＜＜非住宅ではじめる遊休地活用ビジネス 第12弾＞＞
空きテナントや遊休地の活用方法の1つに、フランチャイズ加盟がある。今回紹介する非住宅系土地活用ビジネスは、空きテナントを活用できる有料自習室、インドアゴルフ、ウェディングフォトスタジオのフランチャイズだ。非住宅系土地活用ビジネスの新たな選択肢の1つとして参考にしてほしい。
空きテナント活用の可能性を広げるフランチャイズ
フランチャイズビジネスで遊休地活用
手離れの良いフランチャイズに加盟して空きテナントを最大限に活用
テナント活用を成功させるＦＣ
時代の流れによる空き家の増加が影響して、従来式のテナント活用方法から方針を転換し、新たなビジネスを模索する動きが増えている。空き家で新たなサービスを提供することは地域活性化にも繋がるほか、物件自体のバリューアップという側面でも大きな期待が持てる。
空きテナント活用の１つに、フランチャイズ（ＦＣ）店舗の運営がある。ＦＣは加盟金やロイヤリティを対価に、本部から研修や経営サポートを受けられるビジネスシステムだ。ＦＣに加盟すると本部が確立したノウハウや知名度を活用できるため、個人開業するよりも、営業や販促面で有利になるケースが多い。ＦＣ展開を行っている業種は幅広く、小売店や飲食店、美容サロンやリユースショップ、学習塾や老人ホームなどがあり、さまざまなブランドが存在する。加えて、働き方やライフスタイルの多様化によってサービスの形態にも多くのバリエーションが生まれている。たとえば、24時間営業の無人型店舗は時間帯を気にせずいつでも好きな時に利用できるというニーズを満たしている。
空きテナントの活用を成功させるためには、さまざまな業態の中から適切なブランドを選択する必要がある。物件の立地特性や周辺地域のニーズを正確に把握し、需要のあるサービスを見極めたい。
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- ▲カフェのようにリラックスできるラーニングスペース ▶貸切空間でウェディングフォトを体験
自習室
勉強カフェ
社会人をターゲットにした会員制有料自習室
独自開発の遠隔システムでリモート運営が可能
ブックマークス（東京都港区）
山村宙史 社長
運営委託でスタッフの常駐不要
ブックマークスが手掛ける「勉強カフェ」は、勉強する人向けの会員制ラーニングスペースだ。2008年に創業し、2012年にＦＣを開始。2020年に全国30店舗を達成した。現在は直営8店、ＦＣ28店（ライセンス店含む）の計36店を展開中だ。
店内はＢＧＭや環境音が流れるカフェのような雰囲気で、一般的な有料自習室に比べ、人の存在を感じる空間設計になっている。会員になると勉強場所を確保できるほか、会員同士のコミュニティを通じてモチベーションの向上が図れる。そのため、自宅では勉強に集中できないという悩みを持つ人が同店を利用している。仕事をするのではなく、勉強目的での利用が大部分を占めており、コワーキングスペースのような類似業態との差別化に繋がっている。
利用するには、基本的に月額の会員に登録する。会員になると、契約プランの内容に応じていつでも利用できる。提供プランや料金は店舗によって異なるが、虎ノ門スタジオでは10プランを提供している。全日6～23時に利用可能なフルタイム（1万8700円）や、平日17～23時と土日祝10～23時に利用可能なレギュラー（1万2100円）などを中心に、多様なプランを提供しており、ライフスタイルに合わせて選べる。
▲ラウンジでは会話や食事など息抜きも可能
初期投資は地域や物件によって変動するが、総額1200～2000万円を目安としている。内訳は加盟金200万円、開業支援金50万円、そのほか物件取得費や内装工事費などが発生する。物件の立地は、最寄り駅から徒歩５分以内が目安だ。推奨サイズは40～50坪で、席数は40～50席となる。その場合、会員数は４倍前後の160～200人が上限となる。投資回収期間は２～３年を見込んでいる。
加盟後は月額費用としてロイヤリティ６％、広告分担金２万円、顧客管理システム費用５万円などが発生する。
同社は独自開発の遠隔システムを導入しており、ＦＣ店は店舗運営業務を本部に委託することができる。利用者の少ない時間はスタッフが常駐せずに営業できるため、アルバイトスタッフのみでの店舗運営が可能だ。スタッフが不在となる時間帯は、本部オペレーターがリモートで対応するという。
インドアゴルフ
Single Golf
１店舗50人限定の会員制インドアゴルフＦＣ
スマートミラーで効率の良い無人レッスンを提供
Single Golf（東京都世田谷区）
小栁宏明 社長
最新クラブを安価で導入可能
2023年にオープンした「Single Golf」は、最新クラブやコースボール、最新型シミュレーターを配備した24時間無人営業のインドアゴルフ練習場だ。完全個室で会員制のため、プライベートな空間で周囲の視線を気にせず練習に打ち込める。
