賃貸経営の会計処理が断然ラクになる

賃貸経営賃貸管理

※この記事は地主と家主(旧家主と地主)2023年11月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

<<【特集】賃貸経営で役立つ確定申告ソフト>>

個人事業主の家主の中には、日々の会計処理を「エクセル」などの表計算ソフトを用いて、自前で行っている人も多いだろう。しかし、確定申告ソフトを使えば、会計処理の負担がもっと軽減でき、簡単に申告することが可能だ。また、ソフトを使って自らデータ入力することは、賃貸経営上のリスク回避にもつながる。確定申告ソフトの利便性と賃貸経営にもたらすメリットを紹介する。

初心者でも簡単にできる青色申告
自動入力・仕訳機能も充実

 確定申告には白色申告と青色申告の2種類がある。白色申告は簡易(単式)簿記による記帳のため帳簿つけが簡単で、確定申告時の提出書類も少なくて済む。

 一方、青色申告は、賃貸住宅の戸数規模がおおむね5棟10室の「事業的規模」の要件を満たせば最大65万円の控除、事業的規模に満たないケースでも10万円の控除が受けられるほか、事業に携わる家族に支払う給与を経費計上できるなど家主にとってメリットが大きい。しかし、複式簿記による記帳が条件(65万円控除)で、保存しておかなければならない帳簿の種類や、申告に必要な書類も多くなる。これらのことから、「難しそう」「複雑だ」と青色申告を敬遠する家主も多いのではないだろうか。そういった人に活用してほしいのが確定申告ソフトだ。

 多くのメーカーから青色申告が簡単にできる多種多様なソフトが販売されており、大きく分けて①購入したソフトをパソコンに取り込むインストール型②オンライン上で作業、保存するクラウド型の二つのタイプがある。

 インストール型はオフラインでも利用することができ動作も安定的。クラウド型はインターネット環境と端末があればどこでも使えて、税制改正時なども自動でバージョンアップされる。どちらのタイプであっても、各社の製品が「複式簿記の知識がない初心者であっても使いやすい」ことをうたっており、勘定科目や金額の数字を入力するだけで、自動で仕訳、計算をしてくれる。確定申告書や青色申告決算書などの書類の作成まで自動で行うものもある。また最近は、AI(人工知能)を使った機能も目立つ。例えば、
▼金融機関と連携し、口座の入出金記録を自動で取り込み、自動で仕訳する
▼レシートをスマートフォンやスキャナーで読み込めば、自動で仕訳する
といった具合だ。つまり、一件一件入力していく作業そのものも省くことができる。

 このほか、細部の機能面や価格、購入時の特典といった部分にも各社の製品それぞれに特徴があるので、それらを見極めたうえで、最も自分に合ったものを選ぶといいだろう。互換性が高いものを選べば、ほかのソフトとの連携も容易になる。また、インボイス(適格請求書)制度や改正電子帳簿保存法に対応しているソフトもある。

 

こんなにある青色申告のメリット

・最大65万円もしくは10万円の青色申告特別控除が受けられる
・事業に携わる家族への給与を経費計上できる
・個人事業主なら最長3年間、赤字を繰り越すことができる
・30万円未満の資産なら一括して経費計上が可能

 

経営状態を可視化し
リスク回避にもつながる

 不動産税務に詳しい税理士法人スマートシンク(東京都新宿区)の菊地則夫代表税理士は、賃貸経営において、家主が自らデータで会計処理をすること(自計化)の意義を強調する。「データで記録されていれば可視化でき、経営の現状把握が容易になるとともに、リスクの回避にもつながります」(菊地代表税理士)という。

 そうであれば、家主の中には「エクセルを使った自前の会計データでも可視化と現状把握は可能だ」と考える人がいるかもしれない。しかし、普段からの利便性(自動機能や簡単に操作できる点など)においては確定申告ソフトに及ばないだろうし、可視化の面でも、最近は非常に見やすい確定申告ソフトがある。

 菊地代表税理士によれば、スマートシンクの顧客の中にも個人事業主向け確定申告ソフトをはじめとした会計ソフトを使用する人は増えており、60代以上でも積極的に使いこなす人もいるという。ICT市場調査のMM総研(東京都港区)の今年春の調査では、会計ソフトの利用者のうちクラウド型ソフトの利用率が初めて3割を超えたことも分かった。まだ確定申告ソフトを使っていない人は、24年の申告を機に、導入を検討してみてはどうか。

 

自計化のメリットと青色申告すべき事業の目安

 

税理士法人スマートシンク
(東京都新宿区)
菊地則夫代表税理士


 確定申告ソフトで日々の経理を自計化するメリットについて、菊地代表税理士に聞いた。主なものは次のとおり。

▶︎複数の物件を持っている場合、部門別管理機能があるソフトを使えば物件別に損益を把握できることに加え、キャッシュフローと返済スケジュールをきちんと物件ごとに把握できる。これによりキャッシュフローが苦しい物件を抽出できる。

