スチールパネルで高断熱高気密を実現
防音性も高く楽器演奏可
エスペランサ南行徳(千葉県市川市)
(左から)向井建築設計事務所(東京都江戸川区)向井一郎所長
マツイ(千葉県印西市) 松井髙代表取締役
NSハイパーツ(岐阜県可児市)守沖敦代表取締役
NSハイパーツ 品質管理部 飯ヶ濵哲夫部長
東京メトロ東西線南行徳駅から徒歩10分。幹線道路沿いに立つのは「エスペランサ南行徳」。9月に竣工した3階建て12戸のマンションだ。
オートロックのエントランスを入ると、エアコンのある内廊下に続く。駐輪場の配置を工夫したことで、全室角部屋を実現。設計を担当した向井建築設計事務所(東京都江戸川区)の向井一郎所長は、広さ、間取りにもこだわった。「43㎡かつ2LDKの両方を満たす物件はあまりありません。検索に強いのです。検索結果を見て物件の高い性能を知ってもらえれば、相場より少し家賃が高くても決まります」(向井所長)
周辺相場より10%程度⾼い家賃設定をしたうえ繁忙期ではないにもかかわらず、すでに30件以上の内⾒申し込みがあり、7件が契約に⾄った。
一番の特徴が、断熱性や気密性、防音性に優れていることだ。
「NSスーパーフレーム工法(NSSF工法)」という第三の鉄骨造(薄板軽量形鋼造)がこれを可能にした。パネル工法の一つで、枠材を薄板軽量形鋼に置き換え構造⾯材と合わせて強度を確保。その外⾯を断熱材ですっぽり覆うことで断熱性・気密性を⾼め、在来鉄⾻造の弱点であった、鉄骨が熱を伝えやすい点と気密性問題を克服。断熱材を張ったパネルを工場で組み立てるため現場での作業を省力化でき、工期も短くなる。コストも住宅メーカーの鉄骨造の7割ほどで済むという。
パネルを供給し、NSSF工法についてアドバイスするNSハイパーツ(岐阜県可児市)の守沖敦社長は「オーナー、設計、施工がワンチームとなり鉄⾻系賃貸マンションで⽇本⼀の断熱性能を⽬指しました。もともと断熱性・気密性に優れているNSSF⼯法なので、断熱材の厚みを増して窓の性能を上げることで1棟あたりUA値0・36を容易に達成。1棟あたり80万円ほどの追加コストで、時代が求める省エネルギー性、健康性と地震への安全性を両⽴できました」と胸を張る。
施工を担当したマツイ(千葉県印西市)の松井髙社長と向井所長が省エネに強みを持つ賃貸を研究している中で「いい工法がある」と知り、守沖社長に声をかけて賃貸住宅の建築につながった。エスペランサ南行徳は、3者がタッグを組んで5棟目の賃貸マンションとなる。
同物件について、マツイが仲介・管理を担っているのも強みの一つ。内見時に楽器を持ってきて防音性能を体験してもらうと、内見者は高確率で入居を決めるという。建物由来のクレームにはすぐ工事で対応できることも、施工事業者が管理に関わるメリットだ。
NSSF⼯法の1時間耐⽕性能と劣化対策等級3を⽤いることで、鉄⾻造マンションと表記できる。設計費込みの価格は150坪の標準建物で「施⼯⾯積×坪100万円+消費税」。そのほか外構工事、地盤改良⼯事の費用が別途かかる。
【物件概要】
物件名:エスペランサ南行徳
所在地:千葉県市川市
構造: 鉄骨造(薄板軽量形鋼造)、3階建て
戸数:12戸
竣工年:2024年9月
間取り・広さ:2LDK・2SLDK/40.92~60.03㎡
家賃:13万2000~18万2000円(管理費込み)
(2024年12月号掲載)
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