<築古物件のReブランディング>
元保育園の空き店舗をコインランドリーに転換
年商1500万円で築古マンションの新しい顔に
おしゃれな空間でセルフクリーニングができ、「洗濯」が思わず楽しくなるようなコインランドリーを最近、街中でよく見かけるようになった。東京都杉並区で20年近くマンション経営を行ってきた江南雅史オーナーは、コインランドリー「Baluko Laundry Place 阿佐谷南店」を開業して1年半。現在は年商1500万円と軌道に乗せ、建物全体の資産価値向上にも成功しているという。現地で江南オーナーに取材した。
江南雅史オーナー(63)(東京都杉並区)

多くのテナントが入居希望も
オーナー自身での運営を重視
江南オーナーが所有する「グランドメゾン阿佐谷」は、東京メトロ丸ノ内線南阿佐ケ谷駅から徒歩圏内、主要幹線道路である青梅街道に面した好立地に立つマンションだ。築52年のRC造6階建てで1・2階はテナント2戸、3階以上は住居用8戸で構成される。1・2階のテナントにはこれまで約18年間にわたり保育園に賃貸していたが、退去が決まり江南オーナーは新たなテナント募集を検討することになった。
幸い物件は好立地であることに加えて、街道に面した間口を広く設けているため、視認性が高く、前面道路は一時停車しやすい環境だった。そのため、テナント事業者の募集を開始すると、パーソナルジムをはじめとしたさまざまな企業からの引き合いがあったという。しかし、江南オーナーはテナントからの賃料収入に依存せず、自前で長期的に安定したキャッシュフローを生み出すストックビジネスを始めたいと考えていた。そして、最終的にコインランドリー事業への参入を決断した。

中は広々としており清潔感もある
洗練された店舗デザイン
運営状況も好印象
事業参入にあたって、江南オーナーは、数多くあるコインランドリーチェーンの中からBaluko Laundry Place(以下、Baluko)に注目した。従来のコインランドリーの店舗に多く見られる、古い印象とは一線を画すBalukoの洗練されたデザインが強く印象に残ったためだという。「Balukoの実際の運営状態を確認するため、首都圏を中心にBalukoの店舗を10店ほど、他フランチャイズ店舗も約40店視察した」(江南オーナー)。初期投資額は内装工事や最新設備の導入を含めて3200万円かかる見積もりだったが、営業中のBalukoの既存の店で運営状態を見聞きし、「これならやっていける」と確信したという。 さらにBalukoは、フランチャイズ契約でありながら毎月の売り上げが120万円になるまでロイヤルティーが発生しない契約体系だった。そのことも、フランチャイズ加盟への大きな後押しとなったという。
開店から徐々に売上増
純利益1000万円弱に
2024年12月のBaluko Laundry Place 阿佐谷南のオープンから1年半、現在も売り上げは右肩上がりで業績は極めて好調だという。「オープンしてから日がたつにつれ、客足が伸びたことと認知度が上がったことでこの店舗が地域になじんできたと感じる」(江南オーナー)

コーヒーは一杯100円。洗濯・乾燥が終わるまでコーヒーを飲みながら本を読んでのんびり待つ人がいるそうだ
初年度の売上高は1200万円を記録し、2年目の現在、年間の売り上げは1500万~1550万円の着地を見込む。特筆すべきは、自己所有物件での運営のため「固定家賃が発生しない」点だ。そのため水道光熱費や資材費を差し引いた粗利益率は約64%に達し、実質的な年間純利益は1000万円弱となっている。これにより、初期投資を4年強という異例のスピードで回収できる見通しだという。
元デベロッパーの経験生かす
利用者目線を重視
周辺エリアは、ファミリー層が多く居住する特性を持つ。同店は、平日にたまった洗濯物のまとめ洗いや、布団・大物洗い需要を獲得。「Balukoのファンが大きな顧客層になっていると感じる。利用客と話すと『これまで家から遠いBalukoへわざわざ行って洗濯していたが、阿佐谷南店がオープンしてからはこちらに切り替えた』と言われたこともある」(江南オーナー)。また、同物件の2階にはトランクルームがテナントとして入居しており、1階のコインランドリーと組み合わせることで、地域住民の生活利便性を高める複合的なストック型ビジネスの拠点を構築している。

コーヒーサーバー横のベンチの下に防災備蓄キットを保管している
今回の事業成功には、江南オーナー自身がデベロッパーで働いていた経験を持っていることも功を奏した。日常的な清掃や利用者対応を自ら丁寧に行うほか、待合スペースにコーヒーサーバーを設置するなど、独自の空間づくりに注力した。さらに災害などの非常事態に備えて、地域住民のための防災備蓄も設置しており、こうした取り組みがコインランドリーを利用する地域住民から支持される理由の一つにもなっているようだ。
10年後に建て替えを予定している同物件。「1階のランドリーを建物の顔に変えたことで、物件全体のブランディングにつながった」と江南オーナーは語る。単なる空き店舗対策にとどまらず、コインランドリーによるテナント活用は不動産経営の有効な先進事例にもなりそうだ。
(2026年8月号掲載)






