<<人生に、船旅という選択を ~大人のためのクルーズ案内~ >> 第2回
実は大事な「どの船に乗るか」
クルーズ船の種類と選び方
クルーズ船はよく「動くホテル」と言われる。そしてホテルと同様、クルーズ船にも個性やグレードの違いがある。だから「どの船に乗るか」で船旅の雰囲気は大きく変わる。
施設規模や乗客との距離感 スケールの違いを堪能する
現在、世界のクルーズ市場で主流なのは大型船だ。全長300m級、乗客数5000人超という巨大船も珍しくない。
大型船の魅力は、圧倒的なスケールを誇る施設群。レストラン、複数のプール、劇場、ショッピングエリアなどがそろう、まさに洋上の巨大リゾートで、ファミリーやグループ旅行にも人気だ。
一方、中型船は乗客数が数百~2000人前後。大型船ほど施設は多くないが、静けさと適度な距離感がある。
さらに小型船になると、乗客数は数十~200人程度。大型船では入れない小さな港に入れるのも魅力で、乗客同士やスタッフとの距離も近い。数日航海すると顔なじみが増えてくる。
グレードに合わせて船旅の楽しみ方も変わる
グレードの違いもある。よくある誤解が「大型船=豪華」という思い込みだ。クルーズの世界では一般的に、小型船ほどラグジュアリーで代金も高くなる傾向にある。
最も裾野が広いのは大型の「カジュアル船」。比較的リーズナブルな価格帯で、短い日程も多い。ホテル代、移動費、食事代、エンターテインメント代を含めて考えると、実はコストパフォーマンスが良い。近年はMSCクルーズの「MSCベリッシマ」による日本発着クルーズで注目されている。

▲MSCベリッシマの吹き抜けのアトリウム。大型客船はいわゆる「映えスポット」が多い
次に「プレミアム船」。落ち着いた雰囲気で、食事やサービスもワンランク上だ。日本から乗れる船では「ダイヤモンド・プリンセス」が知られる。

▲ダイヤモンド・プリンセスのプールデッキ
そして最上位が「ラグジュアリー船」。多くはアルコールやスペシャリティレストランの費用も含むオールインクルーシブが基本だ。
さらに「日本船」もある。「飛鳥Ⅱ」「飛鳥Ⅲ」「三井オーシャンフジ」、9月就航予定の「三井オーシャンサクラ」などで、日本語サービスや和食といった、日本人向けの安心感が強みだ。
- ▲鹿児島港に停泊する飛鳥Ⅲ。乗客定員680人で日本人向けのラグジュアリーなサービスが受けられる
- ▲飛鳥Ⅲの船尾デッキ。ゆとりがあり混雑感が少ない
興味深いのは、同じグレードでも船会社ごとに個性が異なる点。エンターテインメントを重視する、食事に定評がある、社交文化を重んじるなど実にさまざまだ。
私自身「どの船が一番いいか」と聞かれると毎回悩む。なぜなら、その人が旅に何を求めるかで、答えが変わるからだ。にぎやかに遊びたいのか。静かに海を眺めたいのか。美食や社交を楽しみたいのか。
まずは「自分はどんな船旅がしたいのか」を考えてみると、船選びはぐっと楽しくなる。
- ▲和食党の人は日本船がおすすめ。旬を感じられるおいしい食事が船旅の楽しみになる
- ▲クイーン・エリザベスの吹き抜けのダイニングルーム。英国の伝統を今も受け継いでいる
海事プレス社「CRUISE」 田絵里 編集長
1999年、早稲田大学卒業。607日間の世界一周旅行を経て旅行メディアの世界へ。2010年、海事プレス社入社、15年より日本初のクルーズ専門誌「CRUISE」編集長。国内外クルーズラインの取材、誌面制作を幅広く手がけ、「WEB CRUISE」の運営も担う。
(2026年8月号掲載)






