長期的な安定収入と節税を期待して賃貸経営を始めてみたものの思うように収益が上がらないという人がいます。そうならないためには、周辺の競合物件の状況や所有物件が地域の賃貸ニーズに合っているかどうかなど、事前にしっかり把握・検討しておくことが重要です。そうした情報は、さまざまな公開データからも得ることができます。ここでは国土交通省の「建築着工統計調査報告・住宅着工統計」を基に、2024年の東北エリアにおける貸家(賃貸住宅)の新築着工数を見てみましょう。
東北エリアでの土地活用、新築着工総戸数のうち賃貸住宅は42.1%
国土交通省では建築基準法に基づき、全国の建築物の建設の着工状況を明らかにするため建築主から都道府県知事に提出される建築工事届を集計し「建築動態統計調査」として毎月公表しています。その中で、特に新たに建築された住宅に関する調査結果をまとめたものが「住宅着工統計調査」です。
同調査によると、東北エリアで2024年に新築された賃貸住宅は1万7818戸で、賃貸以外を含めた着工総戸数4万2374戸のうち42.0%が賃貸住宅でした。
さらに賃貸住宅着工戸数の割合を見てみると、宮城県が半数以上を占めており、以下は岩手県、福島県、山形県、青森県、秋田県の順。宮城県と山形県では23年と比べてそれぞれ9.1%増、31.1%増と増加した一方で、その他の県では減少しました。

新築賃貸住宅での土地活用は木造が主流の青森県

青森県の24年の賃貸住宅着工数は1205戸で、前年と比べて10.3%減少しました。
構造別の内訳では、木造が1160戸で全体の96.3%とほとんどを占めたほか、鉄筋造が45戸の3.7%。鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリート造は0戸でした。
建て方別に見ると、長屋建てが913戸で最も多く、次に共同住宅202戸、一戸建て90戸と続きました。新築賃貸住宅の全体のうち75.8%が長屋建てとなっています。
岩手県では新築賃貸住宅での土地活用の約8割が長屋建て

岩手県の24年の新築賃貸住宅は2487戸の着工で、前年比22.2%減となりました。
構造別では、木造が2007戸で全体の80.7%を占め最多。次に鉄骨造が336戸、鉄筋コンクリート造が138戸でした。
用途別の内訳を見ると、青森県と同じく長屋建てが最も多く1965戸、共同住宅443戸、一戸建て79戸と続きました。新規着工した賃貸住宅全体のうち79.0%が長屋建てという結果です。
宮城県の新築賃貸住宅での土地活用は共同住宅が過半数

宮城県では賃貸住宅9175戸が24年に新規着工し、23年と比較して9.1%の増加となりました。
そのうち木造が、全体の70.1%となる6432戸、鉄骨造と鉄筋コンクリート造がそれぞれ1333戸、1410戸着工しました。
用途別では共同住宅が4817戸、長屋建て4177戸、一戸建てが181戸となり、東北エリアで唯一、共同住宅が過半数を占めました。
秋田県の新築賃貸住宅での土地活用は着工数が前年比34.4%減

秋田県の24年の賃貸住宅着工数は769戸で、23年と比べて34.4%の大幅減。東北エリアで最も減少幅が大きくなりました。
構造別では、木造が677戸で最も多く県内全体の88.0%を占めています。次に鉄筋造65戸、鉄筋コンクリート造27戸と続きました。
建て方別では長屋建て566戸、共同住宅190戸、一戸建て13戸の順となっています。
東北エリアで最高の伸び率となった山形県の新築賃貸住宅での土地活用

山形県では、24年の新規賃貸住宅が1745戸着工し、前年比31.1%の増加。東北エリアにおいて最も増加伸び率が高くなりました。
構造別では木造が1167戸、鉄骨造311戸、鉄筋コンクリート造267戸となり、東北エリア内の他県と同様、木造が最も多くの割合を占めています。
建て方別に見ると長屋建て1233戸、共同住宅474戸、一戸建て38戸でした。
前年比減となったものの減少幅がエリア最少だった福島県の新築賃貸住宅による土地活用

福島県の24年における賃貸住宅着工戸数は2437戸となり、前年比で2.0%減少。東北エリア内で最も小さい減少幅でした。
構造別に見ると木造が1625戸で、東北エリア内の他県と同様に最多であった一方、鉄骨造が746戸と3割を超えたのは福島県のみでした。
賃貸住宅の建て方別では、長屋建てが最も多く1944戸でした。宮城県を除く東北エリアすべての県と同様、福島県でも長屋建てが主流となっています。
東北エリアの新築賃貸住宅の傾向を知って、納得のいく賃貸住宅建築を
東北エリアにおける24年に着工した新築賃貸住宅のうち、仙台市という東北エリアで最も人口が多い都市を有する宮城県が、半数を占めていました。前年比でも9.1%の増加となっており、宮城県の賃貸市場はまだ拡大傾向のようです。
また前年比31.1%の大幅増加となった山形県ですが、賃貸住宅の新築着工戸数では東北エリア6県のうちの4番目の多さ。まだまだ市場が広がっていく余地はあるでしょう。
構造の傾向を見ると、全ての県で木造戸数を占める割合が最も高く、東北エリアの賃貸住宅においては木造建築が主流であることが伺えます。用途別では、宮城県を除く東北エリア内すべての県で、長屋建てが半数以上を占めました。降雪量が多い東北エリアにおいて、間口が少なく、壁を隔てて隣家とつながる長屋建ては寒さや雪の対策がしやすい構造と言えるでしょう。
活用を考える土地の風土や地理的条件、賃貸市場の傾向を把握し、納得のいく不動産投資を実現しましょう。
(2025年12月26日更新)

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