小さい・動かせる・多用途が特徴 ―スペースエージェンシー

土地活用賃貸住宅

<<新土地活用>>

小さい・動かせる・多用途が特徴
狭小地に建築可能な13㎡のコンパクト住宅

住宅、店舗、民泊に活用

 専有面積13㎡の住宅。平成バブル期のワンルームマンションならいざ知らず、空き家問題が叫ばれるこの時代に、あえて狭小の戸建てを提供する会社がある。住宅や商業施設の設計・施工を手がけるスペースエージェンシーだ。同社が提供するコンパクトハウス「PACO」は建築面積がわずか13・4㎡。つまり、約4坪の狭小地でも戸建て住宅を建てることができる。

スペースエージェンシー(熊本市)
益田健至社長


 PACOは、壁、屋根、床など同規格で作られた面材で住宅を支えることで地震や強風などの外力を分散させ、耐震性を高める2×4モノコック工法を採用。横幅約2・2m、奥行き約6・5mというコンパクトな空間に、トイレ、キッチン、シャワールームなど住宅に必要な機能を兼ね備えた造りとなっている。実際、住宅内に入ってみると、2間分の掃き出し窓があるため開放感があり、13㎡という狭さを感じさせない。同社本社横にあるモデルルームのようにオプションでウッドデッキを設置すれば、もう1つの空間をつくることも可能だ。

 「大は小を兼ねない」と独自の理論を話す益田健至社長は「男は小さな空間だとなんだかワクワクする。秘密基地のDNAが大人になっても残っている」と小さな空間に必要な機能を凝縮することに価値を見いだしている。そのため、ミニマルな暮らしを求める層に強く刺さる商品を意識したという。

 13・4㎡のタイプは1人暮らしに、26・3㎡のタイプは2人暮らしが主要ターゲットの同商品は、賃貸住宅や民泊としての利用が多い。「新しい形の賃貸住宅やほかの物件との差別化を求めて購入いただいています」と益田社長は話す。

▲13㎡とは思えない空間

 福岡市で賃貸住宅として8棟を連棟で建てたほか、熊本市では26坪に1棟を建てて家賃7万円の戸建て賃貸として活用している事例もある。住居のほかにコーヒーショップやネイルサロンなどの店舗や、民泊として活用できる商品もある。2024年には能登半島地震の復興支援において合計87棟を納品。累計販売実績は約140棟だ。

 PACOは同社の提携工場で構造躯体を製造し出荷。現地であらかじめ準備しておいた基礎に据え付け、現地で内装工事一式・水回り設備の設置・仕上げを行い完成となる。構造上、簡単に移設することもできる。工場で組み立てるため天候に左右されることがない。さらに据え付けは少ない人数で作業できるため、工期も短くて済む。しかも、注文から納品までは最短で50日程度。価格は580万円(税込み)からとなっている。

▲水回りスペースをコンパクトに収めている

 PACOシリーズは、FC展開をしている。同社はFC本部として、熊本県と福岡県、佐賀県、大分県、大阪府で直営し、全国20エリアでは加盟店が販売を行う。

開発のきっかけは熊本地震

 同社はもともと店舗リフォーム会社として06年に創業。近年は独自ブランド「Arasen House(アラセンハウス)」という1000万円前後から建築できる住宅を主力に販売している。そんな中で、PACOの商品開発に至ったきっかけは、16年の熊本地震だという。

 「熊本地震後、被災した高齢者から『息子に土地を譲ったが、自分たちはまだ納屋に住んでいる。安くて気の利いた家を建ててくれ』という声が多く寄せられたのです。仮設住宅的なニーズに応えたいという思いが出発点となりました」と益田社長は当時を振り返る。

 同時に、益田社長は熊本地震後の建設需要の盛り上がりを「つかの間の夢物語」と冷静に捉えていた。「いずれ市場が縮小することを見越してサブブランドが必要だと思いました。Arasen Houseの注文住宅一本足打法からの脱却を図る戦略的な意図もあったのです」(益田社長)

 ただ問題としてあったのは、従来の家づくりは職人のスキルによるところが大きく、品質が安定しないことだった。また職人の高齢化・人手不足・建材価格高騰という業界課題もあった。

 「高い次元で品質を均一化したい」という長年の悩みがあり、工場生産という方向性に行き着いたのだという。

 工場生産をするにあたり、役立ったのは、創業時に積水ハウスの下請けをしていたことだった。当時工業化住宅の製造ノウハウや品質管理の考え方を間近で学んだ。この経験がのちの「工場で建物を完成させてから現地に運ぶ」という発想の土台になった。

 益田社長は、工場で構造躯体を完成させた状態で出荷し、あらかじめ用意した基礎に据え付け、完成させるというモデルを自ら図面を引いて試作。工場製造と基礎工事を並行し、現場作業の日数を削減することで最短50日での納品を実現した。天候にも左右されず、少人数での施工が可能という点も重視して商品化した。

 こうして完成したPACOをウェブで発信したところ全国各地から問い合わせが次々に入った。「自分たちだけでは届けられない」と判断し、22年にFC展開を開始。「グッドデザイン賞」も取得し、加盟店からのブランドに対する信頼を高める。

 今後同社では、35年までに累計500棟の販売を目指す。

▲PACOのレイアウト例

(2026年6月号掲載)

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