<<新築 NEW FACE>>
建築家と連携した受注生産型木造マンション
在庫や販売マージンを排除しコスト削減
建築費の高騰や人手不足により、収益性の確保が難しくなっている。そんな中、不動産エージェント支援や不動産売買プラットフォームの運営を行うTERASSは、受注生産型木造マンション事業を開始した。この事業は、同社の不動産仲介の知見を生かした新たな収益不動産モデルだ。土地のポテンシャルを最大限に引き出す物件の提案により、投資家や地主の資産運用を最大化することを目指す。
TERASS(東京都渋谷区)
江口亮介社長
TERASSは、2025年12月に投資用木造マンション「EN.by TERASS」の販売を開始した。同事業では同社が土地の仕入れから建築、販売までを一貫して手がける。同社の江口亮介社長は「デベロッパー主導で利益が上乗せされた物件ではなく、仲介事業者として最適な『本当に良い商品』を顧客に提供したいという強い意思から生まれました」と同事業についての思いを語る。
特徴は主に3つ。受注建築型、高水準な建物性能、建築家の監修による設計だ。
1つ目の受注建築型のメリットは、高い収益性が確保できること。土地については仲介により取得することも、すでに所有している土地で進めることも可能だ。
「当社は850人の不動産エージェントが在籍しており、彼らが土地情報を保有しているため、土地の仕入れや発掘に役立っています」(江口社長)
建築は投資家の計画に基づき、受注生産で実施。デベロッパーへの発注であればかかってくる在庫コストや販売マージンを省くことで、費用を削減する。これにより投資初期段階から収益性を高め、利回りの最大化と中長期的に安定した運用を可能にした。
2つ目は建物性能の高さとサステナブルな木造建築であること。断熱性や耐震性などの性能については、30年に求められる基準に相当するレベルを満たしている。建築基準法で定められている基準の約1・5倍に相当する耐震等級3で、劣化対策等級も最高ランクの3という高グレードだ。また断熱等性能等級は5、一次エネルギー消費量等級は6で、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)相当の基準を満たす高断熱・省エネ設計により、快適な居住性と光熱費削減を実現した。
- ▲緑も多く配している
- ▲ウオーキングクローゼットで収納力を確保
高断熱・省エネ設計のほかにも注目したいのは、防音性能だ。木造の弱点とされる床・壁の遮音性を高め、RC造マンションと同等の静粛性を実現した。床衝撃音は重量衝撃音(LH)59、軽量衝撃音(LL)54相当を確保し、上下階・隣戸間の生活音を大幅に低減したのだ。
「当社が木造マンションと銘打っているのも、大手不動産ポータルサイトの『SUUMO』で『マンション』と表記できる条件である3階以上の集合住宅で、各住宅性能評価の基準をクリアしているからです」(江口社長)
このように環境性能とランニングコストの双方に配慮した、長期保有に適した設計となっている。
3つ目は建築家監修による高いデザイン性だ。デザイン面では、建築家・谷尻誠氏と連携し、空間価値を追求した。一方で、一般流通している商材を組み合わせることで、投資用不動産に求められる安価な建築費も実現した。デザイン性に加え、設備の充実を図ることで入居者の満足度を高め、長期入居につなげている。特に女性の安心感を考慮し、エントランスには顔認証システムなどの最新セキュリティー設備を標準装備した。結果として空室率の低下と高稼働を実現し、賃料水準の維持・向上を通じて、高く安定した収益性につなげている。

▲家具を合わせやすいシックな内装
こうした3つの特徴により、同社では都内の駅から徒歩圏内で利回り6%以上を確保できる物件を企画している。
ターゲットとするのは、金融資産3000万円以上、年収1500万円以上の会社員を中心とした投資家や、遊休地の生産性の向上を狙う地主だ。
同社は、顧客の投資リスク許容度と目的に合わせ、エリア別に3タイプを提供。利回り6・5%超の郊外物件を対象とした「グロース」、安定性を重視した首都圏のJR大宮・浦和などのターミナル駅周辺エリアの物件を対象とした「スタビリティ」、東京都下や首都圏の東京寄りのエリアなど首都圏でも中間的なエリアの物件を対象とした「バランス」だ。この3タイプで提案を分類し、最適な資産形成をサポートする。
事業開始から約5カ月で、すでに京浜急行電鉄金沢文庫駅近くの第1弾を含め7案件が進展した。そのうち5件は土地から購入するランドセット型、残りは土地所有者の案件だ。
融資面では、同社が仲介事業から培ってきたさまざまな金融機関との関係性を生かし、物件価格の100%融資を受けられた事例もあるなど、投資環境の整備にも力を入れている。完成後の物件管理は、グループ会社のTERASS PARTNERSが手数料3%で担当。一貫したサポート体制を構築した。
26年5月末に埼玉県朝霞市に自社物件が竣工した。
「今後は、年間36棟の安定的な供給ペースを目指すとともに、市場や建築トレンドに合わせて年に1度、デザインのマイナーアップデートも継続的に行っていきます」(江口社長)
まずは1都3県を中心に建築・販売していく予定だ。
(2026年8月号掲載)






