Part 1:スムーズに進めるために必要なこと
トラブルなくスムーズに生前贈与をするためには、贈与契約書を作成するといい。ここでは、契約書を作成する際の注意点と生前贈与をするまでの流れを見ていこう。
生前贈与までの流れ
まず行うことは、後継者の選定・育成だ。次に財産評価と贈与の計画化、それから契約書の作成、贈与実行となる。
何より後継者を鍛えることが重要だ。いきなり事業を承継したとしても、後継者が散財すれば経営が傾く可能性がある。代々関わっている税理士ら専門家がいるのであれば、連絡が取れる状態にしておこう。
贈与の実行に先立って、贈与を実行しようとする年の財産評価額を調べて、贈与税を算出しよう。不動産を贈与するオーナーの場合、その年の路線価が判明する7月以降に財産評価額を調べたらよい。土地を贈与した場合は、その土地には相続税対策上で最重要である小規模宅地の減額特例が使えない。将来特例を適用したい財産は贈与を避けるべきだ。
なお土地に対して現金資産の割合が少ない人の場合は、収益構造や財産の構成比を改善しなければ、相続対策を行うことも難しい。飯塚税理士によれば、あらかじめ資産の整理・改善をすることで事業の今後の展開を確実なものにするとともに、まずは相続の納税資金を確保することが大切だという。
「共有している土地や狭小地などの使いにくい土地は、次世代に引き継ぐ前に資産整理することが不可欠です。そのまま後継者が引き継いで、税金の支払いや土地の売買に苦労するケースが珍しくありません。贈与と並行して資産改善をしてください」(飯塚税理士)

争いを避けるために契約書を作成
贈与は口約束でも有効だが、契約書を作成したほうが万一のトラブルを防ぎやすい。契約書を用意すれば、国税庁やほかの推定相続人に対して、贈与があったことの証明になる。
贈与契約書は日付がなかったり、日付を吉日と記載したりせずに明確な日付を記載しよう。署名することが望ましい。
多額や重要な資産の贈与契約書は「公証役場で確定日付の付与を受けるべき」と松木税理士は話す。確定日付とは、その日にその文書が存在したことを証明するものだ。公証役場で700円を支払うと、確定日付の付与を受けられる。「贈与契約書に確定日付が押印されていたことによって、贈与無効の裁判が退けられた例がありました。トラブルを防ぐために、公証役場で日付印を押してもらうべきでしょう」と松木税理士は話す。
(2025年 5月号掲載)
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