不登校児童のためのフリースクール子供たちの自己肯定感を育む場に
家主業をしていた福岡県から山梨県に一家で移住し、2021年3月に不登校の児童を対象にした体験型フリースクール「みんなのおうち」を開校した中西紀説オーナー(山梨県南アルプス市)。「答えはその子の中にある」を理念に、教育事業に取り組む中西オーナーに、開校の経緯や活動内容、子どもたちの印象的なエピソードなどについて語ってもらった。
第40回 中西紀説オーナー(49)
[プロフィール]
なかにし・のりつぐ
1974年、福岡県朝倉市生まれ。父親から引き継いだ福岡市近郊6棟129戸を自主管理する傍ら、2021年3月に体験型フリースクール「みんなのおうち」を開校。その代表を務める。
次男の不登校をきっかけに 教育事業に乗り出す
中西オーナーがみんなのおうちを開校したのは、発達障がい(自閉スペクトラム症)の診断を受けた次男が、小学2年生の途中から不登校になったのがきっかけだった。高学年になる頃には自分を責め、苦しんでいた。中西オーナー自身も中学生のときに不登校を経験しており、次男のために環境を変えたいと考えた。そこで、一家で山梨県へ移住することを決意した。
19年4月、先に家族が山梨へ移住し、福岡に1人残った中西オーナー。その間にも多くのことを考え、教育や子育ての目的は「いかに自己肯定感を育むか」にあると思い至った。同時に、学校や教育に対する疑問が湧き上がり、「子どもたちの心が育ち、自己肯定感を育める学校をつくりたい!」との思いに突き動かされ、教育事業に自ら乗り出すことにした。
個性や意思を尊重する 子どもたちが主体の学び場
みんなのおうちは「答えはその子の中にある」を理念に、子どもの個性や意思を尊重した、子どもたちが主体となる学びの場だ。活動は火曜日から金曜日の午前10時〜午後5時。現在、小学2年生から中学3年生までの25人が在籍している。
同校は、南アルプス市の教育委員会に申請すれば公立の小中学校の出席扱いになるので、「生まれて初めて、空白ではない通知表をもらった」という子もいる。また、平仮名がやっと書ける学力だった中学1年生の子が、漢字を多用した長文の手紙をスタッフと友達にプレゼントしてくれたこともあったという。
「存在を肯定され、自身で物事を決められるようになれば、子どもたちは自然と生きる力や学ぶ姿勢を身に付けていくものです」(中西オーナー)
文部科学省発表の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば、現在不登校の子どもは約30万人いるという。だが、フリースクールへの理解や支援はその人数に対し、まだ十分ではない。中西オーナーは、子どもたちが学びの場を選べる環境を整えることが、真の不登校対策だと考えている。
「私の夢はみんなのおうちを『共育』の場である『楽校』へと発展させ、全国に分校をつくること。これから共感者を募り、みんなで取り組んでいきたいと思っています」(中西オーナー)
▲毎月恒例の「魂の授業」でのひとコマ。生きていくうえで本当に大切なことを伝えている
(2024年5月号掲載)
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