<<不動産×宿泊事業の可能性>>
—ホテルという選択
「建て貸し方式」「FC方式」 地主が選ぶホテル経営
スーパーホテル(大阪市)は8月7日時点で国内180店舗·海外2店舗を運営する。3月には「スーパーホテル長崎·諫早天然温泉」、「スーパーホテルハノイ」を新規開業するなど、国内外で着実に拠点拡大を進めている。顧客満足度の高さにも定評がある同社の土地活用について、取締役副社長・東京本部開発企画部本部長の片岡巌雄氏に聞いた。
スーパーホテル(大阪市)
取締役 副社長・東京本部 開発企画部本部長
片岡巌雄氏
- ▲立地を分析し、需要を見極めた経営で土地の有効活用を目指している
ホテルに適した立地条件
ビジネス需要やインバウンドで堅調なホテル業界。スーパーホテルも積極的に出店を進めている。同社にとって、好立地とはどのようなものなのだろうか。
「主に、ビジネス需要を狙ったエリアと、観光需要を狙ったエリアで、それぞれ異なる基準を設けています」と片岡氏は話す。
ビジネス向けでは、客室数150室規模のホテルの場合で1000〜1200坪の広い敷地面積であることを要件としている。宿泊客の大半が車を利用することから、敷地内に十分な駐車場スペースの確保が求められるからだ。そのため駅前よりもロードサイドの用地が候補となる。
一方観光向けでは、より立地の重要度が高い。公共交通機関を利用する宿泊客が多いことから、駐車場スペースよりもアクセスの利便性が最優先となり、駅から徒歩圏内であることが必須条件だ。ビジネス向けより狭い土地でも開発の検討の俎上に載るという。観光向けでは床面積1000坪程度が最低面積となっている。
「面積要件はある程度の目安です。周辺の環境や人の流れ、競合ホテルの出店状況などを総合的に判断しています。データではわからない部分も重視するのが当社の特徴で、創業者で現会長である山本梁介は、今でも出店候補地に1人で足を運び、近隣ホテルに1泊して各種スポットへのアクセスや人流を観察しています」(片岡氏)

▲ホテル宿泊客満足度調査でも高い評価を得ている
「FC方式」は総棟数の約2割
同社がホテルを出店する場合は①同社が土地・建物を取得・保有する場合②土地を賃借して建物を建築・保有するケース③オーナーが建築した建物を同社が20~30年間賃借する「建て貸し方式」④オーナーがフランチャイズチェーン(FC)パートナーとして建物の開発・運営を行い、同社はFC本部としてホテル運営ノウハウを提供する「FC方式」の4つがある。
①②のように同社が土地や建物を取得することもあるものの、主流となるのは③の建て貸し方式で、最近は④のFC方式も増えているという。この2つについて見ていく。
建て貸し方式もFC方式も、建物はオーナー側が取得することになる。建築にかかる費用は同じだ。
その後、建て貸し方式であれば、あらかじめ決められた条件で同社がオーナーに一律の固定賃料を支払って同社が運営することとなる。オーナーから見れば、安定した賃料収入が長期的に得られるのが魅力だ。
もう一方のFC方式では、同社のアドバイスを受けたオーナー側がホテルを運営することになる。オーナーが同社へ支払うのは一定のロイヤルティーのみであることから、FC方式ではより大きな収益を狙うことができる。
「FC方式ではオーナーがリスクを負う代わりに収益性が高くなります。銀行への返済、固定資産税、当社へのロイヤルティー支払いを差し引いた後でも、年間4000万〜5000万円の余剰金を想定しています。直近の事例を見ると、FCパートナーの余剰金が、建て貸しによる家賃収入の2~3倍に達することも珍しくありません」(片岡氏)
ここ数年は投資に対するリターンが大きいFC方式を選ぶオーナーが増えている。理由の1つが建築コストの高騰だ。容積対象床面積が1000坪以上、客室150室以上の規模で開発を想定した場合、10年前は建築費が坪単価80万~85万円、総投資額として10億円程度を見込んでいたところ、現在は坪単価150万円超とほぼ倍増しており、投資額も大きく膨らんでしまっているという。投資金額が大きい分、収益性がシビアに判断されているということだろう。
「FC方式には6年ほど前から本格的に取り組んでおり、現在、FC店舗は31棟あります。このうち参入前に宿泊事業の経験があったFCパートナーは2棟のみで、ほかの29棟は未経験からの参入です。そこから2棟目・3棟目を増やしているFCパートナーもおり、途中で撤退したケースはありません」(片岡氏)
FC方式であっても100%の事業継続率を誇るのは、同社が事業をサポートしているのも大きな要因だ。
例えば、日々の需要変動に応じた宿泊料金の調整(レベニューマネジメント)については、本部と各ホテルの支配人が情報を共有しながら対応しているが、FCパートナーにも情報を開示し、希望があればアドバイスも行う。
また運営は、FCパートナーが独自に運営組織を構築する以外に、同社の教育を受けて、同社と業務委託契約を結んだ人材を支配人や副支配人として紹介する場合もある。後者は、直営店舗で取り入れている仕組みで、FCパートナーにも好評だという。
「FCパートナーにも支配人・副支配人の人材を紹介することで、スーパーホテルの理念や強みを理解したマネジメントを実現し、顧客満足度の維持・向上につなげることができます。それは同時に、FCパートナーの収益確保にも好影響だと実感しています」(片岡氏)
- ▲落ち着いた空間のエントランス
- ▲宿泊客がくつろげるウェルカムラウンジ
オーナーの属性は地主や事業者
現在同社で土地活用を行っているオーナーの属性は、個人から法人まで幅広い。小売事業やパチンコ店、小売店などの事業者が新規事業としてホテル事業に参入することもあれば、いわゆる「地元の名士」が所有地を活用するケースもあるという。
宿泊事業未経験者も多いため、同社では開発時の金融機関や関係者への説明などについても全面的に支援する。「収支計画や事業計画を作成し、FCパートナーと共に説明を行うことも珍しくありません」(片岡氏)
例えば、好条件の土地を保有していたオーナーに対し、地元金融機関が融資を渋ったケースがあった。個人に対する融資としては金額が大きかったことが原因と考えられる。片岡氏は元銀行員であったことから、自ら資料を作成したり銀行へ同行したりして説明を重ね、最終的に融資を引き出すことができた。そのホテルは好業績で、2棟目の計画は即決で融資が決まったという。
- ▲枕は自分の好みのものをセレクト
- ▲天然温泉の導入も各店舗で進行中だ
- ▲「地産地消」メニューにこだわった朝食
地域貢献にもつながる
土地の有効活用では、ホテルにするか賃貸マンションにするか悩むオーナーを多く見てきた片岡氏。「都市部ではオフィスビルとの比較検討もあり得ます。その中で、現在のホテル市況は好調であり、オフィスやマンションと比しても、1坪あたりの収益性はホテルが最も有利だと思われます」と、ホテルでの土地活用を行うメリットを語る。
「『安全・清潔・ぐっすり眠れる』空間を提供し、宿泊客が元気に活動できるようサポートすることが、地域への貢献にもつながると考えています。この理念に共感・賛同してもらえるパートナーと共にホテル運営を行いたいです」(片岡氏)
一方、観光とビジネスの双方の宿泊需要が期待できる地域を「ハイブリッドマーケット」と位置付け、ホテルを企画·開発する「ライフスタイルホテルプロジェクト」を立ち上げた。直近のターゲットは島根県出雲市、三重県伊勢市、広島県尾道市などだという。
(2026年9月号掲載)






