全国の家主の会に聞いた2025年繁忙期総括③
賃料上げに成功した事例
テナントと住戸が入るビル バブル期の水準まで賃料上昇
和田寛オーナー(川崎市)は、管理会社と相談し所有物件の賃貸契約更新時に現行賃料の5〜7%アップを入居者に提示した。
小田急電鉄小田原線と東京メトロ千代田線が乗り入れる代々木上原駅近くのビルでは、各戸で値上げ交渉に成功。値上げ後の賃料は、父がビルを建てたバブル経済期の35年前の価格にまで達している。
和田オーナーは「必要経費が増大している中で、家賃の値上げはいずれ必要な対応です。私の経験を共有することで、ほかのオーナーの参考になればうれしいです」と話す。
和田寛オーナー(66)(川崎市)

テナント
1年前から告知し賃料値上げ
テナントにおいては、契約更新の1年前には賃料値上げを告知。それに伴い給排水設備の修理や外壁修繕といったテナントからの依頼を受け、入居中に設備をバリューアップすることで納得して値上げに応じてもらえた。
また入居前に「これから先の利益が十分見込める業種であるかどうか」を見極めていた。今回の値上げ交渉の成功も、十分に利益を出しているテナントであるから成功した一面もあるようだ。
和田オーナーは、他業種の人々と交流し、現在どのようなテナントがはやっているか情報収集を行う。
「今ビルに入居しているネイルサロンも、私は『もうからないのではないか』と心配していた業種です。親睦のある社会保険労務士に相談したところ『ネイルサロンははやっていますよ』とお墨付きをもらい、入居に至りました。土地柄もあり、高級志向のサロンなので利益を出しており、値上げ交渉にも応じてもらえました」(和田オーナー)
テナントは家賃に見合うだけの収入を得ていれば、値上げに応じることができるケースが多く、和田オーナーのような入居テナントの見極めが、後の賃料アップの交渉に影響する場合もある。
- ▲テナントのネイルサロンは受付にも装飾が施された高級志向の店舗
- ▲待合室も広い人気店だ
レジデンス
管理費値上げで物価高に対応
住戸でもテナント同様に、更新の1年前から賃料アップの交渉を進めたが、やはりテナントに比べてハードルが高い。そのため、和田オーナーは管理費の値上げでコストの上昇に対応した。
賃料の名目での値上げは入居者の心理的抵抗が大きい。管理費の値上げであれば、入居者も物価上昇のコスト反映として受け入れやすいのだという。
物価高による管理コストの上昇は、家賃よりもよりわかりやすい管理費の名目で入居者の支払いに反映する方法がある。
(2025年7月号掲載)
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