【特集2】資産運用の一つとして注目 不動産小口化の最新動向②

賃貸経営不動産小口化#不動産投資#資産形成

対象不動産、エリアなど特色ある各社商品

任意組合型商品の累計組成額はシェア約46%

青山財産ネットワークス(東京都港区)
不動産事業本部 AD業務室
伊藤理紗グループ長

 青山財産ネットワークス(東京都港区)では、不動産小口化商品の販売を2002年から行い、24年6月末時点で76組合を組成している。累計組成額は1568億円ほどで、任意組合型商品としては業界トップで市場シェア約46%(※不特法に基づく任意組合型不動産小口化商品の累計組成額シェア(21年12月末時点))。

 同社の不動産小口化商品「ADVANTAGE CLUB(アドバンテージクラブ)」の特徴は、東京都心6区と呼ばれる千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区の不動産を対象に厳選して取得していることだ。

 同社では、不動産仕入れ担当部署が、規模、立地、土地積算評価、稼働率賃料水準、建物順法性の五つの選定基準により、年間3000件ほどの物件情報を集めて、その中から300件について収益性などを調査。さらに出口価格で負けない物件であるか、中長期にわたって安定した配当金を提供できる物件であるかを重視して30件ほどに絞り込む。絞り込んだ物件はさらに営業担当者や社長も交えて、顧客視点に立てているかどうかを精査。こうしたプロセスを経て買い付けを行い、近年は年間6~7件を組成する。 

 その結果、23年12月末時点で同社が組成した不動産の年間稼働率は96・8%。新規追加の物件があってもこの水準を維持しているのだ。
 これまでの償還(物件売却による組合解散)実績を見ると、その収益性の高さがうかがえる。同社では運用期間を15年で設定しているが、だいたい10年程度で償還を迎えるという。これまで31物件を売却し、その売却代金を組合員に分配してきたが、売却価格と期中分配金を合わせたトータルリターンは、過去に一度も1000万円を下回っていないという。

 23年からは商品組成後、申込数の上限に達するまでのスピードが速くなっており、だいたい募集開始から1週間程度で到達する。「当社の小口化商品は1口1000万円からとしていますが、東京・飯田橋の物件では236口を募集したところ、わずか2営業日で申し込み上限に達しました」と不動産事業本部AD業務室の伊藤理紗グループ長は話す。24年1月末時点の組合員数の構成は個人が2470人、資産管理法人をはじめとする法人が309社。リピートも多く、2組合以上に参加している組合員は41%にも上る。

「お客さまとの長い付き合いを大事にしています。そのため、買う前にお客さまと面談して、財務状況を確認したうえで、購入するかどうかの判断をしていただきます」(伊藤グループ長)
 顧客の購入目的のほとんどが余裕資金の運用だという。利回りは手取りで3%前後。

「今後も継続してタイミングを見計らいながら、組成した商品に係る不動産の売却を進めることで、出口戦略も含めて自信を持って販売できるものを提供していきたいです」(伊藤グループ長)

DATA

[商品名]ADVANTAGE CLUB(アドバンテージクラブ)
[対象物件のタイプ]オフィスビル
[対象物件の分布]東京都千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区
[運用期間]15年
[価格]1口1000万円から
※不特法に基づく任意組合型不動産小口化商品の累計組成額シェア(21年12月末時点)

 

都心5区の区分所有オフィスを小口化

ボルテックス(東京都千代田区)
リテール事業統括部 リテール営業部
小國雄太部長(44)

 ボルテックスは、同社の区分所有オフィスを小口化した「Vシェア」を16年から販売している。主に基準階面積で30坪以上、10階建てといった中規模以上のビルのフロアを商品化。ほとんどが東京23区のうち都心5区にある。1口100万円で5口から販売しており、運用期間は原則10年間で、これまで販売したものの分配予定利回りは1・5~2%。

 購入者は60~70代が中心で、多くが地方に住む。地方にいながら、都心の区分所有オフィスを少額から持つことができるとあって、好評だという。今春までに31案件を組成し、累計で約300億円を販売した。
 小國部長は「当社は物件の管理面が強みです。自社で管理していますが、管理部門で約150人の人員を抱えています。その中でプロパティマネジメント業務やリーシング業務を専門チームに分担させており、それぞれ高い専門性を持っています」と語る。それらが奏功してか、Ⅴシェアの物件全体の空室率も約1%と低い。 

 また、物件の売却について、小國部長は「当社は区分所有オフィスの販売を25年間続け、法人、個人、実需を含めて1100社以上の優良顧客を抱えています。それら顧客を含めて市場に提案できるのも強みです」と語る。

 直近数年は年間60億円ほどの販売額だったが、23年には約100億円まで拡大した。要因として、①不動産小口化商品の認知度が上がっていること②それに合わせて社内で小口化商品の営業人員を23年下期に1・5倍に拡充したことの2点を挙げている。小國部長は、「区分所有オフィスの小口化は今後、数百万円から数千万円でできる不動産投資の選択肢の一つとして存在感を増すのではないでしょうか」と話す。

