<<不動産×宿泊事業の可能性>>
—非住宅ではじめる遊休不動産活用ビジネス
急成長する民泊ビジネスの最新戦略
インバウンド需要の回復を追い風に、民泊市場への参入を検討する事業者が増えている。空き家や遊休不動産の有効活用策としても注目を集める一方、収益を最大化するためには物件選定や運営、集客など事業設計が欠かせない。本記事では、民泊事業者や不動産オーナーを支える周辺ビジネスを紹介する。
Case1 :賃貸サービス
住んだ日数だけ課金する新家賃システム「リレント」を採用
賃貸と宿泊で収益を最大化し、2000室の拡大戦略を描
unito(Unito:東京都目黒区)
Unito(ユニット)は、賃貸・ホテル予約サービス「unito」を展開する中で、ユニークな家賃システムを採用している。それが、居住者が外泊した分だけ家賃を減額できる「リレント」システムだ。居住者が外泊する時は民泊として部屋を貸し出せるため、不動産オーナーは「賃貸と民泊の二毛作運営」によって、年間を通して収益を最大化することが可能だ。首都圏を中心に約1300室の物件を運営しており、2027年7月の決算期までに2000室の運営を目標に据える。
大田 優磨 執行役員
- ▲物件は家具・家電、備品や消耗品が備え付けだ
外泊日数に応じ家賃を減額
家賃システム「リレント」は、居住者が申請した外泊の日数に応じ、日割りで月額の家賃を減額する特許取得済みのサービスだ。同社が運営する物件は家具・家電、備品や消耗品はすべて備え付けで、居住者が外泊中の部屋は宿泊予約サイトを通じて一般の宿泊客に提供している。なお居住者の外泊日に宿泊客がいなくても、家賃は減額される。
外泊当日は、朝10時までに一時退去する。部屋に戻る際は、夕方16時以降に入室可能となる流れだ。外泊申請ができるのは1か月で最大15日まで。減額される料金は部屋によって異なるが、平均で1日4000〜5000円だ。外泊中に部屋に残す荷物は、鍵付きのベッド下のスペースか専用ロッカーに収納する。
「社長の近藤佑太朗は、月に半分ほど出張で外泊していて、その間の家賃がもったいないと感じていました。これを解決できないかと考案したのが同サービスです」(大田執行役員)
入居利用者層は30〜40代で、年収1000万円前後のアッパーミドル層が中心。セカンドハウスとしての利用が多い。入居の際の荷物はキャリーケース数個程度で済む設計にしている。入居期間の平均は3カ月ほどだ。
3タイプのプランを用意
物件オーナーにとっては、毎月の家賃収入に加え、民泊としての宿泊料を上乗せできる点が同サービスの大きな特徴だ。月々の収入見込み額は、一般的な賃貸住宅で家賃が12万円程度の物件であれば、リレントでは家具・家電付きであることから20万円前後に設定できる。そして、外泊によって家賃が減額された場合(例えば1日5000円×10日で5万円減)でも、その期間を民泊として稼働させることで収益を補完できる。月間売上が設定家賃を上回るケースもある。
物件オーナーに対して、同社は3つの収益プランを用意している。
1つめは固定賃料型だ。リレントシステムによる上乗せ収益を見込めるため、通常の賃貸住宅よりも高めの賃料で契約している。
2つめは成果連動型だ。入居者が支払う家賃と外泊時に貸し出した宿泊料の合計から、原価経費と同社の手数料を差し引いた料金をオーナーに支払う。稼働状況に応じて賃料が変動するタイプだ。
3つめは最低保証金額付きの成果連動型だ。こちらも、稼働状況に応じた賃料の変動があるが、年間での最低賃料を保証している。しかし、その分手数料を高めに設定するプランだ。
同サービスでの開業には、すでに賃貸物件として運用中で、かつ現在空室となっている部屋を活用するケースが多い。
既存物件を活用する場合の初期費用は、家具・家電代が大半を占めるが、それ以外にオペレーション構築費と民泊の許認可を取得する事務作業費などが必要だ。また集客や清掃などのオペレーション上の理由から、開業は1オーナーにつき3部屋から可能となっている。
Case2:民泊運営代行
24時間サポートを強みに210室を運営代行
地方の空き家活用にも注力
民泊管理バンク(BizPato:東京都町田市)
東京を中心に全国210室の民泊の運営代行事業「民泊管理バンク」を展開するBizpato(ビズパト)。電話サポートスタッフを内製化し、複数言語での手厚い対応力を強みに持つ。近年は、地方の空き家や別荘を活用した、同社プロデュースの宿泊施設の開発にも乗り出している。
高橋 拓真社長
- ▲自社ブランド「The Nature」の内装
ゲスト対応を内製化