▶毎年の減価償却費と借入金の返済ペースが合っていない物件を把握できる。例えば、設備の15年の償却期間が終わって減価償却費が減少し課税所得が上がるのに、返済額は変わらず、キャッシュフローが厳しくなることなどを早期発見できる。

▶複数の物件を持つ家主が複数人に相続させる場合、物件ごとにキャッシュフローの良しあしがわかり、分配の不均衡を避けることができる。

 また、菊地代表税理士は確定申告ソフトを使うかどうかの判断の目安について次のように教えてくれた。

「家主の貸し付け規模が、5棟10室基準(※)を満たしていれば、事業的規模と認められ、一定の帳簿を備えておくことにより青色申告で最大65万円の控除を受けることができます。5棟10室基準に満たない家主は、エクセルなどを使った自前の会計処理でも十分かもしれませんが、5棟10室基準を満たすようなら確定申告ソフトを使うと便利です。

 一方、貸し付け規模が大きく、確定申告ソフトを使っても会計処理の量が膨大で、月に数日を要したり、忙しくて入力の時間がないような場合は税理士に頼むといいでしょう」

※アパートならおおむね10室以上、戸建てならおおむね5棟以上であること

 

確定申告ソフト入力イメージ

やよいの青色申告 オンラインの場合

 弥生から販売されている「やよいの青色申告 オンライン」を例に、入力イメージを紹介する

Step 1:新規登録時に、家主は事業選択で「不動産業」を選ぶ。

Step 2:ホーム画面。自ら入力する「かんたん取引入力」、もしくは銀行口座等と自動連動する「スマート取引取込」のどちらも選べる。また、従来の簿記の形式での入力もできる。

Step 3:「かんたん取引入力」画面。取引日や勘定科目、取引先、金額などを入力するだけで、あとは自動で帳簿に仕訳を起票してくれる。勘定科目の内容は、摘要欄で詳細に入力することができる。

Step 4:可視化のイメージ。画面は科目別の損益を示している。グラフで表示され見やすい。

Step 5:確定申告時には、申告方法の選択から書類作成まで順を追ったガイドが表示される。電子申告の場合も誘導してくれる。

Step 6:入力内容を基に所定の書式に自動で記入され、未記載や不備に対しては指摘があり、修正箇所を示してくれる。

 

各社の確定申告ソフト紹介

目立つ簡単な操作性、特典も多数

 弥生(東京都千代田区)の「やよいの青色申告24」は、初めてでも簡単に青色申告ができることが特徴だ。e-Tax(イータックス)に対応し、税務署に行かずに確定申告を完了させることもできる。30日間無料で使用でき、インボイス制度、電子帳簿保存法にも対応する。

▷販売実績:BCN AWARD19年連続売り上げ実績ナンバーワン(※1)、メーカー別販売本数シェア77%(※2)

※1 BCN調べ、※2 弥生調べ

▲インストール型

[担当者のおすすめポイント]
「全国の青色申告会、商工会、商工会議所が推奨し、4人に3人が使用する安心・定番ソフトです。最新の法令改正や確定申告書に対応する『あんしん保守サポート(有償)』に加入すると、お得な福利厚生サービスも利用できます」

弥生はクラウド型の「やよいの青色申告 オンライン」も販売。初めてでも青色申告に必要な書類を簡単に作成でき、インボイス制度、電子帳簿保存法にも対応する。

▷販売実績:クラウド申告ソフトシェアナンバーワン(「クラウド会計ソフトの利用状況調査」MM総研調べ 2023年3月)

▲クラウド型

[担当者のおすすめポイント]
 「面倒な取引データの入力作業を自動化し、会計業務を効率化。e-Taxの申告も直接でき、税務署へ行かずに確定申告が完了します」



 freee(東京都品川区)の「クラウド会計ソフトfreee(フリー)」は、確定申告に必要な書類を○×形式の質問に答えて作成できるなど、初心者にもわかりやすい。スマートフォンアプリでレシートを撮影すると、日付・金額・勘定科目まで自動で記入することも可能だ。

▷販売実績:クラウド会計ソフトシェアナンバーワン(※シミラーウェブ、ローカルフォリオ 2019年10月)。スマートフォンアプリ評価4.5点

▲クラウド型

[担当者のおすすめポイント]
 「副業を始めたばかりの人や開業したての人にもわかりやすい解説と操作方法が特徴です。SNSでインボイス制度に関する解説や個人事業主のトレンドなどを発信しているのでサービスと併せてご覧ください」



ワイエムジーソフト(横浜市)の「富士山賃貸ESTA(エスタ)&富士山会計FINE(ファイン)」のセットは、賃貸管理と会計の両方を網羅する。富士山賃貸ESTA台帳画面から賃料収入などを直感的に入力でき、富士山会計FINEは富士山賃貸ESTAの入金データを仕訳として簡単に取り込むことができる。支出の入力で決算書まで作成可能だ。

▷販売実績:1500件

▲インストール型

[担当者のおすすめポイント]
「JA神奈川県中央会の推奨や当社の母体が会計事務所といった安心のバックボーン体制もあります。保守サポート加入で遠隔支援サービスも用意しています」

(2026年10月公開)

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