【特集】狭小地・変形地の活用法[後編]①:準耐火の木造3階建て

土地活用賃貸住宅

2025年3月号に引き続き、狭小地や変形地での賃貸物件の新築事例を紹介する。今回は限られた敷地内でさまざまな規制をかわして延べ床面積や専有面積を確保する例が見られた。

事例1
32坪の敷地に立つ準耐火の木造3階建て 規制緩和で延べ床172㎡・7戸を実現

ユウ建築設計室 一級建築士事務所(千葉県船橋市)
吉田祐介代表(40) 

 都営地下鉄三田線新板橋駅近くの「henmiso(ヘンミソウ)」は、住宅が密集するエリアで幅4mの道路に面して立っている。ユウ建築設計室一級建築士事務所(千葉県船橋市)が設計し、2022年3月に完成した。

 敷地面積が約105㎡という狭さでも、準耐火建築物の木造3階建て、延べ床面積で約172㎡を実現した。住戸7戸を確保し、そのうち2〜3階の6戸を賃貸している。間取りはワンルーム(21~22㎡)で、現在は満室。利回りは11・7%だ。

 延べ床面積を最大限確保するために行き着いたのが、2~3階への階段と共用廊下を建物の裏側に設置し、全住戸とも窓を道路側に配置する方法だ。これにより、建物の周りの通路とバルコニーの設置を回避して建設可能な面積を増やした。

▲幅4mの道路に面して立つhenmiso

 同物件はいわゆる「木三共(もくさんきょう)」(一定の条件を満たした準耐火建築物の木造3階建て建物)であるため、準耐火構造とする必要があるほか、避難を想定したさまざまな規制がある。

 その中でも、建物の周りに3mの通路を設けなければならないことや、避難する際に有効なバルコニーの設置がネックになった。同社の吉田祐介代表・一級建築士は「これらの通路やバルコニーを設けると、建物や住戸が狭くなります。しかし、設置を回避できる緩和要件もあります」と語る。

 吉田代表は緩和のための規定を一つ一つ読み解いていき、それに関連して2~3階の共用廊下とそれに通じる階段を外気に開放されるように設計するなどして、設置を避けることに成功した。前述のとおり2~3階への階段と共用廊下を建物の裏側に設け、全住戸の窓を道路側に配置したのだ。

 このほか、道路斜線制限をかわすために、建物を道路から1・5m奥に寄せている。

 建築費は約5300万円で、吉田代表は「完成当時としても安く済みました」と話す。現在、家賃は8万4000〜8万5000円だ。

▲キッチンが対面式になっている3階の部屋。天井が高いことも特徴だ

(2025年 4月号掲載)
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