元質屋の古民家をシェアハウスに再生 ―Simple Share 180° 岐阜

賃貸経営リフォーム・リノベーション

<<Regeneration ~建物再生物語~>>

元質屋の古民家をシェアハウスに再生
残された物品が建物の魅力を引き出す

Simple Share 180° 岐阜

 JR東海道本線岐阜駅から徒歩12分の住宅街に、古民家を改修したシェアハウスがある。名古屋市を中心としたシェアハウス運営会社シェア180が手がける「Simple Share 180° 岐阜」だ。

シェア180(名古屋市)
伊藤正樹社長

 

 昔ながらのガラス戸の入り口を開けると、外観からは想像できないほどのモダンな内装に驚く。すぐ目につく壁のそろばんは、建物の名前の一部である「180」を指している。建物名と共に、この建物が1966年の竣工後、長らく質屋が営まれていた場所である歴史を示すアイコン的役割を果たす。

After:入居者が集まるリビングルーム

Before:残置物もそのままで引き渡された


 質屋の閉業後、建物は所有者の住居となり、最後は相続人の所有の下、空き家になっていた。

 2019年ごろ、物件情報を見つけたシェア180の伊藤正樹社長は、買い取ってシェアハウスとして再生することを決定。岐阜での展開を考えていた中で、魅力的な物件だと感じたという。

 この建物は、同社が運営するシェアハウスの中で最も築年数が古い。また手がけた中では木造の建物も珍しかった。そこで伊藤社長は、古民家特有の古さを欠点ではなく個性と捉える「和モダン」を再生のコンセプトに据えたという。

 改装において、あえて残すと判断した箇所がいくつかあった。玄関のそろばんのほか、金庫の扉、柄の入ったすりガラスなど、質屋時代の名残をインテリアとして活用。大量に残っていた湯飲みなどの残置物も、使えるものは備品として取り入れた。一方で、住み心地を左右する部分はしっかりと改修した。

玄関を入ってすぐのそろばんは質屋時代に使われていたものだ


 内装面では、古民家の景観と調和するよう、赤や青のアクセントカラーを入れつつ、トーンを落として落ち着いた印象にまとめた。雨漏りで傷んでいたリビングの天井板は撤去し、梁が見えるようにリノベーション。修繕の合理性が、結果として空間の魅力にもつながった。

 外観は大きく変えていない。SNSなどからの発信が多いシェアハウスだからこそ場所が特定されやすく、入居者の生活を守る必要がある。また住宅街で目立ち過ぎないよう配慮している。オープン前は、地域ではシェアハウスが珍しかったこともあり、町内会から説明を求められた。完成後には近隣住民向けに見学の機会を設け、地域に受け入れられるよう努めた。

 現在、平均入居率は85%ほどで推移している。賃料は1万8800〜2万8800円。それに加えて、共益費とライフライン料として別途1万6160円がかかる。入居者の半数ほどが外国人入居者で、近隣大学の学生らも暮らす。古民家の“履歴”を消さずに磨き上げたこの家は、住まいでありながら、地域の記憶をそっと引き継ぐ器にもなっている。

照明以外はほぼ手を入れずに作った作業スペースも、物件の特徴の一つになっている

(2026年5月号掲載)

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