セーフティネット制度6年目 登録の住宅戸数は87万戸に上る

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 高齢者や障がい者といった、住まいの確保が難しい住宅確保要配慮者(以下、要配慮者)を入居対象とした住宅セーフティネット制度は、2017年の制度開始から6年が過ぎた。対象物件が増加傾向にある。一方、制度の活用実態には課題が残る。国は検討会を立ち上げ改善案を協議している。

 国土交通省は、セーフティネット住宅の数を確保する段階から、利用促進への課題解決に動いている。

 セーフティネット住宅の登録戸数は、2023年9月末点で87万5855戸に上る。22年9月末時点では76万戸超だったことから、1年間で10万戸強増加したことになる。大手管理会社の物件登録が戸数増加をけん引している。

 国交省住宅局安心居住推進課の橋口真依企画専門官は「要配慮者の受け皿は増えてきた。しかし、要配慮者専用住宅の数は5536戸と、22年から大きな増加は見られていない。また、登録住宅の空室率は2~3%であり、新規入居が限定的で家賃帯などが要配慮者のニーズと合致しない実態もある」と課題を話す。

 国が分析した活用促進における課題は、二つの立場の視点から挙げられた。オーナーと入居者となる要配慮者だ。

 オーナー側の課題は、登録住宅に要配慮者を受け入れた後の家賃滞納や孤独死といった経営リスクだ。オーナーの不安を解消できる体制の構築を検討する必要がある。

要配慮者側は、住宅の確保以外にも、介護の必要性など複合的な課題を抱えるケースもあり、福祉との連携強化が重要だとわかってきた。

高齢者の受け入れに取り組むオーナー、不動産会社の動き

 茨城県で16年から高齢者向けアパートを運営する鈴木かずやオーナー(茨城県土浦市)は、介護・福祉事業者と連携して、要介護の高齢者を積極的に受け入れている。現在は13棟100戸を運営しており、うち3棟の18戸は、自立支援型グループホームと契約。そうすることで、高齢者受け入れのリスクを軽減している。

 鈴木オーナーは、介護する側の支援も必要だと考え、茨城県や医療機関、介護施設と連携しながら入居支援を行う一般社団法人LANS(ランズ:茨城県つくば市)も運営する。「家主として要配慮者に住まいを提供できることにやりがいを感じています」(鈴木オーナー)

 要配慮者の中でも75歳以上の単身の高齢者は、30年には800万世帯に迫る見通しだ。そんな高齢者を受け入れているのがニッショー(名古屋市)だ。

 14年から独自の高齢入居者見守りサービス「シニアライフサポート」を提供し、65歳以上の受け入れ実績は23年10月末時点で累計750件を超えた。同サービスで提供している管理物件の一部を、セーフティネット住宅にも登録しており、名古屋市内のみで75棟938戸。しかし、空室であっても担当する人員を充てることができず、募集を行えない状況にあるという。

 営業本部の佐々木靖也副本部長は「セーフティネット住宅の募集サイトは、現状では空室物件の情報の入力・消去業務に手動で対応するしかない。反響数も見込めないため、人員を割けていない」と話す。

 一方、管理物件の空室対策として、セーフティネット住宅の活用に意欲を示すのが、三好不動産(福岡市)だ。10月から専任スタッフを2人配置し、動き出している。

 同社は18年以前、セーフティネット住宅制度の先駆けとなるストック活用型住宅セーフティネット整備推進事業において、92棟177戸の管理物件を登録していた。今後はセーフティネット住宅としての物件情報の移管作業を進めていく。

 資産管理部の徳毛正典統括マネージャーは「要配慮者を含めた入居者ニーズの掘り起こしを行い、ストック住宅の稼働率を高めていく」と話す。同社は4万戸超を管理し、入居率は97%。

 今後、空き家や空室率の上昇と、高齢化社会による要配慮者の増加が見込まれるなか、住宅セーフティネット制度が、2つの問題を解決できる制度として機能することが望まれる。

(2024年2月号掲載)

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