【特集2】資産運用の一つとして注目 不動産小口化の最新動向①

賃貸経営不動産小口化#不動産投資#資産形成

不特法小口化商品の種類と現状

 現物不動産と比べて少額から投資が可能な不動産小口化商品。不動産特定共同事業法(不特法)に基づく多様な商品が事業者から提供されている。このうち、現物不動産と同じ相続税評価が適用される任意組合型の商品について、各社の展開とともに紹介する。

少額から投資可能で資産運用の幅広がる

累計組成額が伸びている任意組合型商品

 近年、不動産特定共同事業法に基づく不動産小口化商品が関心を集めている。
 不動産小口化商品とは、例えば1億円のビルを1口100万円で100口といった具合に、特定の不動産を複数の口数に分けて不特定多数の人々に販売(出資者を募集)するもの。購入者は購入した口数に応じて、賃料収入や売却益を受け取る。販売は不特法によって金融庁長官および国土交通大臣または都道府県知事の許可を得た事業者が行う。現物不動産への投資と比べると少額からの投資が可能であるため注目されている。
 小口化商品は主に2種類あり、そのうちの一つ、任意組合型商品は、下のグラフにあるように、この10年で累計組成金額が年々伸びている。

価格や運用期間に違いがある二つのタイプ

 前述したように小口化商品は主に2種類ある。匿名組合型と任意組合型だ。

 匿名組合型は、対象物件の運用を行う事業者の事業に対して、購入者が金銭を出資し、口数に応じて分配金を受け取る。物件自体は事業者が所有する。1口あたり1万~10万円程度で購入することができ、物件の運用期間が短く、数カ月程度のものもある。クラウドファンディングを活用した商品が多い。

 一方の任意組合型は、購入者は対象物件の所有権を事業者やほかの購入者と共同で持つ(事業者は組合の理事長となり、物件の運用を委託される)。家賃収入などによる分配金や、物件売却後の売却益を口数(共有持ち分)に応じて受け取る。1口100万円で複数口から販売される商品が多く、運用期間も5年以上や10年以上といったように長い。
 また、任意組合型は税務上の取り扱いで現物不動産と同じ相続税評価が適用されることが大きな特徴だ。余剰資金の資産運用や将来の遺産分割を考える地主や家主にとっては、任意組合型の小口化商品が向いているだろう。

 実際の商品は「○○(場所)の〇〇(物件)」といった具合に、個別の商品が一つの案件として事業者から売り出され、購入者に販売していく(出資を募る)。

エリアやリスクを分散管理の手間なし

 小口化商品のメリットを挙げると、現物不動産よりも少額から投資できるため、資産運用の幅を広げることができる。地方に住みながら東京都心部の物件にも投資が可能なほか、共同住宅以外にもホテルやオフィス、商業施設への投資も可能だ。このように、エリアや投資対象を分散することができるので、現物不動産への限られた投資に比べて、リスク分散になる。また、不動産投資信託(J─REIT)と異なり、投資対象を自ら選べることも特徴だ。それに加えて、対象不動産を自分自身で管理するわけではないので、管理の手間もかからない。

 任意組合型の商品であれば、前述のように現物不動産と同じ相続税評価が適用される。また、将来の相続の際には、切り取って分けることができない現物不動産とは対照的に、口数ごとに分配できるため、スムーズな相続にもつながる。

元本や分配金が保証されないリスクあり

 一方で、デメリットもある。小口化商品は元本や分配金が保証されていない。また、購入時に融資が利用できないので、自己資金が必要になる。任意組合型だと無限責任があるため、物件の価値が下がれば配当がなくなる可能性もある。売却時に損失が発生すれば、自分たちで引き受けなければならない。

投資戦略を明確にし対象物件をよく研究すべし

 これらを踏まえたうえで、小口化商品を選ぶ際のポイントを事業者に聞いた。まず挙がったのが、出口(物件売却)について。小口化商品は、いずれ運用期間を終えて対象物件は売却される。できれば売れやすいものを選びたいところだ。

 このほか、不動産開発事業を行うシマダアセットパートナーズ(東京都渋谷区)JUST FIT事業部の中野清之部長は、「事業者やテナントリスク、改修費用の見込みなどを含めて、対象物件をよく研究する必要があります」と語る。
 トランクルーム開発・運営を手がけるエリアリンク(東京都千代田区)のストレージ本部資産コンサルティング部の西田隆介部長は「キャピタルゲインを狙うか、運用利回りを狙うか、投資戦略を明確にすべきです」と指摘。

 「区分所有オフィス」という名でオフィスの区分販売を行うボルテックス(同)のリテール事業統括部リテール営業部の小國雄太部長は、「小口化商品は物件の管理を委託するものなので、管理体制の整った会社を選択することを推奨します」と話す。

 また、リノベーション事業を手がけるインテリックス(東京都渋谷区)のアセットソリューション事業部ソリューション営業部の東川亨部長は、「事業者の得意分野をチェックするといいです。不動産系や建築系が発祥なのか、もしくは金融系が発祥なのかで、物件の資産価値の維持や管理の仕方に若干の違いが出てきます」と語った。
 現物不動産に投資する地主や家主も小口化商品に注目してみてはどうか。39ページから各社が展開する任意組合型の小口化商品を紹介する。

 
memo 不動産クラウドファンディングとは

インターネットを通じて不特定多数の人たちが少額の資金を出し合い、不動産に投資する。2017年から不特法において電子取引業務として実施が可能になった。中には1万円から投資できるものもある。契約までネットで完結する。匿名組合型商品で用いられることが多い。

(2024年8月号掲載)
次の記事↓
【特集2】資産運用の一つとして注目 不動産小口化の最新動向②

この記事の続きを閲覧するには
会員登録が必要です

無料会員登録をする

ログインはこちらから

一覧に戻る

購読料金プランについて