防音リフォームの実績約4000件
ショールームで防音性能を体感
周囲への音を気にせず、24時間楽器の演奏や動画・ゲームの配信ができる防音マンションのニーズが増加している。物件オーナーにとっても、近隣物件と差別化を図ることができるため空室対策につながるというメリットがある。今回は防音工事のプロである環境スペース(東京都渋谷区)の嶺島伸治社長に取り組みについて聞いた。
環境スペース(東京都渋谷区) 嶺島伸治社長
防音・音響に特化した設計・施工を行う環境スペースは、約4000件の防音リフォームの実績がある設計事務所だ。年間250件前後を受注し、コンサートホールやスタジオなどの施設から個人宅の防音室まで工事を行う。
音によるストレスの低減、快適な音環境の実現を目指す同社の強みは、主に三つある。外部と室内間の遮音量を測定する「遮音性能測定」、室内から発生する隣室・近隣への「騒音測定」を行い、測定結果に基づいて防音室を設計する点。さらに「音響設計」だ。JR山手線恵比寿駅近くにショールームを設置しており、実際にピアノを弾いたり、楽器を持ち込んで、その防音と音響の性能の高さを体感することができる。スタジオとして貸し出しも行っている。
同社には測定専門の担当者が在籍。音に関する実験器具・測定機器を備え、JIS規格に適合した調査・測定を行うだけではなく、欧米並みの高いレベルの音環境を目指すなど、「防音・音響」に特化した専門技術を強みとしてきた。
ところがあるとき、同社の手掛けた工事に対して、納得できなかった施主から「説明義務違反」というクレームを受けた。 この時、嶺島社長は「専門性の高い内容を顧客にわかりやすく伝える力は必要だ」と痛感したという。その後、それまでの防音・音響に関する高い専門性に加え、スタッフのコミュニケーションスキル・提案力の向上、体験型ショールームにより、売り上げを伸ばした。実際、同社を選んだ顧客の多くが「他社よりも説明がわかりやすかった」「ショールームと同じ環境を再現してほしい」との声が寄せられる。
設立して11年防音工事を行ってきた同社は、今後賃貸住宅市場も視野に入れる予定だ。これまで賃貸住宅への防音工事自体は100件以上の実績があるものの、積極的に提案してこなかった。これからは賃貸マンションの空室対策として提案する。
しかし、防音マンションといっても、その用途・音源によって必要とされる防音仕様は異なる。自分の必要とする防音対策がどのようなものかを知ってもらうため、4月に防音賃貸マンションへの入居を希望する人に向けの情報提供サービスを開始した。最新の防音賃貸マンションの物件情報と、同社の防音・音響工事の実例を集めた「最新防音・音響実例カタログ」をダウンロード提供している。
「今後は賃貸マンションオーナーに向けた防音や音響に関する情報提供、工事を行っていきたいです」と嶺島社長は話す。
(2024年10月号掲載)
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