古き良き大阪の長屋文化を現代に継承

賃貸経営イベント

「第14回 オープンナガヤ大阪2024」 で長屋ライフを見学

2024年11月16・17日に「第14回オープンナガヤ大阪2024」が開催された。現代の生活に合うようリノベーションや修繕を行った大阪の長屋が一般に公開されるイベントだ。実行委員会の委員を務める大阪公立大学の小池志保子教授と長屋のオーナーに話を聞いた。

大阪公立大学
小池志保子教授

実際の住人に直接聞ける 長屋のリノベと住み心地

 イベント当日は時折雨も降り、あいにくの天気だった。だが、普段はなかなか見られない長屋ライフを見学できる貴重な機会とあり、イベントは大盛況。長屋を所有するオーナーや大阪公立大学の学生、長屋文化やその建築に興味を持つ多くの人々が訪れた。

 大阪には明治時代や昭和初期の長屋も残っており、オープンナガヤ大阪では、大正から昭和初期の「近代長屋」と呼ばれる長屋を主に公開している。

 その中の一軒、「須栄広長屋」の須谷雅子オーナー(大阪市)は、改修前の長屋はひどいものだったと笑う。「長期間誰も住んでいなかったので、お化け屋敷みたいでした。ホラー映画のロケ地になりそうなぐらい」と話す。

 取り壊そうと考えていたとき、初回のオープンナガヤ大阪の見学ツアーに参加したという。古い長屋でもリノベできることを知り、その場ですぐ小池教授や大阪市立大学の教員に相談した。

 前庭に増築した部屋や風呂を取り払い、間取りを変更した。傷みがひどい建具は撤去して、古建具屋で中古品を調達。昔の建具はサイズが決まっていたため、ほかの長屋で使っていたものを再利用することができた。建具や壁などは当時の雰囲気を再現。光が通るよう欄間はそのまま残してある。

▲須栄広長屋の外観(上)と内部(下)。イベントがきっかけで再生された

▲昭和初期の長屋を改修。躯体現くたいあらわしで天井高を確保している

若者のレトロブームが後押し ますます広がる長屋の活用法

 魅力的に再生できても、その良さが伝わらないと住む人は増えない。リノベするだけでなく、実際の物件を見てもらうことが大事だ。「多くの人に知ってもらうにはどうすればいいか」と小池教授は考えた。その頃、大阪市立大学の藤田忍名誉教授とイギリス・ロンドンへ視察に行った際「オープン・ハウス・ロンドン」を見た。住人が普段の生活を営んでいる中で建築物を見学することができる。「お宅訪問」さながらに建物を見て回るのが面白い。「実物を見て、居住者と直接話をしてもらったら、住む人やファンが増えるのではないか。それなら長屋の良さが伝わるかも」とオープンナガヤ大阪のイベントをスタートした。

▲昭和14年に建てられた平屋を設計事務所に再生。オープンナガヤでは多くの見学者で賑わう 

▲近年では、ブームの後押しで若者からの注目度も高い 

 昨今のレトロブームもあり、長屋は若い世代からも注目を集めている。生まれ変わった長屋は、居住用物件や店舗、レンタルスペースなど使用目的はさまざまだ。1階をショップや工房にし、2階を住居にする人もおり、効率が良く暮らしやすいと若い世代に人気がある。カフェやアトリエなどのほか、教室に利用している長屋もあり、近隣住民にも好評だ。

 レンタルスペースとして活用されている「銀杏菴(いちょうあん)」には、以前近所に住んでいた人々が集まるのだという。再生された長屋で、過去に思いをはせる。それはかけがえのない時間だろう。

 今後も長屋の活用の幅は広がりそうだ。

「ナガヤフィルム」でタイムトリップ

イベント時には、各長屋でかつての長屋の姿をポストカード状の「ナガヤフィルム」にして配布。
参加者は、現在の長屋の姿にナガヤフィルムを重ねることで、過去から現在に至る時代の経過を楽しむことができるという仕掛けだ。

(2025年 2月号掲載)

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