家族一丸となって承継を見据える

相続事業継承

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妻の父から受け継いだ賃貸経営
家族一丸となって承継を見据える

 相原尚仁オーナーが妻の美保オーナーと結婚したのは35年前、26歳の時だ。美保オーナーの実家である相原家の不動産事業は、父が自宅を含む土地を購入した時から始まった。

相原尚仁・美保オーナー(神奈川県平塚市)


 父はオーダーメードの洋服店を経営していたが、ちょうど引退を考えていた時期に、親族から現在の自宅を含む数百坪の土地を「買ってほしい」と持ちかけられた。市街化調整区域にあたる土地だったが、1970年までに住宅として活用した実績があれば住宅として利用することできる。そのため、父は急いで自宅を含む8棟を建設し「線引き前宅地」として活用できる状態に整えた。美保オーナーが所有する戸建て借家の一部は、その時に建てたものだ。

 それから二十数年後、相原家の一人娘である美保オーナーと結婚した尚仁オーナーは、自身が既に地元を離れていたことに加え、実家には兄がいたこともあり相原家の婿養子となる。その1年後に義父の所有する物件での立ち退き交渉に関わったことから、少しずつ賃貸経営の世界に足を踏み入れることになった。

▲自宅から続く敷地は美保オーナーの父が整備した

 当時を振り返って美保オーナーは「小さい頃から家主業の苦労を見ていましたから『自分は絶対に会社員と結婚するんだ!』と思っていました。それが、2人で賃貸事業を引き継ぐことになったのですから、わからないものですよね」とほほ笑む。現在、尚仁オーナーは木造アパート2棟と戸建て借家1棟の計15室を所有。美保オーナーは鉄骨アパート1棟と戸建て8棟の14室を所有している。

自主管理から体制変更 管理委託・サブリースを利用

 尚仁オーナーいわく先代の賃貸経営は「超アナログ」。家賃は手渡し、帳簿も手書き、もちろん管理も自主管理という状態だった。会社員として働く傍らで賃貸経営に関わる尚仁オーナーでは対応できないことが多く、26年前に義母が病に倒れた後、徐々に管理委託に移行していった。

 「会社員の私は、昼間にトラブルが起これば身動きが取れないので、妻に対応させることも多くなります。本当に苦労をかけました」と話す尚仁オーナー。家賃の滞納や夜逃げといったトラブルも発生し、客付けにも限界を感じていたという。このような背景もあり、現在では、尚仁オーナー名義の2棟のアパートと戸建て1戸は管理委託、美保オーナー名義の戸建て2戸も同様で1棟はサブリースで運営している。

 しかし、管理を任せている現在でも、夫妻は「目の届く範囲で経営する」ことにこだわっている。過去に入居者の不注意でアパートが火事になったことや、逆に自宅の隣の物件で起きた孤独死にいち早く気付けた経験から「自宅から車で30分圏内」というエリア設定を守っている。エアコンクリーニングや水回りの交換、さらには新築したアパート全6戸分の宅配ボックス設置など、自ら現場に出向いて対応することも多いという。

 一方で、時代の変化には柔軟に対応してきた。20年前は新築で利回り10%を購入の判断基準としていたが、現在は5%の物件でも購入する。またかつて購入した物件は2LDK〜3LDKのファミリー向けが中心だったが、2025年に竣工した小田急電鉄小田原線伊勢原駅前の物件では、金銭的に余裕のある単身者や学生をターゲットにした1LDKを採用した。学生は4年で確実に入れ替わるため、安定した需要と新陳代謝が見込めるという戦略だ。

▲ターゲットを単身者に一新した25年竣工の1LDKマンション

相続に悩んだ経験生かし準備 次世代への承継を考える

 2人の不動産経営中に起きた最も大きなトラブルは、家賃滞納でも火事でもなく、相原家の相続に関することだった。

 実は、美保オーナーは後妻の娘であり、父と前妻との間には2人の姉がいる。父が亡くなった際、公正証書遺言が用意されており、金額的には均等に分けられていたにもかかわらず、異母姉2人は財産の分与方法に強い不満を示した。遺言書は有効で、姉の相続権や遺留分を侵害する内容ではなかったが、良好だったはずの姉妹仲は険悪になり、今ではほとんど没交渉だという。

 「自分たちが苦労したからこそ、2人の娘には絶対に仲良くしてほしい。資産を巡って争うようなことはさせたくないのです」(尚仁オーナー)

 現在、尚仁オーナーは62歳。長女夫婦が墓の管理を含めた家の承継に理解を示していることもあり、本格的に自分たち夫婦の財産相続について考え始めている。

 26年の正月、夫婦は娘たちに「これだけの資産がある」と包み隠さずすべてを伝えた。オープンな姿勢が功を奏したのか、最近では娘たちもそれぞれ賃貸経営のセミナーに興味を示すなど、うれしい変化が表れ始めた。

 「娘たちの変化を通じて、私たちも相続税のことを考えるようになりました。実は、相原家の不動産は義父の代からすべて無借金で手に入れてきたものなのです。このままだと、相続発生時に多額の相続税が必要になってしまいます。物価も金利も上がる中、まだ決心はついていませんが、2030年までには借り入れをしてRC造の物件を建てようと考えています」(尚仁オーナー)

(2026年8月号掲載)

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