【連載】人生100年時代 中高年のコミュニケーション:12月号

相続権利調整

夫婦は以心伝心と思い込まず 相続は言葉にして確認し合う

今回は「相続について話す」テーマの5回目、「配偶者とのコミュニケーション」をお届けします。

普段の関係が相続時にも影響

 皆さんは相続について、夫婦間で相談していますか。

 私がカウンセリングで相続関係の話を聞いていると、相続内容の詳細について税理士や弁護士とだけ打ち合わせて遺言書に残しておけば、夫婦で共有しなくてもいいと考えていた場合に、「争続」につながってしまったケースが多いのです。

 自身の配偶者と相続について話をするかしないかは、夫婦の普段からの関係性が影響しているように思います。

 例えば、妻には仕事の話を一切しないという人であれば、相続財産の一部に事業絡みの資産があったり、投資で運用している資産があったりすると、それを一から説明するのは骨が折れると感じます。内容についても恐らく理解してもらえないだろうと考えて話さない、ということもあるでしょう。

 また妻の実家の家業を引き継いでいる場合などは、妻のきょうだいや親戚がすでに全体の資産を管理しており、夫が知る手だてがないという場合もあります。

会話で思いを正しく受け継ぐ

 いずれにしても、被相続人と相続人である配偶者との意見が合致していないと、その次の相続、例えば子どもやきょうだいへの相続発生時に被相続人の思いが引き継がれず、争いに発展する可能性があります。

 一例として、ある男性が「妻に相続財産の全額を残す。その後は子どもたち(娘が2人)で等分に分けてほしい」と遺言していました。しかし、いざ妻が1人になると何かと長女を頼ることが多くなり、残った財産はすべて長女に譲ると言い始めて次女が不服を訴え、関係が悪化したことがありました。

 これは父親と母親で相続の在り方に対する考えが違っていたのに、生前にそれぞれの思いを共有していなかったために起こってしまったトラブルでした。

 婚姻期間が長ければ長いほど「配偶者なのだから死後も自分の思いをくんでくれるはず」と思う気持ちは理解することができます。

 しかし、家族に対する思いは夫婦でも時に違うことがあります。改まって話しづらいかもしれませんが、結婚記念日やお互いの誕生日といった節目の日などに、今までの感謝とともに「相続財産をどう引き継ぎたいか」を話しておくことをおすすめします。

佐藤 栄子

[プロフィール] 不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。

(2024年12月号掲載)

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