モナコ公国の不動産事情
不動産価格は仏の3倍
モナコ公国(以下、モナコ)は、イタリアから程近く、地中海に面し、三方をフランスに囲まれています。このミニ国家は、いろいろな意味でユニークです。
●世界で2番目に面積が小さい
●世界一、人口密度が高い
●世界一、平均年齢が高い
●世界一、1人あたりGDP(国内総生産)が高い
ヨーロッパ中のセレブが集まる「F1モナコグランプリ」と「モンテカルロのカジノ」で知られるモナコは、山が海に迫る急峻(きゅうしゅん)な地形に街がつくられています。日本で例えると「超豪華な熱海」みたいなものです。

モナコの公用語はフランス語。通貨はユーロで、国防は実質上フランスが担っています。その一方で、イタリアからもわずか15㎞の距離にあり、イタリア系の住民も多い土地柄です。
モナコの住民になると、「所得税免税」と「低い事業税」に代表される、タックスヘイブン(租税回避地)の恩恵を受けることができます。その関係で、モナコ国民の3割がミリオネア(金融資産100万ドル以上の富裕層)となっており、当然ながら不動産価格も高くなっています。
モナコの面積はとても小さく、フランスとの国境線が住宅地内の普通の道に引かれているところもあります。しかし、国がモナコであるか、フランスであるかで、不動産価格に約3倍の違いがあるそうです。東京都と埼玉県どころではない格差です。それにも、モナコの税メリットを享受したい富裕層のマネーパワーが大きく影響しています。

▲モナコ沿岸に立つ物件から地中海を望む
80㎡が20億円でも売れる
モナコの不動産価格は世界一の水準です。やや古いデータですが2020年には1㎡あたり4万9000ユーロ(約810万円、坪単価約2680万円)。新築価格の中間値が1370万ユーロ(約22億円)と、桁違いです。モナコで一番高価格なのはラルボット地区で、1㎡あたり6万5000ユーロ(坪単価約3560万円)となっており、世界的に知名度が高いモンテカルロ地区(5万1000ユーロ)をしのぎます。
F1モナコグランプリのゴール地点が見える最前列のマンションは、専有面積80㎡の部屋が約20億円、坪単価約8000万円という値段が付いても売れます。世界的に富裕層人口が増え、彼らの資産が増えている以上、モナコの不動産価格が下がることはないといわれています。
PROFILE
アジア太平洋大家の会 代表 鈴木 学

海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2025年2月号掲載)
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