【特集】次世代に資産をつなぐ 生前贈与の正しい活用法:①生前贈与の基本

法律・トラブル相続関連制度

生前贈与は事業承継を円滑にできる一方で、親族の関係悪化や二重課税などの思わぬ落とし穴が潜んでいる。そこで松木飯塚税理士法人(東京都港区)の飯塚美幸税理士と松木眞美税理士に、不動産オーナーが注意すべき生前贈与について話を聞いた。

 

解説

松木飯塚税理士法人(東京都港区)

松木飯塚税理士法人は、企業・資産税務に特化した税理士事務所。相談者が営む事業の発展と資産を防衛するために、細部まで丁寧にコンサルティングしている。

 

押さえておきたい生前贈与の基本

 民法549条において、贈与は「当事者の一方が財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することにより効力を生ずる」と定義されている。つまり生前贈与とは、生きているうちに財産を無償で与えることを指す。

 生前贈与には次世代に資産を託せるメリットもあるが、思わぬ落とし穴も潜んでいる。

 例えば、毎年同額を贈与する場合、贈与契約書は年ごとに作成する必要がある。松木税理士は「契約書に『100万円を15年間にわたって贈与する』という記載をすると、1年目に1500万円の贈与に対して贈与税が課されてしまいます。契約書は年ごとに作成しなければなりません」と注意を促す。

 また生前贈与を行う場合は、遺留分を侵害しないかを考えることも重要だ。生前贈与分は特別受益として遺留分の基礎に算入されるため、相続発生後にトラブルになりかねない。

 こっそり生前贈与を行うこともよくない。なぜならほかの相続人は、被相続人からの受贈者への贈与に対して課された贈与税額の開示を税務署で受けることができるからだ。後になってから過去の贈与が判明し、争いの種になる可能性がある。生前贈与を行うときは、ほかの相続人に伝えたうえで贈与し、円満な親族関係を維持しよう。

(2025年 5月号掲載)
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