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入居断られ続けたタトゥー店へ 自らの体験思い出しテナント賃貸
5年前の冬、商店街にテナント物件を所有する和田佐也香オーナー(フィリピン・セブ島)のもとへ不動産仲介事業者から電話が入った。「このような業種でも大丈夫ですか? 親御さんが連帯保証人なのですが…」
入居を希望していたのは20代のタトゥー(入れ墨)店を営む青年だった。業種だけで断られてしまい、テナント探しに苦労しているという。「タトゥーというと、ファッションとしてワンポイントで入れるようなものをイメージしていたのですが、その人がやっていたのは全身に入れ墨をする本格的なものでした。彫りが美しく芸術的で、こんなプロになら貸してもいいと思い、すぐに承諾しました」(和田オーナー)
和田佐也香オーナー
フィリピン・セブ島
[プロフィール]わだ・さやか
岐阜市生まれ。クレジットカード会社、テレビ放送局勤務を経て、2014年に料理教室を開業。教室運営以外の安定収入を得たいと考え、30歳頃から不動産投資に興味を持つ。現在、戸建て3戸と駐車場、夫名義の区分マンション1戸を所有。24年よりフィリピン・セブ島在住。
20代後半に念願の料理教室を開いた和田オーナーだったが、実現するまでは苦労の連続だった。テナント探しでは、火を使うことや、不特定多数の人が出入りすることを理由に断られた。また、賃料が思った以上に高くて借りられず、つらい思いをした経験もあった。その時に助けてくれた人たちのことが忘れられず、自身が不動産オーナーとなった今、若者を助ける家主でありたいと考えたのだ。
幸いなことに、タトゥー店を営む青年は人柄が良く誠実で、商店街の人々に愛された。口うるさい顔役的な年配男性からも「和田さん、人を見る目があるわ」と褒められるほどだった。
彼はテナント料もきちんと払ってくれた。新型コロナウイルス下で1度だけ遅延したことがあったが、その時は「外出自粛でお客さんが来店できなくて。ゴールデンウィーク明けなら確実にお支払いできるのですが、待っていただけますか?」ときちんと電話をくれて、その言葉どおりになった。タトゥーはサイズが大きなものは100万円以上かかるので、客がつけば収入は確保できる商売なのだ。
青年は事業に成功。3年後には和田オーナーのテナントが手狭となり、近くの商店街にある2階建ての物件に引っ越した。現在はそこで営業している。
「日本在住時には新しい店の前を通ると、店内でくつろいでいるお客さんの姿をよく見かけました。事業成功のお手伝いができて本当によかったと思っています」(和田オーナー)
(2024年10月号掲載)
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