事業用不動産契約時に明確な規定設けてトラブル回避

土地活用その他建物

【特集】住宅とは違う事業用不動産による上手な土地活用③

契約書の内容
明確な契約規定がトラブル回避の鍵

アクト法律事務所(東京都港区)
波戸岡光太弁護士(50)

 事業用の賃貸借契約において、貸し手が不利にならないために、契約でも注意が必要だ。
 土地活用で事業用建物を建てた場合のテナントとの賃貸借契約の主なポイントについて、賃貸借契約に詳しいアクト法律事務所(東京都港区)の波戸岡光太弁護士に聞いた。

①契約方法
 テナントとの賃貸借契約では「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類がある。普通借家契約は期間が満了しても原則、更新される。一方、定期借家契約は期間が満了すると契約が終了。更新はなく、テナントがさらに借りたいときは再契約が必要になる。波戸岡弁護士の経験では定期借家契約を好む家主が多いという。

②契約期間
 契約の期間については、普通借家契約では最低1年間だ。定期借家契約では特に規定はない。家主の考えやテナントの要望を踏まえて契約で定める。

③中途解約
 契約の相手が企業であっても借地借家法で借主の権利が守られているため、家主側からの中途解約はよほどのことがない限り難しい。これはサブリース事業者とマスターリース契約を結ぶ際にも同様のことがいえる。
ただし、サブリースの場合、契約書に条項か特約で中途解約の規定が設けられていれば解約することも可能だ。事前通知の時期や違約金についても触れたほうがいい。波戸岡弁護士によれば、違約金については契約期間の長さにもよるが、契約残存期間の全額分や半年分の賃料を設定する例がよく見られるという。

④保証金
 保証金は居住用賃貸における敷金と同様の場合もあるが、高めに設定されることが多い。賃料の3~12カ月分の間のケースがよく見られる。また解約時に償却費として自動的に一部を差し引くことを契約に織り込むこともある。償却費は保証金の10~20%の例が多い。

 以上のように、事業用の土地活用は検討の仕方から契約まで注意点が多い。そのため「細かいことまで把握するのは難しい」と考える家主は、事業用不動産に強みを持つ不動産会社に管理を委託したり、法律面は専門家に相談したりすると安心だろう。

 

■テナントとの賃貸借契約におけるポイント

①契約方法:定期借家契約を好む家主が多い
②契約期間:定期借家契約では特に規定なし。契約で定める
③中途解約:家主側からの解約は難しい
④保証金:賃料の3~12カ月分に設定されることが多い。償却費を設けるか否かはケース・バイ・ケース

 

トラブル

小売店と思って契約したのに飲食店として利用される

 テナントと賃貸借契約を結ぶ際は使用目的の規定にも注意が必要だ。
 例えば、使用目的を単に店舗としか定めておらず、小売店として使われると思って貸したら、テナントが飲食業を始めるといったこともあるからだ。不特定多数の人が出入りし、騒音や臭いの発生というリスクも考えられる。この場合、解約もしくは飲食をやめるように注意することが対応策となる。
 またそれ以前に、このようにならないために使用目的を具体的にし、必要であれば「〇〇以外は不可」とはっきり明記すべきだ。

 

(2025年7月号掲載)
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