同店は、プロによるレッスンプランも用意しているが、自主練習でも上達できるような設備と環境を整えている。その１つが、ＡＩ機能を搭載したスマートミラー「MIRROR FIT．」だ。この機能にはプロによるレッスンプログラムが多数収録されており、会員は鏡に映し出される映像を見ながら自主練習を行う。さらに、ＡＩによるフォーム分析で、無人でも効率の良い練習を実現している。
また、一般的なゴルフ練習場は練習ボールを使用することが多いが、同店ではプロゴルファーも使用する最新のコースボールを採用している。他店との差別化に加えて、シミュレーターによるボールデータの誤差が生じないようにするため、あえてコストの高いコースボールを導入している。
１打席の場合は、最小10坪で開業できる。約15坪あれば１打席に加え、ソファスペースを配置したゆとりのある店舗設計が可能だ。２打席以上でも開業可能だが、その場合は部屋を完全に仕切る必要がある。
１打席モデルの初期投資総額は、1724万円。内訳は、加盟金350万円、シミュレーター設備380万円、物件取得費270万円、内装工事費540万円、オープン広告費27万円、レンタルクラブ57万円、カードリーダー56万5000円、その他備品43万5000円だ。シミュレーターは５年契約によるレンタルも行っており、その場合の費用は年間88万円だ。
▲スマートミラーでフォームを確認しながら練習できる
１打席の店舗で会員数50人を集めた場合の収益モデルは、月商105万円に対し、利益は40万4000円。経費の内訳は、家賃44万円、ロイヤリティ15万円、システム費３万8000円、水道光熱費１万8000円だ。なお、シミュレーターをレンタルする場合、追加費用が10万円かかる。
レンタルクラブやコースボールは、同社が独自ルートで仕入れているため、オーナーは通常より安価に導入できる。
開業前サポートとして、出店エリアの商圏調査から、内装工事やシミュレーターの配置、チラシデザインやＳＥＯ対策などは、追加費用なしで実施している。また、開業後は月に１度の定期的な面談で、加盟店のＣＶＲ対策や集客サポートを行う。
ウェディングフォト
INAI WEDDING
ウェディングフォトが撮れる写真スタジオ
クオリティを保ったまま安価な価格設定を実現
World map（東京都豊島区）
新里和樹 社長
高クオリティで低価格を実現
World mapはウェディングに特化したセルフ写真スタジオ「INAIWEDDING」を立ち上げた。2022年10月に１号店となる大塚店をオープン。直営店は他に福岡店と浅草店、大阪店があり計４店舗。ＦＣ店はまだないが、年内に２店舗の出店準備を進めている。
同スタジオの仕組みはシンプルだ。利用者は、来店後に店内に用意された衣装の中から好みものを選択し自分で着替え、自分でシャッターを切るというもの。撮影時、スタッフは別室にて待機するため、利用者は２人だけの貸切空間でウェディングフォトを撮影できる。機材はプロカメラマンが使用する本格的なカメラを用意し、200〜300枚の撮影データをすべて当日に納品。補正した写真は３週間以内に仕上げて届く。
価格は１〜３万円台で、衣装の数や利用時間などプラン内容によって金額が変わる。プロカメラマンによる撮影は15万円ほどが業界の相場なので、安価に撮影することが可能だ。
15坪あれば開業でき、衣装部屋と撮影スタジオ、スタッフルームが必要だ。立地は駅から徒歩圏内を推奨。目的来店のため空中階でも問題ない。
▲2人だけの貸し切り空間でウェディングフォトを体験できる
集客施策は、ＳＮＳ投稿とＳＥＯ対策を行っている。新婦は結婚式の準備として新たにＳＮＳアカウントを作成し、試着などの衣装画像を投稿するケースがあり、ＷＥＢ上の口コミで情報が広まりやすい業界だという。
物件取得費を除いた初期投資は、総額で300万円ほどだ。内訳は加盟金が100万円、ＰＣ環境や撮影機材が一式で100万円、衣装代が100万円だ。衣装は、ウェディングドレスなどを低価格帯のブランドから購入する。サイズはＳＳサイズから５ＬＸまで幅広く取りそろえ、50着ほどを用意すればスタートできる。開業後に買い足していく場合はメルカリから仕入れるケースもあるという。
月商は120万円ほどを見込む。経費は人件費が20万円、家賃が15万円、光熱費ほか諸経費が20万円、ロイヤリティが10％となり、手残りが55万円前後だ。スタッフは１人常駐すれば運営可能なため、育成の手間がかからず参入しやすいビジネスモデルだ。
土日の利用が多いが、入籍日の撮影需要などで平日にも予約が入る。結婚式代わりのフォトウェディング利用のほか、ウェルカムボード用の撮影や、結婚式の写真撮影の予行練習として利用するケースもあるという。
（2025年12月号掲載）
