事故物件の再生に使命 ― A-LIFE

賃貸経営不動産再生

<<事故物件に向き合う>>

事故物件の再生に使命 僧侶となった遺品整理会社の社長

悲惨な事件や孤独死、自殺が起きた「事故物件」―。不動産市場において敬遠され、放置すれば空き家と化すこの難題に、総力を挙げて挑む企業がある。年間4000件の遺品整理事業を主力とするA‐LIFEだ。同社の亀澤範行社長は真言宗の僧侶として、事故物件で袈裟(けさ)を着て供養を行う。その思いは、亡くなった人や遺族の気持ちに寄り添いながら「不動産として活用が難しくなる空き家を1軒でもなくしたい」という使命感だ。

A‐LIFE(奈良市) 亀澤範行社長

関西で年間40件買い取り

 同社は「関西クリーンサービス」の屋号で、関西エリアを中心に年間4000件の遺品整理を受注する。そのうち1割が事故物件だ。その遺品整理の現場で不動産売却の相談を受け、事故物件の再生事業につなげてきた。関西エリアで年間40件ほどの事故物件を買い取り、再生している。亀澤社長は「事故物件は、心理的瑕疵(かし)物件として告知義務が発生するため、不動産としての活用が難しくなってしまいます。事故物件による空き家を1軒でもなくしたいという使命感で、これまで再生事業に取り組んできました」と話す。

 そもそも亀澤社長が同社を創業したきっかけは約20年前。他界した祖母の家を片付けた時の出来事にある。祖母の自宅の片付けに困り、自治体に相談後、遺品の処分を依頼したのは廃棄物収集・運搬事業者だった。

 「ごみ収集車に投げ込まれる家財が、圧縮・破砕されながら車両の内部に押し込まれていくのを見て、つらくなりました。遺品や家財をもっと丁寧に扱い、処分をしてほしいと思う人は多くいるのではないかと考え、起業しました」(亀澤社長)

▲遺品整理では丁寧な作業を心がけている

 

SNSのチャンネル登録22万人

 同社では遺品整理や特殊清掃の事業を通し、孤独死など日本の深刻な社会問題の実態を伝えるため、近年、SNS発信やテレビ出演にも力を入れている。

 5年ほど前から、定期的に動画を投稿している「ユーチューブ」は、チャンネル登録者数が約22万人(日本語版・英語版の合計)になる。社員がどのように遺品整理や特殊清掃を行うのか、現場の様子などを配信している。「他人を家に招き入れる顧客が、信頼できる会社に任せたいと思うのは当然のことです。ユーチューブでは、遺族の気持ちに寄り添い、住宅内で亡くなった人に手を合わせ、丁寧に家財を扱う様子も映しています」(亀澤社長)

 その中でも印象的なのは、亀澤社長が袈裟を着て、供養をしている姿だ。亀澤社長は2024年7月に、得度を受けて真言宗の僧侶となった。遺品整理や特殊清掃の現場において、亡くなった人の供養や、仏具の魂抜きと呼ばれる儀式を、自ら執り行っている。以前は提携する寺に依頼していたが、遺族が遠方に住んでいるケースも多い。亀澤社長が遺品整理の時に自身で供養を行うことで、顧客の日程調整や金銭的な負担を軽減できるようになった。


 さらに、26年3月には奈良市で寺院を開設。個人事業者が自殺したビルを買い取り、フルリノベーションを行った。寺院では故人の供養を行うだけでなく、講話や説法、写経などの行事を企画し、地域住民が気軽に立ち寄れる場所にしていく。

 「資産的価値を大きく失ってしまった事故物件を、人が集う場として再生することで、新たな社会的価値を持たせたかったのです。ネガティブな印象を払拭し、地域のためになる場所にしたいと思います」(亀澤社長)

