではなく、安全に住めること」というのが一つの基準だ。

 「もともと解体事業をしていたからこそ言えるのですが、古い家は見た目よりもずっと丈夫に造られています。木材の価格高騰もあり、今の住宅ではなかなか使われないような良い材料が使用されていることも多く、解体してしまうのは本当にもったいない」(山川代表)

 そこで同社のリフォームでは、建物の傾きや水漏れなど必ず必要な箇所を見極めて修繕を施している。結果的に不要な工事をすることがなくなり、費用対効果の高い投資になるという。

 「空き家再生の本質は、完璧を目指さず、使えるものを丁寧に生かすことだと考えています」(山川代表)

利己から利他へと変わった

 山川代表の経営は「困っている人のため」という姿勢に基づいている。当初は解体事業の経営安定のためという利己的な目的だったが、空き家再生事業が進むにつれ、関係者から地域活性化のためになっているという話を聞くようになった。そして、今では地域の空き家問題の解決にやりがいを強く感じるようになってきたという。

 「空き家ビジネスを広げ、さらに多くの地域で空き家問題の解決に取り組んでいきたいと思います」(山川代表)

本社ビルも自社で取得し再生した物件だ

(2025年10月号掲載)
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