中国・香港の不動産事情
コロナ前に不動産価格ピーク
香港は、世界で最も不動産価格が高い都市の一つです。東京都の半分程度の面積しかなく山がちな九龍半島と香港島、その他の島々から成り、そこに740万人が暮らします。高度な経済活動が営まれ、当然、地価も高いです。特に都心近くでは、猫の額のような土地に高層マンションが林立しています。

香港の不動産価格のピークは2018〜19年ごろでした。当時は東京都港区でも専有坪単価1000万円超のマンションは数えるほどでしたが、香港の都心では2000万円超えが当たり前。さらに中国本土や海外からの需要が高く、不動産価格の高騰が社会問題になっていました。
そのため、外国人が香港の不動産を買う場合は、30%の割増印紙税が別途課せられていました。例えば専有面積30坪で坪単価2000万円の6億円のマンションを外国人が買うと、割増印紙税30%がかけられて総額7億8000万円となるような市況だったのです。
価格は約3割下落も賃料上昇
香港の不動産市況が反転したのは、コロナ禍に突入した20年前後です。それ以前から進んでいた中国政府の統制によって欧米の金融人材が流出し、東アジアの金融センターはシンガポールに移っていきつつありました。さらに中国本土の不動産バブル崩壊の影響で購入者が減ったことなども影響して、今、香港の不動産価格は下落局面の真っただ中です。新築物件の売値はピーク時より約3割下がったといわれています。

山地が迫る土地に高層ビルが所狭しと立ち並ぶ
さらに23年、外国人を対象とした割増印紙税が廃止されました。売値の下落と印紙税廃止の効果を合わせると、外国人にとって香港不動産はピーク時の約半額で買えることになります。
面白いことに、売買価格が下落する局面でも賃料は上昇を続けています。主なきっかけは23年2月から米国が政策金利を4%ほど上げたことです。
香港ドルは米ドルと為替を固定しているため、米国の金利が上がると、香港の金利も上がります。ただでさえ無理をして高価なマイホームを買っていた香港住民は、住宅ローンの金利上昇で住宅購入に手が届かなくなり、賃貸する人が増えました。今は都心近くの便利な場所ほど賃料が上がっているのです。
売買価格下落と賃料上昇の効果で、賃貸物件の利回りは価格のピーク時には1〜2%でしたが、今では3〜4%となり、物件や場所によっては東京都心より高い利回りが期待できます。
アジア太平洋大家の会
代表 鈴木 学

[PROFILE] 海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2025年 7月号掲載)
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