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賃貸物件をアトリエ付き住居へリノベ
耐震性やエコの観点から賞を獲得
tede(テデ)
京都市の「哲学の道」から徒歩4分の200㎡余りの土地。そこに建つ築64年の賃貸物件が、アトリエ付きのアパート「tede(テデ)」に生まれ変わった。1階はシェアキッチンとアトリエ5戸、2階は4戸の賃貸住宅から成る。
若竹寮(京都市)
渡邉宏樹代表取締役(53)
2020年までは留学生向けの寮として活用されていたが、当時入居者は8戸中1戸のみ。空室や築年数による経年劣化が気になり、物件を管理する地主であり、若竹寮(京都市)の代表取締役を務める渡邉宏樹氏はリノベーションに踏み切った。
tedeをアトリエ付き賃貸物件にリノベしたのは、別物件「在り」の改修成功が一因だ。tedeと同地区にある築66年のアパートを、アトリエ「在り」としてリノベしたところ、満室にすることができた。
▲柱は根継ぎや塗装をして活用し、れんが敷きの外構に改修
今回のリノベは、渡邉氏が阪神・淡路大震災の被害を目の当たりにした経験から、改装時の耐震補強は必須と考えた。「賃貸物件として貸し出す際は、耐震性能を把握する必要があると考えています。そのため、改修するときは、現行の耐震基準に適合することにこだわりました」と渡邉氏は語る。リノベ前は、耐震性の指標である上部構造評点は「倒壊する可能性が高い」といわれる0.02だったが、リノベ後に「耐震性を確保している」とされる1.29まで向上した。
耐震性以外では、既存の建材をなるべく活用し、改修前の雰囲気を残すことにこだわっている。三角形の船底天井は、そのままの形を生かして町家の面影を残した。共用廊下にある柱は、根継ぎや塗装をして再利用。一方でインターネットやSNSを参考にしながら、現代デザインを新しく取り入れた。モルタルやクロスで仕上げていた2階住居部分の壁を、木毛セメント板に替えた。さらに、窓枠の幅を広げ、飾り棚やサイドテーブルとして使えるようにした。
▲After:町家の雰囲気を残しながら、近代的に改修した
▲Before:リノベ前は最新の耐震基準を満たしていなかった
こうして1年2カ月の期間と、約5000万円の費用をかけてリノベしたところ、23年度に「第40回住まいのリフォームコンクール」国土交通大臣賞と、「第7回日本エコハウス大賞」グランプリを受賞。改修後、2階の住居には近隣の京都芸術大学の学生、アトリエには画家や文筆家などが新しく入居した。
今後、渡邉氏は入居者の声を生かしながら、今以上に制作活動に集中できる環境を整えたいと語る。「アトリエの借主の意見を聞くと、採光、音響にこだわりがあることが分かりました。借主は、こだわりを明確に言語化できるわけではありません。借主のニーズをくみ取りながら、改善できるように試行錯誤していきます」(渡邉氏)
▲白を基調とした1階のアトリエは、自然光が柔らかく入る
▲1階にはアトリエ利用者用の共用部がある
▲2階住居は窓枠の幅を広げ、本や植物を飾れるようにリノベ
(2024年9月号掲載)
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