大切なのは子どものライフプラン
遠距離でも心は離さず話を聞く
子どもの将来設計を確認する
今回は「相続について話す」テーマの2回目、「遠方に住む子どもとのコミュニケーション」をお届けします。
皆さんの子どもは現在も実家またはその近くに住んでいますか。それとも家族や仕事の都合などから、遠方で暮らしていますか。
現代はインターネット環境やSNSの普及で、どこにいてもすぐに相手と連絡を取ることができて便利ですが、物理的に遠い場所に住んでいると、緊急事態が起こったときに即座に対応するのは難しいものです。また、日常のちょっとした頼み事や気軽な世間話などもしづらいため、コミュニケーションが希薄になりがちなのは仕方ないですよね。
そのため、遠方で暮らす子どもとは、できれば相続を検討する前に、子どもの今後のライフプランについて直接話をすることをおすすめします。
特に不動産を資産として多く持っているのであれば、子どもが将来実家のある地域に戻る意思があるのかを確認します。または遠方でも不動産を管理する時間が取れるか、余力があるかを踏まえて、相続財産の分け方を検討しておいたほうが、後に子どもが資産を有効活用しやすいと思います。
環境に差があるときは注意
こういったケースでよく聞くのが「実家近くに住む子どもと遠方に住む子どもがいる」「子どもが親もしくはきょうだいと不仲になったまま遠方に住んでいる」という悩みです。
前者ですと、近くに住んで親の面倒を見ている側の負担感が不公平感につながり、相続発生後にきょうだいが不仲となるケースや、遠方に住んでいるほうが逆に疎外感を持ち、不公平感を訴えることもあります。
後者であれば相続時に自分の遺留分を主張することが多く、実家全体の資産保全に非協力的になり、ほかの遺族と対立しがちです。
もちろん、相続に関する法的な準備はできます。しかし、縁あって今まで家族として過ごしてきたわけですから、親が亡き後も子どもたちには良い関係でいてほしいものです。
ただ、子どものほうから親に対する罪悪感や不公平感の話はしづらいものです。そのため、話す機会の少ない遠方の子どもの「親や実家、将来の生活に対する思い」を親のほうから聞いてみてください。
長年の誤解や不満、離れて暮らす不安や寂しさなどを、お互い理解できるといいですね。

佐藤 栄子プロフィール
不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。
(2024年9月号掲載) 関連記事↓ 【連載】人生100年時代 中高年のコミュニケーション:8月号掲載