管理会社による付加価値で家賃を上げる ―第一住建

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管理会社による付加価値で家賃を上げる
入居者にカレーや美容サービスを提供

 約1万7000戸の賃貸住宅を管理する第一住建グループは、入居者の生活を支援する独自のサービスを提供することで、管理物件の家賃を上げている。「INOVE+(イノベプラス)」と呼ばれるこのサービスは2022年5月に近畿大学周辺エリアに拠点をオープンし提供を開始。25年には大阪・梅田にもオープンした。INOVE+を発案した同社の松尾武社長は「管理会社として管理物件の付加価値アップを図ることが重要だ」と話す。

第一住建(大阪市)
松尾武社長

 

美容・カレー付き賃貸住宅

 近畿大学の最寄り駅である近畿日本鉄道大阪線長瀬駅。近畿大学のキャンパスに続く駅前の商店街はいつも学生でにぎわっている。その商店街の一角に4店が軒を連ねる建物がある。第一住建が運営するINOVE+のサービス拠点だ。カレー店、美容室、ネイルサロンがあり、同社の管理物件の入居者を主要顧客とした施設となっている。驚くのは、入居者であればカレー店は月5回、ほかの3店は月1回、入居者向けサービスとして利用できることだ。

 「1日5件予約が入っている日があります」と話すのは、ヘアサロンの店長。カレー店も通常1食900円のカレーが家賃に含まれているため、毎週来店する学生も少なくないという。

 「好きなブランドの服を買うように、選んでもらえる管理会社になりたいと思っていました。そこで、入居者の生活の質を向上させるサービスを家賃に含めることで、入居者に価値を感じてもらい、選ばれる仕組みを考えたのです」と説明する同社の松尾社長の狙いは的中。同社がINOVE+を始めてから、近畿大学周辺の管理物件の家賃は相場賃料よりも高くても入居が決まっている。約900戸の入居率も98%(26年3月末時点)だ。

 卒業や転職のため、引っ越しを余儀なくされた入居者がINOVE+を継続利用したいという理由で、同社の管理物件に住み替えるというケースも出てきているという。

築年数に影響受けない価値

 松尾社長が同サービスを考えたのは、同社が約70棟の賃貸住宅やビルを所有するオーナーであることが大きい。不動産オーナーは築年数がたつとリフォームなど追加投資をしなければ、家賃が下がってしまうという悩みを抱えている。管理会社としてこの問題をどのようにしたら解決できるのかを考え続けていた。そこで着目したのが、生活費そのものだった。入居者が家賃とは別に毎月かかる食と美容に関するサービスの提供に注目したのだ。

 当初、このアイデアを社内で話したところ、懐疑的な意見や違和感を抱く声があったという。

 「サービス提供だけで本当に入居者の満足度が高まり、家賃にまで連動できるのかという声。また、美容室のように場所や人のこだわりがあるサービスを学生が利用してくれるのかという懸念への指摘がありました」

 こう当時を振り返る松尾社長は同社のパーパスである「より新しく、より豊かなライフスタイルを提供し、多くの人に選ばれ愛され続ける企業となる」を伝え続け、社内の理解を得てきたという。また、こうした管理会社としては画期的なサービスを提供できるのは、自社所有物件を含む1万7000戸という安定した経営基盤があるからだった。「当社には挑戦できるフィールドがある、と話して事業を推進しました(松尾社長)
INOVE+のプロジェクト推進にあたり、若手社員に意見を聞いてサービス内容を決定した。 運良くサービスの拠点となる不動産もすぐに見つかった。

 こうして「INOVE+長瀬」は、22年5月にオープンした。管理物件のオーナーからは、自分たちがリフォームなど資金を投入しなくても家賃が上がることから大好評。新規の管理物件の受託は増加している。「INOVE+のサービス自体を強力な集客装置としてプロモーションし、オーナーへの資産価値向上をアピールしていく方針です」(松尾社長)

INOVE+の美容室

 25年には梅田エリアに2号店となる「INOVE+梅田」をオープン。梅田は大阪の中心地という場所柄、大阪府寝屋川市、門真市、枚方市エリアの入居者も生活圏として利用できる美容を中心としたサービスを提供する。

収益アパート販売にも注力

 同社では21年から新築アパートを投資家に向けて販売している。同社で土地を購入し、建築、管理をセットで販売する。これまでの販売実績は近畿大学周辺エリアや寝屋川市、門真市で、13棟122戸。木造3階建て9戸の構成だ。販売価格は1億2000万〜1億8000万円が多く、表面利回りは6〜7%となっている。

 設備や仕様は、2口コンロやシステムバス、独立洗面台、宅配ボックスなどを標準としている。建物のグレードだけでなく、集客装置として付加価値の高いINOVE+があることは、新築アパート販売面でも強みになっているという。

第一住建グループが提案する収益アパート

 現在、INOVE+を拡張した入居者向けの新サービスを構想中だ。 「賃貸管理業界全体が家賃回収やトラブル対応という旧来の業務を超え、入居者の生活の質と物件価値を向上させる役割を担うことが重要だと思っています。今後はその重要性を広め、業界を変革させたいと考えています」と松尾社長は笑顔で話す。

 同社は27年に創業55周年を迎える。今後も入居者、オーナーに支持されるように事業を展開していく。
(2026年7月号掲載)

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