貸住宅市場を盛り上げる、キラリと光る地場企業を紹介します。
たけのこハウス(兵庫県尼崎市)
障がい者へ住まいの選択肢 空き家の福祉転用を促進
たけのこハウス(兵庫県尼崎市)は、住宅確保要配慮者である障がい者を専門に賃貸仲介を行っている。同社が顧客対象とするのは、身体障がい者、精神障がい者、知的障がい者ら、障がいのある人全般だ。
竹下雄貴代表(39)
同社の竹下雄貴代表は大手の仲介会社や管理会社で15年勤務した後、2021年12月にたけのこハウスを立ち上げた。20代の頃、障がい者手帳を持つ男性から部屋探しを依頼されたときの経験がベースになっているという。当時、営業トップの成績を誇っていた竹下代表でも、その男性に部屋を紹介することはできなかった。「すでに就職も決まっていて、物静かな印象の男性でした。でも障がい者手帳を持っているという、その1点だけでどの物件でも門前払いなのです」(竹下代表)
障がい者が住まいの選択肢を奪われる状況を目の当たりにし、「自分がこの状況に風穴を開けずして誰が開けられるか」という気概を持っての独立だ。同社では部屋探しの依頼を受けてから成約まで半年ほどかかる。これまで累計約40件を成約している。「精神疾患を患っている人を入居させると問題を起こすのではないかと考えられがちですが、今まで成約した入居者には、そうした問題は一切起きていません」と竹下代表は話す。
それはひとえに、入居希望者一人一人としっかり面談を行っているからこそのたまものであろう。症状や服薬状況、訪問看護の頻度などをしっかり確認する。必要があれば支援団体と連携を取っていく。「障がいとひとくくりにされますが、その種類も重さもそれぞれです。その人がどういう障がいを持ち、普段どういう支援を受けているのか事前に知ることが大事だと思っています」(竹下代表)
「受け入れたことがなくわからないから怖い」という思いを家主が抱くことも理解する。そのため面談後に、管理会社の担当者と3人で話をする場を設ける場合もあるそうだ。
賃貸物件は社会の資産 遊休不動産も有効活用
外国人や高齢入居者も門前払いされるケースがあるが、今は外国人であれば翻訳、そして高齢者であれば見守りといったサービスも増加し、何より受け入れる事例が増えたことで、以前に比べて家主の受け入れハードルも下がりつつある。それと同様に、障がい者の入居もごく一般的なことにしていきたいと考える。
そのために、仕組みづくりと事例を積み上げていく予定だ。今後は行政や介護・福祉事業者との連携を強めていく。空き家や旧社員寮といった遊休不動産を利活用し、障がい者受け入れの賃貸物件に転用していくモデルを推し進めていく。「これを『物件の福祉転用』と呼んでいます。賃貸物件は個人の資産ではありますが、住まいの提供という点で社会の資産でもあると思っています。所有者である家主と同じ志を持って障がい者の住居の選択肢を広げていけたら」と竹下代表は話す。
(2024年10月号掲載)
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