【新連載】駐車場は「ただの空き地活用」ではない

コラム駐車場経営の盲点

<<駐車場経営の盲点>> 第1回

駐車場は「ただの空き地活用」ではない

本連載では、土地や建物の価値を高めるための「駐車場経営」の考え方を体系的に解説する。第1回は「駐車場」を空き地活用や副収入の手段としてだけでなく、不動産経営の一部として見直す視点を整理したい。

不動産全体の評価に影響

 地主・家主にとって、駐車場は昔からなじみ深い土地活用の1つである。物件を建てるまでの暫定活用として始めるケースもあれば、月極駐車場として長く安定運営するケースもある。近年では、コインパーキングという形で機動的に収益化を図ることができる選択肢も広がり、駐車場は「使っていない土地を生かす」ための代表的な方法として定着してきた。

 この見方はもちろん間違っていない。土地を遊ばせず、比較的始めやすく、状況によっては転用もしやすい。そうした特徴は、今後も駐車場活用の大きな魅力であり続けるだろう。実際、賃貸経営や相続対策、保有資産の見直しを考える局面で「まずは駐車場にしておく」という判断が合理的な場面は少なくない。

 その一方で「駐車場は空き地活用の一種である」という認識だけで止まってしまうと、見落とすことがある。それは、駐車場が単独で収益を生む装置であるだけでなく、建物や施設の価値、さらには不動産全体の評価にも影響する存在だという点である。(図1参照)

経営目的によって使い分ける

 例えば、賃貸住宅に付帯する駐車場について考えてみたい。地方や郊外ではもちろん、都市部でも車を持つ入居者にとって、駐車場の有無や使いやすさは入居判断に直結する。車室が狭すぎる、出し入れしにくい、契約手続きが煩雑、来客用スペースがない、防犯面に不安がある――こうした不満は、住戸そのものの条件が良くても、物件全体の印象を下げてしまう。駐車場は建物の脇役に見えて、実は入居率や満足度に静かに影響しているのである。

 また店舗やクリニック、事業用不動産に付帯する駐車場では、その影響はさらにわかりやすい。止めにくい、入りにくい、どこに止めていいかわかりにくい。あるいは、精算方法や利用ルールが直感的でない。そうした小さな不便は、来店や来館のしやすさに直結し、結果として施設の選ばれやすさに差を生むだろう。駐車場単体の売り上げが多いかどうか以上に、本体施設の収益や競争力に影響することがあるのだ。

▲駐車場は形態によって役割が違う

 ここで重要なのは、月極駐車場、コインパーキング、付帯駐車場のどれが優れているか、という単純な比較ではない。図2で示したようにそれぞれに役割があり、適した土地、立地、および経営目的が異なる。安定性を重視するなら月極が適する場合もあるし、短時間利用の需要を取り込める場所ならコインパーキングが力を発揮する。建物や施設の価値を支えることが主な目的なら、付帯駐車場としての設計や運用が重要になる。

 つまり地主・家主にとって本当に大切なのは「駐車場にするかどうか」だけではなく、「どのような駐車場として位置付けるか」である。収益装置として考えるのか、本体不動産の魅力を支える設備として考えるのか、将来の転用を前提とした暫定活用として考えるのか。この整理が曖昧なままだと、見かけの稼働率や短期収益だけで判断し、長い目で見た不動産価値を取りこぼしてしまうことがある。

活用次第でポテンシャル発揮

 近年、駐車場を取り巻く環境は変わってきた。利用者のニーズは多様化し、キャッシュレス化や無人化も進み、オーナーが考えるべき論点は以前より増えている。駐車場経営は昔に比べて単純な事業ではなくなりつつあるが、裏を返せば、考え方次第で土地や建物の価値をより引き出せる余地が広がっているともいえる。

 駐車場は目立たない存在であるがゆえに、後回しにされやすい。だが、目立たないからこそ差が出る領域でもある。建物の新築や大規模修繕ほど派手ではないが、使われ方を丁寧に見直すことで、不動産経営の質は確実に変わってくる。

 本連載では、月極駐車場やコインパーキングといった身近なテーマから出発しつつ、賃貸住宅や店舗、クリニックなどに付帯する駐車場まで含めて「駐車場をどう見るか」を整理していきたい。駐車場は、ただの空き地活用でも、単なる付帯設備でもない。不動産経営の見えにくい一部でありながら、実は成果を左右する重要な構成要素でもある。そのことを1年かけて、地主・家主の皆さんにお伝えしていければと思う。

 

ピットデザイン(東京都千代田区)
岡田 英明 社長


東京大学工学部卒業。交通工学を学び、リクルート、ザイマックスグループ、レーサムの経営を経て現職。交通と不動産のプロパティマネジメントの双方にまたがる知見を基盤に、駐車場運営の高度化、来館導線設計、施設収益向上、管理品質向上に取り組んでいる。

 

(2026年8月号掲載)

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