ビズパトは、民泊運営代行と自社物件の民泊運営を手掛けている。民泊運営代行は、不動産を所有するオーナーに代わって集客し、チェックインの案内からトラブル対応、チェックアウト後の清掃までを請け負う。現在、210室の運営代行を担っており、その内訳は東京が6割、地方が2割、軽井沢や箱根などリゾート地が2割だ。一方、自社物件として北海道と東京に賃貸アパートを各2棟と、岡山県に築40年の空き家を改装した宿泊施設を運営している。
宿泊費用は、アパートが1室1万5000〜2万円、岡山県の戸建てが2万5000〜3万円。利用者は中国や韓国などのアジア圏からの旅行者が多く、次いで欧米系、日本人と続く。
同社の強みは、日本語と英語ができるスタッフが24時間ゲスト対応をすることだ。電話サポートに代行会社を使用せずに内製化しており、昼間は国内スタッフ、深夜帯はアメリカやカナダ在住の日本人スタッフがゲストの電話に応じている。
「一般的な代行会社では、海外スタッフが対応することが多く、可否のみの返答になることも少なくありません。当社では問い合わせに対して、代替案まで提案するよう徹底しています。ホテルと同じ接客品質が強みです」(高橋社長)
高橋社長は、大学在学中の2018年に民泊運営ノウハウを発信するWebメディア「民泊管理バンク」を立ち上げ、23年に本格的に民泊運営代行サービスを展開する同社を設立した。
自社プロデュース施設に注力
民泊の売り上げは、アパートは月35〜40万円、戸建ては同60〜80万円が目安となる。そこから、光熱費、清掃費用、消耗品、予約サイトの手数料などの経費が売り上げの60%、運営代行費用が約20%かかり、最終的な利益は売り上げの約20%となる。
物件は、都心に所有する不動産を民泊営業に転用するケースが多い。アパートタイプの場合、初期費用には、家具・家電や行政への申請、写真撮影など最低200〜300万円が必要となる。
一方で、地方にある空き家や別荘を活用する場合は、購入する場合500~1000万円、加えてリフォーム代として800〜1000万円が目安となる。
「中古物件の人気が高まり、家賃や物件取得費の高騰によって、副業としたい個人オーナーが参入しづらくなっており、法人の参入が増えています。また地方で安価に取得できる物件を活用するケースが増えている印象です」(高橋社長)
高橋社長は「成長戦略のカギは地方にある」と話す。岡山県では築40年の空き家をフルリノベーションした自社の宿泊施設「The Nature Uno」をスタートさせた。
今後は、瀬戸内エリアを中心に宿泊施設と観光ツアーの展開を当面の目標としている。その際には、自社でプロデュースした宿泊施設『The Nature』シリーズを投資家へ販売し、運営を担うビジネスモデルを推進していく計画だ。
Case3:M&A、開業支援
物件探しから運営まで民泊投資をワンストップで支援
自社運営でノウハウを蓄積し、FC展開を目指す
Stay&(STAYAND:東京都新宿区)
2025年7月に設立されたSTAYANDは、民泊投資をサポートするサービス「Stay&(ステイアンド)」を開始した。同社はそのほかにも既存民泊の営業権のM&Aサポート事業と、民泊の新規開業から運用までワンストップでサポートする事業も行う。4月には自社運営となる民泊施設「Stay&九十九里」をオープン。民泊運営のFC化も検討している。
松田 徹也社長
- ▲自社で運営するStay&九十九里
空き家を収益物件へ変える民泊
同社の事業の柱の1つは、民泊営業権のM&A事業だ。不動産そのものではなく、民泊としてすでに運営されている営業権を投資家へ引き継ぐ形で譲渡する。
価格帯は500〜1000万円前後が中心。エリアとしては東京の都心部が特に人気で、次いで札幌、福岡、京都などの観光都市が続く。設立から半年で20件を超える成約実績がある。
もう1つの柱は、民泊の開業から運用体制構築までを支援するワンストップ事業だ。この取り組みは、土地活用・空き家活用という社会課題の解決とも結びついている。
例えば、相続後に使われていない空き家や、収益化できていない不動産を、周辺の観光需要や市場動向を考慮した単価設定やターゲット層のプランニングをする。
地方は、空き家問題が深刻化する一方で、宿泊施設が不足している観光エリアが多いという。同社は、自治体やNPOとの連携も視野に入れ、空き家を再生するモデルを模索している。開業準備が整えば、写真撮影や、価格設定を行い、予約サイトへの登録を行う。さらに、信頼できる運営代行会社とのマッチングまでを担い、オーナーが長く運用できる体制を提供する。
「全国で空き家が問題になっています。空き家を民泊として利用すれば観光や地方創生にもつながると考えました」(松田社長)
FC展開と地方創生
民泊を始めるには、申請費用が必須だ。行政書士への申請代行費用が25万円、消防設備が20万円で、ほかに寝具や家具類が約40万円かかる。
