広島|平和あってこその賃貸経営
豊田裕之オーナー

8月6日、広島は今年も原爆の日を迎えました。世界中から平和への祈りが集まる平和記念公園ですが、かつてこの地は元安川沿いに商店や映画館が立ち並ぶ広島一の繁華街でした。戦前の地図には衣料品店や喫茶店、芝居小屋などが並び、人々の笑い声と活気に満ちていました。
広島出身のミュージシャンである吉川晃司さんの父親の実家は「原爆ドーム」の川向かいにあった「吉川旅館」だそうです。原爆投下のわずか1カ月前に、祖父母が旅館を譲り渡し疎開していたため、直接の被害は免れました。しかし、父親は原爆投下後に現場へ戻り、入市被爆してしまいます。そんな父親を持つ「被爆2世」として育った吉川さんは、テレビ番組で平和記念公園を眺めながら「あの辺りに父の実家があった」と語り、平和の脆さと尊さを静かに伝えています。
にぎわいのある街も豊かな暮らしも、平和なくしては存在できません。私たちが営む賃貸経営も同じです。入居者が安心して暮らせる社会、経済が安定している環境があってこそ家賃の支払いや契約は成り立ちます。社会が混乱すれば資産価値は下がり、築き上げた建物も失われるかもしれません。8月6日を、事業を行うことができる平和への感謝と、その価値を見つめ直す日としたいものです。
(2025年11月号掲載)






