不動産小口化商品のメリットと潜む危険性とは?

賃貸経営不動産小口化

都心の高額なオフィスなどを1棟単位で購入することが難しい場合は、不動産小口化商品が便利です。

不動産小口化商品は、少額からの購入が可能であるため複数物件を購入できリスク分散が可能となるのも魅力です。

不動産小口化商品のメリットや危険性について「家主と地主」編集部が解説します。

不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは、特定の不動産を複数の小口に分けた商品を言います。例えば、25億円のビルを一口500万円で500人(500万円×500人=25億円)に販売します。不動産特定共同事業法により許可を得た事業者だけが販売することができます。なお、同じ案件について、一人で複数口購入することも可能です。

種類

小口化商品は、以下2種類に分けられます。

  • 任意組合型 
  • 匿名組合型
  出資の対象者 一口当たりの投資額 損失への対応 契約方法 償還期間 事業主の倒産リスク
任意組合型 物件の所有権そのもの 100万円以上の商品が多い 無限責任がある 対面が多い 10年以上のことが多い 所有権を組合員が所有しているので大きな影響はない。ただし理事長名で登記されている場合は一定程度のリスクあり
匿名組合型 物件の運用をする事業者の事業への投資 数万円程度 優先劣後、事業出資分が先に損失に充てられる クラウドファンデイング 数か月から 出資金が戻らないことがある。倒産隔離を強いていれば運用資産は保護

任意組合型

任意組合型とは、物件の所有権をほかの購入者と共同で所有します。現物不動産と同じ相続税評価が適用されます。購入者は家賃収入などによる分配金や最終的な売却益を得ることができ、事業者は商品組成、運用などの報酬を受け取る仕組みです。一口当たりに制限はありませんが、100万円から1,000万円などさまざまな設定があります。

匿名組合型

匿名組合型とは、物件の運用を行う事業者に対して投資家が出資し、口数に応じて、分配金を受け取ることができます。運用期間が短く、数万円程度から始めることができるので、少ない自己資金で始めることができます。

契約方法

不動産小口化商品は、任意組合型、匿名組合型ともに対面でも電子取引でも契約可能です。

しかし任意組合型は、投資額が大きいために、対面型で行われることが大半です。一方匿名組合型は少額でも可能なため、クラウドファンディングによる募集と相性が良いです。

現金資産の組み換えには任意組合型

任意組合型

任意組合型が向いているケースは以下の通りです。

  • 将来の相続人が複数いて分けやすい資産が欲しい
  • まとまった現金があるため安定的な投資先を探している 
  • 地方に物件を持っているが東京などの都市圏に物件が欲しい 
  • 複数の物件に投資したい 
  • 複数の取扱事業者から購入したい 
  • 都心の10億円を超える高額なビルのオーナーになりたい 
  • マンション、オフィス、商業施設など種類の違う物件に資産を分散させたい 
  • 管理の手間をかけられない

相続対策

現物不動産は分けることができず、相続で争いが起こることがあります。しかし不動産小口化は一口ずつ分配することが可能で、公平な相続を実現できます。

税務上

税務上の取り扱いが現物不動産と同じ扱いになります。購入することで現金を減らして不動産資産を増やす効果があります。

リスク分散

値崩れしにくい都市部の物件の小口化商品が多いので、地方に物件を持つ人は複数エリアに物件を所有できます。住居と商業施設の両方を所有して種類による分散も可能です。

管理面

管理の手間が掛かりません。

任意組合型小口 契約の流れ

任意組合型小口の契約の流れは以下の通りです。

  1. 小口化商品を知る:税理士や銀行からの紹介、自ら事業者のウェブサイトで情報収集する。
  2. 不動産特定共同事業契約の締結:任意組合員になるという契約を結ぶ。
  3. 出資金の払い込み:任意組合名義の銀行に出資金を払い込む。
  4. 任意組合が結成、組合が対象不動産取得:出資予定金額に達すると、民法上の任意組合が組成、任意組合は出資金で対象不動産を取得。
  5. 任意組合が物件を運用:1例として、任意組合がマスターリース会社と賃貸借契約を結んで賃料収入を得る。
  6. 任意組合は任意組合員に利益を分配:1年に1回以上分配金が入金される。
  7. 売却の決定、売却:約款に従い、理事長の判断、組合の決議などの手続きを経て売却時期を決定。期間延長や早期売却もあり得る。
  8. 組合解散:売却益が返還される。再び小口化商品を所有したい場合はほかの組合への加入を検討。