さらに、物件を借りる場合、敷金・礼金・仲介手数料・保証会社手数料が発生する。たとえば、賃料が10万円の場合、およそ40万円程度が必要だ。
加えて、民泊開業までに消防検査などで3カ月を要するため、その分の家賃がかかり、トータルでは70万円となる。全て合わせて初期費用の目安は合計で約150万円だ。
1泊の利用料金は、1室2~3万円が多く、月の売り上げは50〜70万円を見込んでいる。民泊として稼働できない年の半分はマンスリーマンションとして運用しており、その場合の売り上げは月30万円程度(賃料10万円の場合)を見込む。
「ただし、運用中にかかる経費として、家賃のほかに、水道光熱費や代行業者に依頼する清掃などに15〜20%がかかります。さらに、集客のための予約サイトに対する手数料が15%ほど必要です。それでも、最後には営業利益が30%残る設計をしています」(松田社長)
現在、同社は自社運営となる「Stay&九十九里」を4月に開業し、運営している。民泊運営のノウハウを蓄積したうえで、今後は「Stay&○○(地名)」という形でのFC化も視野に入れている。
「地方は大手企業も開拓しきれておらず、期待できる市場です。空き家バンクや行政とも連携しながら、地方でも収益化できる民泊モデルを広げていきたいです」(松田社長)
Case4:物件情報サイト
民泊運用可物件をそろえる情報サイトが切り口
開業から運用まで一気通貫なサポート業務も
民泊マーケット(KAERIE:東京都江戸川区)
不動産仲介事業を主軸に置くKAERIEは、民泊用の物件を探せるサイト「民泊マーケット」の運営と、開業から運営代行まで一気通貫の民泊サポート事業を展開している。民泊は不動産投資の新しい形として注目されているが、実際に始めるには「民泊運用が可能な物件が見つからない」「運営ノウハウがない」という2つの壁があるという。同社ではこの2つの問題を解決するサービスを展開している。
青木 純平社長
- ▲開業時にはインテリアの相談も受けている
物件が見つからないという壁
同社が運営する「民泊マーケット」は、オーナーから民泊運用が許可された物件のみを掲載する物件情報サイトだ。
民泊施設の開業を検討する事業者が物件を探す場合、通常の不動産サイトでは民泊運用可能な物件が見つからないことが少なくない。物件によっては、管理規約や物件オーナーの意向によって民泊が制限されていることが多いためだ。
一方で物件オーナー側も、民泊運用を検討しても民泊としての貸し出し可否や収益性が分からず、踏み出せないケースが多いという。
「民泊マーケット」は、これら双方の問題を解決できるサービスだ。
掲載する物件はすべて民泊運用が可能なため、事業者とオーナー間での、民泊運用が可能かどうかの確認や交渉をする手間を省ける(行政の事前協議は事業者側で確認が必要)。
また、物件オーナーにとっては、通常の不動産業者とは異なり、実際に民泊を運営している同社から、民泊の実情や具体的な収益イメージの説明を受けたうえで、安心して掲載することができる。
「自社で民泊運営をする中、最初に当たった壁が『物件が見つからないこと』でした。民泊可能物件を扱うサイト自体がほとんどなかったので、これはビジネスとして成立すると考えました。」(青木純平社長)
掲載する物件の中で、成約しやすいのは家賃10〜30万円の価格帯だ。条件のいい物件であれば、掲載から1週間以内に複数の問い合わせが入り、短期間で決まることもある。
運営代行まで担う
同社は物件のマッチングだけではなく、民泊事業の運営支援も行っている。開業については提携業者と連携し、許認可取得、行政との事前協議、消防対応、内装までを一貫してサポートする。
さらに、運営代行業務では、価格設定や予約サイトの対応、清掃手配、トラブル対応などを行う。事業立ち上げから運用まで、必要なプロセスを全体的に支援している。
事業者にとって、民泊施設開業のための初期投資は、300〜800万円程度が目安だ。物件を借りる初期費用に加え、消防設備に50〜100万円、家具に100万円程度、さらに壁紙の張り替えなどのリフォーム費用が必要となる。
ある事業者の一例では、4室の運営を合わせた月の売り上げは約220万円で推移している。予約サイトの手数料が売り上げの15%かかるほか、運営代行費、家賃、清掃費、光熱費などを差し引くと、運営を完全に外注したケースでは最終的な利益が月45〜55万円ほどになるという。
「物件情報は『民泊マーケット』にありますので、事業者に対しては運用まで見越した物件の提案ができます。また、物件オーナーとも直接つながっているため、諸条件を決める際の細かな交渉がスムーズに行えることもメリットです」(青木社長)
(2026年9月号掲載)






