<<シンポジウムレポート>>
国土交通省
既存住宅の活用と維持保全を考える
国土交通省が行う「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」が2025年度で10年目となり、成果報告と今後の住宅ストック(国内の既存住宅)形成の方向性を考えるシンポジウムが1月21日、都内で開催された(同省主催)。同事業は、維持・向上が適切に図られた住宅ストックが市場で適正に評価される仕組みづくりの取り組みを採択して支援するもの。これまで延べ150以上の取り組みが採択された。当日はオンライン参加者も含めて335人が聴講した。
テーマ説明
10年で性能向上の機運が醸成
国土交通省住宅局
参事官(住宅瑕疵担保対策担当)付
佐分利悠貴子氏
国交省住宅局参事官住宅瑕か疵し担保対策担当付の佐分利悠貴子氏が同事業のこれまでの成果と今後の動きについて報告した。
主な成果は二つ。一つ目は、既存住宅の性能向上に関する機運が醸成された。二つ目は、金融機関による住宅価格の査定において、以前から重視されていた耐用年数に加えて、性能面を含める考え方が導入された。
佐分利氏は「今後は、建物の価値を評価する仕組みや金融商品の開発について、さらに裾野を広げる必要がある」と語った。
2026年度以降は、既存住宅の流通量の増加、住宅取引時における情報開示、消費者支援体制の整備などを促進する事業を創設する。
基調講演
生活者が関わる既存住宅再生
ブルースタジオ
建築家・クリエイティブディレクター
大島芳彦氏
都市再生を目的とするリノベーション事業を多数手がけた建築家の大島芳彦氏が、生活者が関わり合う既存住宅の活用について講演。東京都豊島区内の商店街にある2階建て店舗兼住宅の空き家の再生事例を紹介した。
当該地域に高齢者、ニューファミリー、外国人観光客がいることに着目し、1階をミシンが使えるカフェ、2階をゲストハウスにリノベした。1階に子どものために何か作りたい母親とミシンの使い方を教えたい高齢者、地域の子どもたちが集い、コミュニケーションが活発に。ゲストハウスに泊まる外国人観光客とも交流が生まれている。
基調講演
中古住宅を選択する人が増加
リクルート
SUUMO編集長
池本洋一氏
リクルートのSUUMO編集長の池本洋一氏が登壇。住宅ストックにおける市場やニーズの変化を説明した。
この5〜6年、住宅購入の検討で、戸建て、分譲マンション共に中古物件が選択肢として広がってきた。また一次取得者層が減少し、買い替え層が倍増している。池本氏は「買い替え市場が成熟してきて、一次取得者から売りが出ている状況に変わってきた」と語った。また「SUUMO(スーモ)」では、物件情報で耐震性能や断熱性能をうたう掲載が目立ってきた。
トークセッション
広がる良質化の維持・評価

同事業における採択にあたり、これまで応募されてきた各取り組みを審査した横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授の江口亨氏、青山リアルティー・アドバイザーズ副社長の服部毅氏、名古屋学院大学経済学部教授の上山仁恵氏が登壇。10年間を振り返った。
既存住宅の良質化・良質性を維持する取り組みについて、江口氏は「分野を横断した取り組みが必要となる中、いろいろな業種の事業者が垣根を越えた協議会をつくり取り組むことは、重要な意味を持った」と語った。
既存住宅の良質性を適正に評価する取り組みについて、服部氏は「良質性を適正に評価する動きは世の中で随分と受け入れられてきた」とし、その評価を消費者に伝えることの重要性も指摘した。
既存住宅の良質性を評価して融資する取り組みについて、上山氏は「多くの取り組みで金融機関との連携が難しいようだった」と語った。また良質な住宅ストックを普及させるには、消費者のリテラシー向上のための教育も必要だと強調した。
司会を務めた池本氏は「10年間で多数の応募があり、国交省の今後の住生活基本計画への礎になるような提案もあった」「良質化が市場価値にどう転換するのかが重要だ」と語った。
(2026年4月号掲載)






