【特集】オーナー・事業者に聞く 利益を生み出し続ける⺠泊経営のこつ③

土地活用その他建物

勝てる民泊 オーナー事例

青森市の実家を民泊に デジタル化で遠隔地から運用

宮本泉オーナー(63)(茨城県つくば市)

家主不在型民泊で 離れた実家を活用

 通信事業を行う会社で営業職に就く宮本泉オーナー(茨城県つくば市)。青森市の実家である築40年超の木造一戸建てを改修し、19年から民泊として活用している。

 18年に実家で暮らしていた両親が相次いで亡くなった。実家は長男である宮本オーナーが相続。ただし、「3年は売らないでほしい」と弟に言われたこともあり、活用方法を模索していたという。「18年6月に施行された民泊新法で民家も基準を満たせば民泊として運用できるようになったことを知り、これならと思ったのです」と宮本オーナーは振り返る。青森市は新幹線、フェリー、飛行機など多くのアクセス手段があるうえ、観光スポットとして人気の八甲田山や青森・秋田両県にまたがる十和田湖へのアクセスも良好。物件の近くにはスーパーもあるので利便性も高い。

 「民泊を始めるまでが大変でした」と語る宮本オーナー。東京で会社員として働く宮本オーナーは、家主不在型の民泊を選択。その場合は家主居住型に比べて消防設備などの基準が高くなる。有給休暇を取得して、何度も青森市に足を運び、消防署や市役所を巡った。当時は民泊新法が施行されたばかりで、宮本オーナーの物件は同市内で二つ目の民泊。公的機関にもノウハウがない中、担当者と一緒に調べながら申請を進めていったという。家財道具はそのままにして補修した。最終的にかかった費用は50万円ほどだった。

▲春には庭のチューリップが宿泊客を出迎える

 

清掃スタッフは現地調達 必要経費は惜しまない

 宿泊料金は何人でも定額で1泊2万円。Booking.com経由で集客し、申し込みが入ると宮本オーナーにメールで通知が来る。その後、宮本オーナーから宿泊者に電子錠の暗証番号、物件の利用ルール、付近の観光案内をメールで送信する。それと同時に、清掃を依頼している現地スタッフにも連絡。宿泊後すぐに清掃が行われるよう手配する。「これくらいの作業であれば、会社の業務の休憩時間にできてしまいます」(宮本オーナー)。大きな修繕については、近隣の事業者にすぐ対応してもらえるよう、現地での人脈づくりも行った。

 Booking.comに手数料として宿泊費の12%、清掃スタッフには交通費込みで1回4000円を支払っている。相場より高い委託料を支払うことでいい清掃スタッフを採用することができた。

 

▲ヨーロッパからの宿泊客。世界各地から宿泊しにやってくる

  運用当初こそ、古くてカビのにおいがすることや、仏壇があることに対して低い評価が付けられるといった困難もあった。しかし、最初から募集サイトでネガティブな情報を示すことで、状況を理解した人のみ宿泊することになり評価が改善。宿泊予約が伸びることにつながった。海外からの宿泊者は、かえって日本の文化に触れられると喜ぶのだという。「民泊は、空き家問題の解決や、実家を売却したくない人へのいいアイデアになると思います。ネットの技術と地元の協力者がそろえば難しいことではありません」(宮本オーナー)

(2025年 4月号掲載)
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