不動産小口化商品による分散投資提案
資産評価の圧縮や相続しやすさが好評
不動産による資産運用の一つとして注目されているのが、不動産小口化商品だ。いちごオーナーズ(東京都千代田区)は不動産オーナーのための会社として、一棟不動産の販売や不動産コンサルティング事業のほか、不動産小口化商品を販売している。2022年からはブロックチェーン(分散型台帳)基盤を活用し、所有権を移転できる有価証券のセキュリティー・トークンの発行を行うデジタル不動産の販売をスタート。同社の纐こう纈けつ雅彦社長に不動産小口化事業の状況などについて聞いた。
いちごオーナーズ(東京都千代田区)
纐纈雅彦社長(58)
――21年に始めた不動産小口化事業の販売状況はどうですか。
「いちご オーナーズ ビルシェア」という名前で、不動産特定共同事業スキームを活用した事業を21年12月に開始しました。購入者が出資持ち分に応じて不動産を保有し、配当を受理するという商品です。運用期間は10〜15年。現在4棟目が販売中です。1口100万円で10口・1000万円からの購入となっています。出資額は販売中の4棟目を含めて20億円を超えます。3棟目までの平均購入口数は約18口です。
――どのような人が購入していますか。
購入年代層は60代、70代がボリュームゾーンです。アンケート結果では資産運用目的の人が91%を占めています。相続対策という明確な意思があるというよりは、余剰資金を運用したいというニーズなのだと思います。1口100万円なので110万円未満の非課税枠を使って、暦年贈与をする人もいます。利回りは2%半ばから後半ですが、資産評価の圧縮や、分散して相続・贈与ができる点が受け入れられているのでしょう。現金で買う人がほとんどです。
――デジタル不動産事業も展開しています。
22年11月からブロックチェーン基盤を活用し、安全性に優れたセキュリティー・トークンの発行を行うデジタル不動産事業を展開しています。セキュリティー・トークンは、金融商品取引法のもと規制されるとともに、ブロックチェーンにて権利が管理されることで、データの改ざんが極めて困難な安全性の高い投資商品です。当社では「いちご・レジデンス・トークン」という商品で、都内の賃貸住宅が投資対象の不動産信託受益権を小口化しています。1口50万円からで、1口からの購入が可能です。少額投資による資産形成ができる点が特徴です。第1号、第2号案件ともに販売および申し込み開始後、即完売。予想利回りは4%で、幅広い層に訴求できる商品となっており、30〜40代が6〜7割を占めます。
――今後の展望について教えてください。
仕入れ・OEMからリーシング・運用管理、販売・コンサルティングと一気通貫した不動産のSPA(製造小売業)を目指します。そうすることでマーケティングを徹底し、安心できるいちごクオリティーの商品を顧客に届けていきたいと思います。
(永井ゆかり)
纐纈雅彦社長プロフィール
1965年2月、岐阜県生まれ。大学卒業後、商業ビル運用の仕事に携わるも28歳で大学に再入学し、1級建築士の資格を取得。デベロッパーなどを経て、2011年いちご地所に入社。15年同社代表取締役社長に就任。17年3月、不動産オーナーサービス事業を展開するいちごオーナーズを設立、代表取締役社長に就任。
(2024年1月号掲載)
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