父が取得した不動産を守る次男

相続事業継承

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父が取得した不動産を守る次男
姪への事業承継に向けた準備

 長沼良和オーナーは現在、法人名義で群馬県内にマンション1棟と介護施設3棟、東京都にアパート1棟、民泊ホテル2棟を所有。そのほかに兄の持つ土地にある倉庫と、父と共有名義のアパートの賃貸経営をしている。祖業の工務店を営んできた父の不動産資産を承継し、自身の手腕でさらに拡大させているさなかだ。

長沼良和オーナー(群馬県高崎市)


 次男である長沼オーナーが実家に戻ったのは約20年前の28歳の頃。

「この頃は両親が現役でした。私が実家に戻ったことを機に、創業者である父の思いを尊重する形で仕事の引き継ぎ・役割分担をして行くことになりました。家は兄が継ぎ、家業の工務店は苦楽を共にしてきた社員に引き継いでもらいたい。そしてそれ以外の不動産事業者などは、次男の私が全部やれということです(笑)」(長沼オーナー)

 長沼オーナーが不動産の分野を担ったのには、家業に入る前の経験が関係している。新卒で入社した広告代理店を退職した後、4年間レオパレス21で不動産開発と地主を対象とした資産運用の部門で営業職を務めていたのだ。工務店かつマンションオーナーの息子として子どもの頃から数千もの物件を見てきたうえ、実務経験もある長沼オーナーが一家の不動産部門を担うのは自然の流れでもあった。1級建築士の父と経理の母、不動産知識のある長沼オーナーの「三人四脚」で、それぞれの得意分野を生かしながら経営を行っている。


 しかし現在は、県外物件の管理は基本的に管理会社に任せ、両親や自身の経験を最大限に生かすよりも「自分がいなくなっても稼働する体制」をつくることに注力している。これには、長沼オーナーの家主業に対する信念が関係する。

サービスを止めないために
40代で始める承継準備

 長沼オーナーが事業承継の意義として1番に掲げるのは「入居者に住宅というサービスを提供すること」。そして2番目が「資産継承」。次に長沼家の資産を受け継ぐことになるのは、姉の娘である23歳のめいだ。長男の兄と次男の長沼オーナーは共に子どもがおらず、長沼家の次代を引き継ぐのは、彼女のみとなる。

 「といっても、彼女はこの春に理学療法士として働き始めたばかり。いずれ事業を引き継ぐにしても兼業オーナーとして運営する前提で、私の代に体制を整えるつもりです」と話す長沼オーナー。完全にめいに引き継ぐ10年後、20年後に向けて、少しずつ準備を整えている。

 かなり早い段階で継承準備を始めたのは、身近な経営者が早世したことがきっかけだった。そこで起きたさまざまなトラブルを見て「自分がもし急死するようなことがあれば、こういうトラブルが発生するのだ」と実感した。

 スムーズな経営の移譲に向けて、2025年末、少しずつ長沼家の資産について伝えることから始めた。その後の契約の場にはめいを立ち会わせ、現在所有する物件の性質を一つ一つ説明した。来期をめどに、姉とめいを法人の役員にし、少しずつ株式も移譲していく予定だ。株式の6割は長沼オーナーの手元に残し、自分の死後にめいが経営の実権を握るよう計画している。それと同時に相続の計画も進め、妻には現金を残すよう考えている。

高崎市のRC造マンションが賃貸事業のメインとなる物件だ


 また賃貸経営が個人に依存していると、万が一の場合に入居者へのサービスが停止することが考えられる。そのため、基本的にはサブリースを利用して自分が手をかけなくても営業に支障がない状態を目指している。

「もし相続争いが起こって入居者へのサービスが滞るようなことがあったら、それが一番くだらないですからね」(長沼オーナー)

 長沼家の創業の地は、現在兄が土地を所有し倉庫建物を貸し出している高崎市の土地。これに加えて、53世帯4テナントと立体駐車場を擁するマンションがメインの物件になっている。自らを「中継ぎの社長」と称する長沼オーナーは、創業者である父のつくり上げてきた資産のうち「これだけは」というものは守ることも自分の役目と考えている。それと同時に、メインの土地を守るため、経営に参画するようになるとまず不良債権になりうる土地を整理し、フレキシブルに売買できる物件を意識して購入してきた。都内のアパートなどは流動性の高さを見て購入した物件だ。

民泊ホテルはWALLMATE不動産との協業で展開している

 それと並行して介護施設や民泊ホテルも運営することで経営の多角化を実現している。長沼オーナーは「不動産事業で大切なのは経験の長さではなく、引き出しの多さ」と考えているためだ。後継者であるめいにも広い視野を養ってもらうため「不動産で修行なんてしなくていい。少なくとも33歳までは自分の好きなことをしなさい」と伝えているという。

多くの地主を見てきた経験
きれいな引き際を目指して

 営業職時代、長沼オーナーはいろいろな地主と会う機会があった。多すぎる資産が相続する若い世代を疲弊させてしまう場面も幾度となく見てきた。

 「そのときに、自分のポケットの中に入り切らない資産は無駄なんだなと思いました。三途の川を渡る時も六文しか使わないでしょう」と話す長沼オーナー。そこで、父母が現役のうちに自らが家業に入り、次の代に向けた準備も自身が40代、相続人が20代というかなり早い段階で始めることにしたのだ。

 「自分の家くらいは争いなく、きれいに事業と資産の継承ができるだろうと思って、時間をかけて準備をしています」(長沼オーナー)
(2026年 7月号掲載)

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