 同社は、立地も含めて対象となる物件のグレードが高い「Vシェアpremium(プレミアム)」も21年秋に商品化。不特法ではなく金融商品取引法の規制を受ける信託受益権型の小口化商品で、分配金は不動産所得として現物不動産と同等に相続税評価額が適用される。不動産取得税は課税されない。1号物件の「日本橋髙島屋三井ビルディング10階1004号室」は、約1カ月で2540口・25億4000万円分の申し込みが完了した。24年4月からは2号物件「GINZA SIX(ギンザシックス)10階1001号室」を販売している。これを受け、同社は24年の小口化商品の販売額で250億円以上を目指す。

DATA

[商品名]Vシェア
[対象物件のタイプ]主に区分所有オフィス
[対象物件の分布]主に都心5区
[運用期間]原則10年
[価格]1口100万円 5口から

 

城南3区のRC造賃貸住宅に特化

フェイスネットワーク(東京都渋谷区)
不動産部 グランファンディング事業
廣瀬浩二課長(52)

 一棟賃貸マンションの開発・販売を手がけるフェイスネットワーク(東京都渋谷区)は、不動産小口化商品「GrandFunding(グランファンディング)」を販売している。4月末までに組成したファンドは五つで、調達金額は約30億円。対象物件は主にフェイスネットワークが開発した賃貸マンションだ。

 同商品の特長は、対象物件の資産価値や賃貸需要の安定性にある。東京都世田谷区や目黒区は居住エリアとして人気が高く、渋谷区では街の再開発が続く。耐用年数が長いRC造の新築であるため、10〜15年の運用期間終了時の売却も有利に進めやすい。
 同社は01年の創業以来、世田谷区、目黒区、渋谷区の城南3区に特化して賃貸マンションの開発を行っており、竣工物件は累計270棟以上だ。

 土地の仕入れから物件の設計・施工、賃貸募集、物件管理、一棟販売までのすべてを自社で行う体制が特徴で、自らを「ものづくりの会社」と表現。物件の品質に強いこだわりを持つ。1棟ごとに土地に合った設計を行うため、同社の社員のうち54%は設計・施工に関わる部門に所属している。自社管理物件約2540戸の24年3月末時点の入居率は98・6%だ。

 資産運用を目的とした50~60代と、相続対策を目的とした70~80代による購入が多く、比率はおよそ半々だという。不動産部グランファンディング事業の廣瀬浩二課長は「新型コロナウイルス流行のような非常事態時でも、住宅には安定した需要があります。不動産小口化商品の認知度が上がるにつれ、相続対策はもちろん、安定した資産運用を目的とした購入者も増えてきました」と話す。分配金利回りは約3%。預貯金に比べると高い利回りを得られる「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品として評価されているという。

 「当社の一棟賃貸マンションは安定的な資産として評価してもらっていますが、平均価格は約10億円と購入できる層は限られてしまいます。少額から投資できるGrandFundingを通して、不動産投資の裾野を広げたいと考えています」(廣瀬課長)

DATA

[商品名]GrandFunding(グランファンディング)
[対象物件のタイプ]主に賃貸マンション
[対象物件の分布]城南3区(世田谷区、目黒区、渋谷区)
[運用期間]10~15年
[価格]1口100万円 5口から

 

PICK UP

トランクルームの小口化商品を販売

エリアリンク(東京都千代田区)
ストレージ本部 資産コンサルティング部
西田隆介部長(44)

 「ハローストレージ」のブランド名で全国に屋外型・屋内型トランクルームを展開するエリアリンクは、23年6月にトランクルームを小口化した「ハローAct(アクト)」を商品化した。24年3月までに1~3号案件をそれぞれ神奈川県横須賀市、埼玉県所沢市、横浜市保土ケ谷区で手がけ、合計4億2800万円を販売した。

 物件は屋外の一棟型トランクルームで、いずれもサブリース付き。土地が40~60坪で、35~40室の規模が主流。「トランクルームなので、駅近の必要もなく、どの物件も郊外に立地しており、土地代は安いです」と西田部長は語る。運用期間は10年で、分配予定利回りはいずれも約4.5%。価格は1口100万円で、販売は10口単位から。

 一棟型のトランクルームは価格帯が1億円を超える中、ハローActは少額投資が可能とあってか、1号案件は募集総額1億1600万円(116口)が完売したが、応募は募集額の3倍集まっていた。2号案件、3号案件も含めて、1人あたりの購入口数が多く、数人の購入で完売に至ったという。

 西田部長は「今後、年間で3~4案件を提供していきたいです。現在の対象物件は関東のトランクルームが中心ですが、将来的には全国展開を視野に入れています」と語る。

(2024年8月号掲載)
次の記事↓
【特集2】資産運用の一つとして注目 不動産小口化の最新動向③

一覧に戻る