売却益を分配して解散

分配金を支払う回数は法律では定められていませんが、任意組合型商品を扱うすべての事業者が年1回以上の分配金を支払っています。また途中解約が可能で、こういった場合は組合員資格を売却することで対処します。

株式や通常の不動産売買と異なり、売却するための市場があるわけではありませんが、すでにその商品を持っている人、発売時に購入できなかった人などに打診すれば売却は成立します。株式のようにすぐには現金化できませんが、いざというときには、現物不動産を売却するのと同じように現金化可能。一般的には、数口程度であれば数か月以内に売却先を見つけることが可能です。

償還期間を迎えたものは売却して組合員に利益が分配される仕組みです。売却益をできる限り多くするための工夫がなされているかどうか、売却時期や決定方法はあらかじめ定められた約款を確認しておきましょう。契約期間に数年程度の幅を持たせ事業者が売却時期を判断したり、組合員で協議して売却を決めたりすることでより多く売却益を得られる時期に売却する仕組みもあります。売却益を分配して組合は解散となります。

不動産小口化商品の危険性

不動産小口化商品には危険性もあります。

任意組合型

運用や売却で、損失が出た場合、損失を事業者が補填する仕組みである優先劣後がないため、無限責任があります。そのため以下のような危険性があります。

  • 配当ゼロもあり得る
  • 売却時の値崩れ
  • 物件から発生した事故などによる損失を自分たちで引き受ける必要がある

匿名組合型

事業者が破綻した場合は以下の危険性があります。

  • 不動産を運用する事業者の事業に対して出資する関係から、事業主破産後に出資金が戻ってこないことがある

不動産小口化とほかの投資の比較

不動産投資以外の投資と比較して以下のようになります。

種類 内容
FX 世界の中央銀行が発行している通貨への投資。最大25倍までのレバレッジがかけられ超ハイリスク・超ハイリターン
証券取り指揮所に上場している企業への投資。信用取引以外はレバレッジは掛けられない。ハイリスクハイリターン
J-REIT 不動産投資法人が発行する投資証券を購入。投資法人が得た運用・売買益の分配金を受け取る。流動性が高い
不動産小口化商品(任意組合型) 特定の不動産をいくつかの小口に分け、不動産の共同所有者を募る。所有権があるので現物不動産を購入するのに近い。REITより流動性が低い。レバレッジは掛けられない
不動産小口化商品(匿名組合型) 特定の不動産をいくつかの小口に分け、運用事業者への出資を募る。口数に応じて利益が配分される。レバレッジは掛けられない
国債 国が発行する元本割れしない債権。リスクが少ない分得られる配当金も少ない
定期預金 銀行預金のうち、あらかじめ貯入期間が定められているもの。満期まで引き出すことが難しいが利率は普通預金よりは高い。現状、国債より金利は低い。

上に行くほどハイリスクハイリターンで、下に行くほどローリスクローリターンになります。不動産小口化商品はミドルリスクミドルリターンの商品といえるでしょう。

不動産小口化と混同しやすいものに、REIT(リート・日本の証券取引所に上場しているものをJ-RIET)があります。不動産投資法人が発行する投資証券を株と同じように売買できるので流動性が高いのが特徴です。

不動産小口化商品は事業主が特定の物件を小口化商品として組成して購入者・出資者を募ります。不動産投資の観点や経験を持っている点で家主と小口化商品は相性がいいと言えます。

まとめ

  • 不動産小口化の種類(任意組合型、匿名組合型)
  • 任意組合型の商品には相続対策、税務上、リスク分散、管理面などの点でメリット
  • 不動産小口化のメリットや危険性
  • 不動産小口化とほかの投資の比較

についてまとめました。

任意組合型小口を購入している層は、60代以上が8割を占めており50代より若い人は少ないです。それまでに財を成した人が、資産防衛、組み換え、承継の目的で購入していると考えられます。また個人での購入以外にも資産管理会社による購入もあり、法人の事業継承や分散投資の目的があることがうかがえます。

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