賃貸オーナーにメリット大きい修繕共済 積み立てた資金が経費計上できるのは魅力
ニッセイ基礎研究所
社会研究部都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任塩澤 誠一郎氏
賃貸住宅の計画修繕の必要性が叫ばれる中、大規模修繕のための準備資金を経費化できる新しい共済が2022年に誕生。賃貸住宅の計画修繕について研究しているニッセイ基礎研究所の塩澤誠一郎氏も、同共済の有効性に期待を寄せています。
――住宅や都市政策を研究する中、賃貸住宅の計画修繕について着目したのはなぜですか。
2006年からこのテーマに取り組んでいます。きっかけは、当時担当した受託調査研究のテーマが賃貸住宅の修繕に関する内容だったことでした。以後、賃貸住宅の計画修繕について注目するようになりました。
賃貸住宅に限らずどのような建物でも、経年劣化は避けられません。大規模修繕が必要な外壁や屋根など、常に風雨にさらされている部分が老朽化し破損すると、建材が腐ったり、住戸内で雨漏りやカビが発生したりします。当然、外観も悪くなり、周辺の物件との競争力も低下してしまいます。そして、資産価値が低下するだけでなく、入居率の悪化にもつながる悪循環に陥ってしまうのです。これは賃貸住宅を経営するうえで、避けなくてはなりません。
――賃貸オーナーが計画修繕、大規模修繕に積極的になれない状況が長く続いています。
※国土交通省住宅局「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する家主アンケート調査結果」(令和4年度)を基に地主と家主で作成
建物を健全かつ長期的に維持していくためには、計画的なメンテナンスが必要です。一方で、修繕計画を立てたとしても計画通りの修繕で対応できるとは限りません。
物件に使われている建材のスペックや置かれた環境、使用状況によって、計画よりも早く修繕が必要になったり、反対に先延ばしにしたりすることがあります。また、大規模修繕をするためには、数百万円から場合によっては1千万円単位の資金が必要です。
国土交通省が令和4年度に賃貸オーナーに対しアンケート調査を実施しました。この中で、賃貸オーナーが修繕を実施しない理由として最も多く挙がったのは、「(修繕の)必要性が理解できない」、「資金的に余裕がない」でした。また、「管理会社などからの提案がない」も高い割合を占め、この三つが主な理由であることが分かりました。
――「賃貸住宅修繕共済」の第一印象を聞かせてください。
賃貸オーナーにとってメリットの多い、良い制度ができたと感じました。
実はこれまで、賃貸オーナーがより積極的に修繕を進められるようになるために必要な制度とはどのようなものかを考えてきました。ポイントとしては、①無理のない積み立て型②貯めた資金を確実に修繕に使う仕組み③賃貸オーナーにとってのメリットの3点が含まれる制度が必要だと感じていました。
今回、誕生した「賃貸住宅修繕共済」は計画的に資金が貯められることはもとより、その用途は修繕に限られています。また、拠出したお金は全額、その年の経費として計上できるというメリットもあります。特にこの節税にもつながり経費化できるという点は、賃貸オーナーにとってかなり魅力なのではないでしょうか。
――同共済は、資金的に余裕のない賃貸オーナーにとって心強い制度です。
近年、不動産投資に興味を持つ人や、築年数が古い物件をリノベーションして長く使い続ける人が増えました。また、リノベによる建物の再生が注目を集めたり、中古物件を再生して地域の活性化を目指したりする若者も多く目にするようになりました。
そうした、ある程度の長期間不動産を所有して収益を上げることを考える賃貸オーナーにとって、同共済は必要なものだと考えます。
賃貸住宅の経営において、計画的な建物の修繕は必須のものです。もし、「どこを」「どのくらい」修繕したらいいのかわからない場合には、同協同組合に相談できるほか、国交省のサイトで公開されている「賃貸住宅の修繕・点検時期セルフチェック」もお勧めです。
賃貸オーナーがスマートフォンを使い、現地で手軽にチェックできます。資金を無理なく積み立てて計画的な修繕を実施し、ご自身の所有物件の資産価値の維持・向上に役立ててみてください。
【ホームページ】
全国賃貸住宅修繕共済協同組合
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館24階
電話:03-6275-6707 Fax:03-6665-0566(受付時間:平日9時~17時)
https://shuzen-kyosai.jp/
「賃貸住宅フェア2024」に出展します。
8⽉6⽇(⽕)、7⽇(⽔)に東京ビッグサイトで開催される共済制度の詳細など担当スタッフが丁寧に説明しますので、ぜひお越しください!
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