【特集２】資産運用の一つとして注目 不動産小口化の最新動向③

対象不動産、エリアなど特色ある各社商品

複数物件がセットになった新商品発売

インテリックス（東京都渋谷区）
アセットソリューション事業部　ソリューション営業部
東川亨部長（59）

　インテリックスは、15年から小口化商品「アセットシェアリング」を売り出し、24年２月までに８案件を組成。累計で80億6000万円を販売した。このうち２案件は償還した。

　物件タイプは賃貸マンション、商業施設、シェアハウス、ビジネスホテルなど。エリアは東京都内に限らず、横浜市や札幌市にも物件がある。同社はリノベ事業が本業であるため、東川部長は「物件の価値を維持、向上させる管理が得意で、稼働率はほぼ100％です」と語る。運用期間は10～30年前後で、分配予定利回りは２％台半ば～３％台半ば。購入者の約半数は50～70代だ。

　同年２月には、１案件でエリアや物件タイプを分散できることを訴求して認知度向上を狙った「アセットシェアリング＋（プラス）」を商品化。１号案件は東京都墨田区と川崎市、札幌市にある稼働中の賃貸マンション３棟をセットにした。運用期間は10年間で、分配予定利回りは約３・34％。５口から販売し、１３４５口・13億4500万円を募集。５月末に第１期の組合を組成した。６月から第２期を募集している。

 

任意組合型でネット販売を計画

シマダアセットパートナーズ（東京都渋谷区）
ＪＵＳＴ ＦＩＴ事業部
中野清之部長（43）

　シマダアセットパートナーズは、21年11月から小口化商品「ジャストフィット」を販売している。23年末までに手がけた６案件とも完売し、合計で18億3500万円を販売した。

　物件は、主に同社やグループ会社が開発、運営するもので、高齢者向け施設や中古賃貸マンション、中古オフィスビルなど。５案件がサブリースで、唯一サブリースではない世田谷区の中古賃貸マンションも100％稼働している。

　価格は１口100万円で３口（一部10口）から。運用期間は主に５～10年（一部２年）。分配予定利回りは３・32～４・27％。現在、購入者は全国に約200人おり、平均年齢は約60歳だ。家主も多い。６案件とも大半がリピーターだ。新規の購入者は２～３割ほどだが、中野部長は「ジャストフィットを通して当社グループを広く知ってもらいたいので、新規のお客さまをさらに増やしたいです」と意気込む。

　同社は、23年末に不特法の電子取引業務の許可を取得。任意組合型商品は対面販売が主流である中、今後はジャストフィットでも申し込みから配当までをインターネットで完結させる考えだ。

 

不動産２兆円運用のプロの目利きが強み

いちごオーナーズ（東京都千代田区）
纐纈雅彦社長（59）

　いちごオーナーズ（東京都千代田区）は不動産オーナーのための会社として、一棟ものの不動産の販売や不動産コンサルティング事業のほか、不動産小口化商品を販売する。いちごグループは累積で約２兆円の不動産を運用するプロ。その目利きを利用できることが強みだ。

　「いちご オーナーズ ビルシェア」という名称で、不動産小口化事業を21年５月に開始した。運用期間は10〜15年。１口100万円で10口・1000万円からの購入となっている。４案件を運用している。オーナーは１５０人ほどおり、平均購入口数は20口弱だ。200口、300口を購入する個人もいるという。「同じ資金を投資するなら、都内の一棟アパートよりも都心の一棟マンションの小口化商品のほうが安心という人が結構います」と纐纈雅彦社長は話す。

　主に東京23区内の好立地の新築マンションを取得。購入者の年齢層は60代、70代がボリュームゾーンとなる。その中でも資産運用目的の人が９割超を占めている。「利回りは２％台半ばから後半ですが、資産を分散投資できる点、相続や贈与において不動産の評価が適用できる点が受け入れられているのでしょう」と纐纈社長は話す。
　22年からはブロックチェーン（分散型台帳）基盤を活用し、所有権を移転できる有価証券のセキュリティー・トークンの発行を行うデジタル不動産の販売をスタート。投資商品の幅を広げている。
　今後は、顔の見える顧客のニーズに応じたオーダーメード型の商品づくりを行う。

（2024年８月号掲載）