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<永井ゆかりの刮目相待:6月号>
連載第105回 対話の重要性
カスハラは人ごとか
最近、よく耳にするようになった「カスハラ(カスタマーハラスメント)」。カスハラとは、顧客や取引先が、その立場を利用して著しい迷惑行為や理不尽な要求を行い、従業員の就業環境を害する行為だ。2025年4月に東京都がカスハラの防止条例を制定して以降、ほかの自治体も追随し条例化している。
日本では長年、「お客さまは神様です」という考え方が、顧客対応の王道だった。そこに付け込んで、過剰なサービスを要求し、時には暴言を吐くなどの行為をする人が出始め、カスハラとして問題視されたことが背景にある。
無論、賃貸管理業界も例外ではない。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が25年に発表した調査結果によると「直近3年間で約6割がカスハラを経験した」と回答したという。当然、その加害者には入居者だけではなく、オーナーもいる。全国賃貸住宅新聞社が同じく25年に実施したアンケートでは「カスハラの加害者は誰か」の設問に対して最も多かった回答は「入居者」で87人。次いで「オーナー(家主)」が42人だった。
この調査結果からも分かるように、不動産オーナーにとってカスハラは人ごとではない。むしろ自覚がないまま加害者になっている可能性があるのだ。
相手を尊重する姿勢
最近管理会社から時々聞く話に「オーナー切り」がある。対応しかねる要求をするオーナーの管理受託を管理会社側から解約するというものだ。
先日も管理会社の経営者数人と食事会をした際に、手のかかるオーナーの管理受託を管理会社側から解約したということが話題になった。しかも、1社だけの話ではない。「うちも最近、我慢できないから解約した」という話が別の会社からもあった。
不動産オーナーは気を付けなければならない。これまでは受け入れられていた言葉遣いや横柄な態度などは、通用しなくなってきている。管理会社もせっかく苦労して採用した社員を、オーナーの理不尽な要求によって失いたくはないだろう。
カスハラまではいかなくても、管理会社の社員を疲弊させるオーナーの行為は少なくない。担当者に対して「おまえ」と呼んだり、「空室が埋まらないのは努力が足りないからだ」と責めたり。そんな行為が担当者のストレスになり、最終的には社内で問題視された結果、管理継続不可の烙印を押されてしまうのだ。
その状況を避けるためにも大事なことは「会話ではなく、対話」を心がけることだろう。対話とは、相手と向かい合い、互いの意見や価値観の違いを理解し、相互理解を深めて新たな気付きを得るために行う双方向のコミュニケーションのこと。一方的に自分が言いたいことだけを話すのは対話ではない。
多様性といわれる時代、対話ができないとビジネスにも支障が出てくる。対話を意識することによって、良好な関係が築けるだろう。
永井ゆかり

Profile:東京都生まれ。日本女子大学卒業後、「亀岡大郎取材班グループ」に入社。リフォーム業界向け新聞、ベンチャー企業向け雑誌などの記者を経て、2003年1月「週刊全国賃貸住宅新聞」の編集デスク就任。翌年取締役に就任。現在「地主と家主」編集長。著書に「生涯現役で稼ぐ!サラリーマン家主入門」(プレジデント社)がある。
(2026年 6月号掲載)