殺人事件のビルで子ども食堂

 象徴的な再生事例が、大阪市生野区にもある。同社は強盗殺人事件が発生したビルの1階で、子ども食堂を運営している。同ビルで21年に起こった強盗殺人は、新聞やニュースで大々的に報道され、多くの地域住民が知る事件だった。亀澤社長は遺品整理や改修工事で現場に足を運ぶ中、「悲惨な事件が起こった場所を、地域住民に喜ばれる場所にしたい」と思い、ビルの一部で子ども食堂の開業を決断した。

 鉄骨造3階建ての同ビルは、もともと2〜3階が殺されたビル所有者の自宅兼事務所、1階が貸店舗だった。事件発生後、遺族の要望で同社が買い取り、大部分は賃貸物件として運用している。2~3階はワンルーム4戸の住居フロアで、改修工事の完成から1年半で満室となった。募集当初は苦戦したものの、物件名を「A‐LIFE RESIDENCE(エーライフレジデンス)」に変更し、エントランスに館銘板を付けたところ、印象が一新し、入居申し込みが入り始めたという。


 改修時に工夫した点もある。事件現場の部屋があった住戸のみ家賃を相場の7割に設定。ほかの3戸は築年数に応じた周辺相場と同等の家賃にした。水回り設備は高いグレードの商品を設置したため、入居者からは「新築のような清潔感と設備が整った部屋に手頃な価格で住める」と実利的なメリットが支持されたようだ。

 同ビルの購入費用は、事件時に犯人の侵入経路となった戸建てと合わせて約1000万円。改修費用は3000万円だった。戸建て住宅もファミリー世帯に賃貸中だ。どちらの物件も賃料収入によって10年程度での投資回収を見込む。

 26年1月にオープンした1階の子ども食堂では、毎月1回、地域の子どもたちに無償で食事を提供している。「自殺や高齢者の孤独死は、貧困や社会からの孤立が原因の1つです。遺品整理会社として、貧困や孤立といった問題の解消につながる場所を自社で運営したいという思いが以前からありました。事故物件を地域に必要とされる場所として再生することで、失ってしまった価値を取り戻すことができると思います。この物件再生がモデルケースとなればうれしいです」(亀澤社長)

▲事件があったビルの1階は子ども食堂として生まれ変わった

リフォームや解体工事を内製化

 A‐LIFEの強みは、グループによるワンストップ体制だ。遺品整理、特殊清掃、不動産買い取り再販、リフォームや解体工事、さらには不用品の処分やリユース品販売までをグループで内製化している。例えば、親が他界し誰も住まなくなった住宅を片付けて手放そうとする“実家じまい”をしたい顧客にとって、同社はワンストップで任せることができる利便性が高い企業だ。複数の事業者を探す手間が省けるだけでなく、費用の削減にもつながる。

 グループによる内製化は、事故物件の再生事業においても寄与する。所有者や遺族から遺品整理とセットで不動産の売却について相談を受け、買い取りに至るケースが多い。そのため、不動産の仕入れに伴う広告料や手数料がかからない。リフォームは、デザイン設計や施工管理を自社で行い、職人への分離発注によって低コストを実現。更地にする場合の解体工事も内製化している。

 低コストで再生した事故物件は、相場の7割程度の価格で再販してきた。物件の立地や規模、事件性などによって大きく異なるが、買い取り価格は平均500万円程度。25年7月期に買い取った40件の内訳は、戸建ての個人住宅が32件、分譲マンションの住戸が8件だった。仕入れた物件の7~8割は個人住宅として再販。収益物件として自社所有する場合は、取得と改修の費用を8年程度で回収できるようにしている。

 今後は地域の不動産会社と連携し、より多くの不動産再生をサポートしたいという。これまで自社での買い取りが難しかった遠方の不動産などは、売買仲介によって地域の不動産会社に取得してもらう。その不動産会社には、再生ノウハウも一緒に提供するといった構想だ。「遺品整理会社は不動産流通の入り口にいる存在です。地域の不動産会社と連携し、不動産が再び市場に流通する仕組みをつくることで、空き家という社会問題の解決に貢献できると考えています」(亀澤社長)

(2026年7月号掲載)

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