<<人脈と世界が広がる馬主道>>
第3回:不動産オーナーが馬主になるメリット
不動産経営につながる3つのプラス効果
「信用の獲得」「判断力アップ」「事業への好影響」
不動産オーナーが馬主になる。そのメリットは「楽しい」だけではない。利点として、競馬業界という閉鎖的なネットワークへアクセスできること、自分の意思決定の質を高められるという学習効果、そして自らの不動産事業への波及という点も挙げられる。
つまり馬主は「趣味と投資の中間」ではなく、経営資源を増やす活動として位置付けられる。今回は、実務の目線で馬主になるメリットを解説する。

▲ゴール時の数センチメートルの差が、1000万円の賞金の差になることもある
馬に関わる閉じた世界 関係者から信用を得る
馬主は免許制であるため、その世界に誰でも入れるわけではない。競走馬に関わる人たちの間にはいわゆる「限定コミュニティー」が形成される。馬主になり、そのコミュニティーに入ると、継続的な情報交換の機会を得ることができる。そこで得られる情報は貴重なものだが、コミュニティーの価値は、単なる情報交換や名刺交換にとどまらない。
不動産経営では、金融機関、管理会社、施工事業者といった、長期にわたって取引をする相手との関係が重要だ。相手との関係が経営の成果を左右するといってもいいほどである。
それと同様に馬主活動においても、生産者、育成担当者、調教師、厩務きゅうむ員、ほかの馬主といった人たちとの信頼関係が大切になる。馬に関わる多くの人たちと良好な関係を築くことで少しずつ信用を得て、それが活動成果につながっていく。
コミュニティーで信頼関係を構築すること自体が資産になるのだ。

▲馬主活動は騎手や調教師、調教助手といったさまざまな人の努力によって支えられている
馬主は意思決定の連続 判断力が鍛えられる
不動産経営においては、募集条件の決定、修繕の実施、売却タイミングの見極めなど、不動産オーナーに判断が求められる場面が多々ある。馬主も不動産オーナーと似ているが、馬は不動産よりも変化するスピードがとても速いという点で大きく異なる。
馬主としての活動は、かなり短いサイクルで進む。調教や育成方針の決定、出走レースの選択、馬の状態の評価、費用対効果の検討、撤退判断(引退・転厩・繁殖入りなど)といった、意思決定を求められる場面が短期間に連続するのだ。
このように、馬主のPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの回転は速いため、判断力が鍛えられる。馬主活動により鍛えられた判断力は、不動産経営においても役に立つ。経営者としての「意思決定の質」の向上につながると考えられるからだ。

不動産事業に及ぼす好影響 紹介・協業や地方の情報収集
馬主活動をしている人には、ほかにも何らかの事業を行っている人が多い。そのため馬主が集うコミュニティーではよく、資産組み換えや相続、投資などが話題に上りやすい。そうした雑談から、それぞれの事業に好影響を及ぼすシナジーが生まれることは多々ある。
現に私も、自身の経営する不動産事業に関して、不動産案件の紹介や共同投資の誘いを受けたり、法人利用(社宅・宿泊・研修)を依頼されたりといった、さまざまないい影響があった。

また馬主になると、馬の生産地や育成牧場などの視察に行く機会が増える。その際に、それまで接点のなかった地方の土地や空き家情報に触れることができるようになった。
重要なのは、馬主活動を「ただの交際」で終わらせず、周囲の人たちとの関係構築と情報の整理を習慣化することだ。これにより、馬主活動を自身の事業の成果につなげることができる。
まとめると、不動産オーナーが馬主になるメリットは以下の3点だ。
①免許制コミュニティーにおける「信用という資本」の獲得
②高速PDCAによる経営者としての判断力アップ
③不動産事業への好影響
次回は「お金の話① 減価償却と馬」をテーマに解説する。「馬主活動はなぜ不動産オーナーと相性がいいのか」について、制度の面から具体例を挙げて示したい。

▲1月のレースで勝利したカシマスウィープ号

(2026年5月号掲載)




